FORSPOKEN について思うところ
スクエアエニックスさんから発売された魔法パルクールアクション「FORSPOKEN」の感想です。一番下の項目だけネタバレ有りなので注意してください。
はじめに
結論から言うと買った方が良いです。他のゲームの「なぜ快適なのか」「なぜ楽しいのか」「なぜ没入感があるのか」を反面教師よろしく教えてくれるから。
良い部分ももちろんあります。しかしどうしても「スクエアエニックスのAAA級タイトル」という肩書きが邪魔をする。様々な面で「なぜ、どうしてこうなった」か散見される。個人的には30点と80点が交互に襲ってくるゲームでした。
主人公フレイと相棒カフが両方とも皮肉屋なのは以外と新しくキャラとしても好き。
良いところ
▼細かで豊富な設定
謎解き難易度や主人公のスタミナ回復速度などゲームプレイについても細かく変更可能で、最近のSIEタイトルの様にアクセシビリティ関係も豊富。
……がしかし(後述の悪いところへ続く)
▼丁寧な世界観の説明
新しい人物や単語、情報が出るとその都度説明が入る。さすがにスクエニは反省したのか造語関係はすぐ説明入る。出来るだけ世界観で置いてけぼりにさせないような工夫。アーカイブも豊富。
説明が入るのが良い点であってそのやり方はまた別の問題。
▼異世界転送の設定がそこそこ活きてる
始めに言いますが「そこそこ」です。前述の逐一入る説明もそうですが、説明が入る理由にもなっている。図鑑で確認できる項目はフレイがメモしている風なのも世界観作りになっている。
転送されたということで「元の世界に戻る」という分かりやすい目的が最初に提示され、異世界と現実での価値観の違いから衝突が起きやすいのもシナリオに活きている。
そもそも異世界転送モノの必要があったかというと特にない。異世界「転生」モノとか言って文句言ってる人はプレイしてないと思ってます。
▼ストレスの少ないパルクール
ワンボタンでマップを高速で駆け回ることが出来る。スパイダーマンの様に慣性を活かした緩急のある移動とは異なり、常にトップスピードなので軽快。
ミラーズエッジやDying Lightの「プレイヤーの技術向上とスキル解放」によりスタイリッシュな移動が可能になるタイトルと真逆で、とにかく「誰でもすぐに」出来るようになっている。
解放系の移動スキルはあるものの数は多くない。
また、通常のダッシュ中もある程度の段差は自動で乗り越えやパルクールっぽいアクションをしてくれる。お陰で戦闘中に微妙な段差に引っ掛かったりは少ない。
▼ファストトラベルと初回ロードの速さ
今や基本となりつつ有るけど、文句なしに速いです。
▼魔法の種類の豊富さ
魔法の種類はかなりの数が用意されて居て、全てを同時に戦闘に使うことが出来る。
よく見かける沢山の中から幾つかをパレットやボタンに割り振るタイプではなく、覚えた魔法の全部を戦闘に持ち込める。がこの点は欠点にもなっている。
必殺技に相当する魔法もそこそこの頻度で放つことができどれも派手。
▼120Hzモードによる操作性向上
FORSPOKENではこのモードで120fpsを目的としておらず、受け付け回数を倍にすることで操作レスポンス向上を目的としている(と思う)。
実際フレームレートはオン/オフで大差はなく、操作の反応が劇的に変わる(特にカメラ操作)。
グラフィックが元々綺麗ではないので容赦なくパフォーマンスモード選べるのも○
悪いところ
▼広く手が届くが痒いところに手が届かない設定の内容
設定は豊富、しかし色々足りない。
派手な魔法が多いにも関わらず表示設定で彩度と明度を別々に設定できない。モニターの性能の幅が広くなってきてる昨今において絶対必要な項目。PS5側の設定だけで十分ということかもしれないが。
敵の攻撃予兆は消せるのにダメージ表記やHPバーは消せない。前者は自分の回りのインジケーターもセットで消える。
FORSPOKENに調整された設定内容とは思えず「他のタイトルでも好評みたいだからとりあえず付けました」感がする。
▼アナウンス表示のデカさ
ゲーム中にHP低下や敵の増援追加のアナウンスが表示されるのだが、これがクソでかく画面中央にでる。プレイに支障がでる大きさと表示時間。
▼豊富な魔法を活かしきれない戦闘システム
「豊富な魔法を駆使して戦う」が売りなのに
・ワンボタンで発動できるのは支援魔法と攻撃魔法を1種類づつ
・種類の多さに起因する魔法の切り替えの面倒さ
が水を差す形になっている。装備や武器多いゲームなどで採用されているパレット形式なのだが
・短押しで前の装備に戻る
・2連押しでデフォルト装備に戻る
のようなパレット形式では通常セットである機能は付いていない。魔法切り替えには必ずパレットを開いて選択しないといけない。せめてファンクションキー形式でパレットを経由しないで同時押しなどで直接魔法を発動できればもっとよかったのにと思ってしまう。
一応対処方法として覚えた魔法をコストを払い戻して忘れることが出来るのでパレットを整理することは出来る。が、結局のところ「豊富な魔法」という長所を消す形になる。
▼残念なフォトモード
必要最低限で分かりにくいUIと操作が追い討ちをかける。戦闘中の表情がいまいちだったり、通常時も目のグラフィックが良くないことが仇となり死んだ表情になりがち。表情を変えられたら良かった。
▼テンポの悪さ
このゲームはとにかくテンポが悪い。物語に疾走感がないとか無駄な展開が多いとかでは無く「プレイの上でのテンポ」が悪い。
とにかくプレイヤーの操作を奪う。カフとのやり取りフレイの独り言、こと在る毎にカットシーンでもないのに操作を受け付けなくなる。
カットシーンでもカット切替のたびに暗転が入る。酷い時はこんな感じ
会話→暗転→会話(別アングル)→暗転→敵登場→暗転→会話→暗転→戦闘
嫌でも気になる。下手くそなパワーポイント資料のよう。必要のない間が頻繁に入って意識が散る。
▼チープな演出
キャラが走ってきてピタッと止まって棒立ち会話や定点アングルや短い操作とムービーを数回繰り返すなど、何世代か古い演出が目立つ。
良い部分は良いので担当や場面ごとの力の入れ具合に差がありすぎるのだろうか。
単純にこの場面は必要無いよね、直前のムービーと切り分けなくて良くないみたいな部分も多い。
▼設定内容にそぐわない、世界が読み取れないマップ
すごい細かいけど自分的にどうしても気になった部分。気にならない人は全然気にならないと思います。
アーシア(異世界)の歴史に関するテキストや発言が結構あるのだが、マップの建物の状況が経過年数と一致していないように見える。
オープンワールドの醍醐味である(と自分は思ってます)フィールドやオブジェクトの配置から出来事や物語を想像することが出来ない。同時期に村や家屋の放置が始まったのに、綺麗な状態だったり蔦が生い茂っていたりでバラバラ。適当に配置した感じがする。
幹線道路に相当する道が無いのも気になる。というか明らかにゲームの都合の地形が多い。物流とかどうしてたんだろう。オープンワールドで景色みながら徒歩移動するのが好きな自分としては残念だった。
有名どころのスカイリムではここら辺の集落で補給して次の都市に向かうのかな、商人通りやすいから山賊が近くにいるのかななどと想像しながら散歩できたけど皆無。
ただ景色見て高速パルクールするためのマップ。
まとめ
全体的に「他のタイトルで導入してるから入れました」みたいな取ってつけた感じが凄い感じられる。ゲームの骨格に馴染んで居ないと言えば良いのだろうか。
特にシステムや設定項目、マップデザインがそうで他のゲームならそれで良いかもしれないけど、FORSPOKENには合ってない若しくは足りていないという部分がとても多かった。
ここ数年は異常なクオリティのAAA級オープンワールドが増えているので、どうしても比べられると思う。豊富な魔法で高速戦闘という特徴ひとつでは追い付けない差が出てしまったと思います。
最近ぱっとしないとはいえ、スクエアエニックスの新IPで期待が高かったぶん落差が大きく感じられました。
しかし移動と魔法のぶっぱなしは本当に楽しいのでハマる人はハマると思います。とりあえずプレイはしてみて欲しい。DLCも出るらしいです。
ここからネタバレ有りです
ネタバレ有の良いところ
▼町の住人の反応
一ヶ所だけああなるほどと関心した演出がありました。町の子供と大人たちの反応の差についてです。フレイがタンタ(都市の領主)を倒した際に子供たちは「タンタスレイヤー」と呼んで英雄視するのだが、大人たちは微妙な反応をします。
子供たちは狂ったタンタしか知らないが大人たちは国を守った英雄としてのタンタを知っている。というただそれだけの描写なんですが「細かい描写だろ、見て」な感じもなくさらっとやっているのが良かったです。
こういう演出できるのになぜ他の部分は……
ネタバレ有の悪いところ
▼致命的なシナリオの疑問
①一人だけ突然ドラゴンになる侵食、しかも会話内容的に一番最後。でも意識ありまーす、会話できまーすは謎すぎるし侵食の原因の腕輪無くなってからだし。
ドラゴンに乗ってラスボス戦やりたいが為にドラゴンにしたんじゃないって思った。実際、無意味に長尺なドラゴン飛行シーンがあったし。
②カフ関係は意外と良かったけど、腕輪の状態で動けるのくさ。封印できてないじゃん。しかもニューヨーク飛んだ理由も不明、こいつ腕輪のまんま動けず20年黙ってたの?復活目的ならアーシアにいれば良いのに。どうせタンタは全員おかしくなるの確定してるんだから。
主人公のフレイが黒幕のカフを装着してたってシチュエーションを作りたいが為に細かい部分がおざなりに。
③誰も何ともおもわない主人公の出自の真実。アーシアを納めていた領主の娘だって敵から言われてフレイはやけにあっさり受け入れるし、町の住人も切羽詰まってるとはいえ「で?」みたいな反応。結構重大な情報だよ。掘り下げる気が無くここら辺からあからさまにストーリー畳にかかってる空気が出てる。
④結局どうして転送ゲート開いたか不明。母親かフレイの力なんだろうけど、どうしてあのタイミングでって言う疑問が残る。フレイが「ここじゃない何処かへ行きたい」って思ったタイミングでアーシア由来のカフを触って魔法に目覚めたのだろうか。逆に母親が開いたのならなぜあのタイミングなのか。
もしかしたらこれらはDLCで補完でもされるのかな。敵国については今回あまり触れてないし。