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【私小説2】素質は充分にあった
私が持ってる一番古い記憶の頃だと思う、幼稚園に通い始めたのは。
市内の濃海(のうかい)という駅のそばにある小さな幼稚園。つくし幼稚園だ。 記憶の前後はあると思うが、幼稚園の思い出はたくさん残っている。人間の性質なのだろうか、それとも実際にそうだったのだろうか、あまり楽しくなかった記憶が多いように思う。斜め前の家に暮らす1つ年上の男の子、私の幼馴染であるシンヤ君と一緒に自宅前まで迎えに来る幼稚園の送迎バスに乗って通っていた。
私は幼稚園に入ってすぐの頃行われた園内の祭りのような催し物の中、園児達全員で踊るアラレちゃん音頭を全力で拒否(そういう子いたでしょ)。母の足元で自分以外が踊り狂うのを涙目で眺めていた(皆ごめん。私にはできねぇ)
人見知りでおとなしく、意思伝達能力の低い子供だったように思う。この特性はおそらく今も受け継いでいるが、まあなんとか社会人をやっているよ。
園では同じ組の吉永 総という女の子と仲良くしていた。総ちゃんとはこの後、中学生になって私が道を踏み外してしまうまで長きにわたって付き合う事になるのだが、心を通わせた事は一度もない。私には本当の友達は一人もいない。今まで生きてきて一度も心の友、という感情を持ったことがない。少なくとも人間には。今では私の事を一番理解しているのはgooglだよ。
今後の人生で出会えるのかしら。心の友。
総ちゃんと遊んでいて楽しかった事ももちろんたくさんあるが、一番最初に思い出されるのは謎のプレゼント攻撃だ。幼稚園の年小?いつの頃だったか、ほぼ毎日のように先生に隠れて消しゴムとか、そういう意味のない小物を
「内緒だよ!」
などとほざきながら私の通園バッグに無理矢理ねじ込んでくるようになった。(いらんのに)
挙句の果てに
「今度お返しに星のキーホルダーちょうだい」
ときたもんだ。(えっ)
非常に内気で、思ったことを口に出せない性格の私は心底困り果てて親に相談した。
鉄工場を営んでいた私の父が、鉄でそれらしき物を作ってやろうか?と言ってくれた事を覚えているのだが、その後の展開をよく思い出せない。おそらく小心者の私が勝手にビビりあがっていただけで
「ゴメン、そういうの持ってない」
の一言で済んだのかもしれない。その後も総ちゃんとの付き合いは続いたのだから。