【私小説5】三股たかし
私が登園を拒否していた事とは恐らく関係のない事だと思うのだけど、私は 三股たかし という男児にちょくちょく意地悪されていた。三股は所謂クソガキだった。汗を私の制服で拭いてきたり、体育館で劇を見るとき私のせいでよく見えないと、劇の間ずっと背中を蹴られたりした事を思いだす。
全てが終わってから「大丈夫だった?」と聞いてくる子がいる。「大丈夫だよ」と言うしかないけど、悲しくても助けてくれなかった事を責める事は出来ない。誰かが蹴られていたとして、多分私も助けられないし、むしろなんで助けてくれなかったの?と思われるのが嫌で「大丈夫だった?」なんて聞けない。全て気を付かなかった事にしてしまうと思う。その分私の方がたちが悪いのだ。
私はこの頃からずっと、そういう人間だ。
それにこの時の私が、誰かの助けたい人になれていなかった、というだけの話だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?