【私小説48】小学校を卒業した日の事
「あの日の事を!」
「決して!!」
「忘れません!(1人)」
「忘れません!!!(全員)」
とか、一人や皆で絶叫する謎の儀式を乗り越え。
出席した保護者に
「ありがとうございました」
と言いながら手製の造花を手渡す、というサブストーリーもクリアした。
ちなみに私の担当絶叫セリフは
「みんなで行った!!!!」
であった。
母に花を手渡す時、母の目はちょっとウルウルしていた。
実は私もちょっと泣きそうだったので
「ありがとうございました」
は口パクした。喋ると泣いちゃうからね。
出席番号順で隣だった子のお母さんが全く動じてなかったのが印象に残っている。
国家と、校歌と、巣立ちの歌、と門出の歌を皆で歌った。
私は小学校を卒業することに驚きはしたものの、寂しさは全くなかったし(そりゃそうか)離れるのが惜しいような恩師もいなかったのだが(そりゃそうだ)今でも門出の歌なんか耳にするとなんとなく涙が出てくる。あの頃は大変だったなぁとか、そういう気持ちかな。過ぎる事のないと思われた6年間が過ぎ、不安しかなかった。
音と匂いはいつだって私をその時に連れていく。
そして年の分だけ涙もろくなっているのかもしれない。
いや、泣かないけど涙腺自体はもともと弱いか。