夜凪の旅路
20平米もない
小さな居間に一人分の布団を敷いて
高くはない天井をじっと見つめるように
二人の体が横たわる
雨戸越しに、虫の声が聞こえてくる
絡み合う指先の
柔らかな冷たさに
ただ二人当てもない静かな夜の海を
板戸の上で漂っているかのような
底のない心細さを思わされる
オレンジ色の暗い明かりが
四方の壁を鈍い灰色に照らすのを見ると
誰もいなくなった暗い暗い夜の海を
二人箱舟で彷徨っているかのような
絶望的な寂しさを覚える
あの明るい岸辺には
家族も友達もいたのだ
今は二人、ゆらゆらと
この世界で二人
水平線の奥に不気味に光る地上の明かりを見ないようにしながら
どこまでもどこまでも
遠く流されていく。