見出し画像

いちばん古い記憶

 友人と他愛もない話をしていて、ふと、「思い出せる限りで、一番古い記憶ってなに?」と聞かれたことがあった。一番古い記憶…。頭の中で、自分がまだ小さく柔らかかった頃の記憶をぼんやりと探ろうとする。すると、こちらを見つめる、幼かった頃の自分の姿が浮かび上がってくる。そして、あれ、これは私の眼を通してみた風景ではないな、と気づく。自分の姿は、目の前に鏡がない限り、自分の眼を通して見えるはずがない。つまり、私の眼から離れた、別アングルのレンズを通して捉えられた私。私の眼を通して頭の中に焼き付いた記憶ではない。

ここから先は

874字 / 3画像

¥ 500

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?