【児童書】アヤシーナタウン、流行ってくれ
こんばんは。
これまでいろんな児童書をたくさん読んできたけれど、感想を発する場が少なかったので、アホほど書いてしまっていますね。
今回は、児童書の『アヤシーナタウン』について紹介したいのです。
アヤシーナタウンシリーズについて
さっくり紹介すると、
怪しげな街・アヤシーナタウンのまとめ役をしている、ニイハオ大飯店の支配人、陳損得(ちんそんとく)が街で起こった怖くて奇妙な出来事を聞かせてくれる短編集です。
理論社から出版されている、ホラー系の児童書シリーズです。
対象は3年生~高学年ぐらいでしょうか。
今のところは全3巻、こわいはなし倶楽部作、カワズミさんがイラストです。
こわいはなし俱楽部は、たぶん5~6名の作家さんがいるっぽい。
1巻と2巻は、理論社のHPで試し読みができます。
あと、簡単な紹介動画もあります(1分半くらい)。
いわゆる怪談レストランや銭天堂あたりと近い形式です。
が、レトロチャイナな街(とはいえパン屋も洋食屋もスポーツカーやスマホも出てくるけど)が舞台であったり、
数名の作家さんが書いているというのもあって、すでにあるような作品たちと違う個性があります。
各巻ごとに登場人物紹介と、マップにはお話に関わる場所がマークされていてすごく細かい。
架空の食材を使った料理のレシピが話の間に挟まれていたり、巻末にちょっとしたクイズもついています。
挿絵もすごく豊かで、人物も人外も建物も料理も、全部最高です。
続きものではない(1つの巻の中でも連作はない)ので、どっから読んでもいいし…。
この本に興味を持ったのは、本の仕事をしていて見つけたのもありますが、応援しているオモコロの加藤さんがチャイナモチーフがお好きな方で、影響を受けてチャイナなものをあれこれ見たり聞いたりしていたので、余計に気になったのもあります。
気が付いたらこの作品の沼にいました。アヤシーナタウンの住人になるしかないか。
登場人物について
とにかく、ニイハオ大飯店の陳損得が本当に好きです。
キャラデザめっちゃ好きで…服もいいし耳飾りもいいし腰帯もしてるし。
ただ、耳がとがっているので、人間ではないのかもしれないですね。
一人称が「ワタクシ」なのも最高…。怪しすぎる。公式でも「謎多き人物」って紹介されてますからね。
基本的にはおかしなモノ・コトに対して、解決法を教えたり、助けようとしてくれますが、忠告を無視して不幸になったり、めぐりあわせでうまくいかなかったりしたときは、「仕方のないこと」っていうスタンスなのが怖く感じるような。
でも、この街では次から次へ奇妙なことが起こるので、そういう姿勢でいないと精神が追い付かないのかもしれない…。
ニイハオ大飯店の関係だと、化けネコの福(ふく)、料理人の肉饅頭(にくまんとう)がいて、この二人も陳損得も、奇妙なことに巻き込まれることがありますが、死んだりいなくなったりはしない固定メンなので安心です。
福はしゃべります。招き猫像、普通のかわいいネコ、化けネコの3つの顔があります。やんちゃな感じで可愛い。CVがつくなら少年声の人がいいな…。
てか肉饅頭(にくまんとう)てお前。名前通りのぽっちゃり体形ゆるめの顔で、彼もかわいい。優しい感じですね。
他の登場人物は各巻にいろいろいて、数名は別の話に顔を出すこともあります。
が、いかんせん「いなくなった」「別世界?に行った」「死んだ」などのキャラも多くて。
素行の悪いキャラがひどい目に合うのはわりと「そらそう」って思うけど、特に悪いことはしてないのに、興味で近づいたり魅入られたりして巻き込まれる人もいて理不尽…。
ただ、そんな終わり?を迎えたキャラたちも、全員不幸というわけでもない気がしますね。成仏とか再会とかもありますから。
というわけで、以下は各巻の好きな話をピックアップして感想を書いていきます。
ネタバレ少なめを意識していますが、あると思って読んでもらうほうが安全です。
①『ニイハオ大飯店のひみつ』からピックアップ
◇『ニイハオ大飯店支配人、陳損得の話』 山星プー 作 一話試し読みできます
陳損得は、12歳で飯大学校という4000年の歴史ある料理学校に入学するが、ある日その学校の秘密を知ってしまい…という話なんですが、
1巻の1話目だぞ!!!!!???
作中でも言われてるとおり、「とても血なまぐさい話」でした。
ソントクのお父さん、いい学校に行かせて、悪い噂聞いてすぐ連れ戻しに来て…とすごく息子思いなのにあんまりだ…。
しかし、お母さんもソントクも肝が据わってるというか、すぐ覚悟を決めててすごかったです。
◇『魚売りのマーじいさん』 森野トリ 作
魚を売っているマーじいさんというおじいさんの昔話?
マーじいさんは親指だけぐにゃりと渦を巻くように曲がっているんだけれど、それは、昔オオダコと戦った勝利の証、という話をしてくれるんだそう。
これはもう、その昔話のあとの「ところで……」からが怖い。
正体だの真実だのはさておき、マーじいさんのキャラがいいんですよね。
南の島出身らしく、訛りが沖縄?っぽい。
おちゃめなおじいさんキャラ、好きなんですよねえ…
◇『花屋のむすめ』 栗田拓 作
ニイハオ大飯店の並びにある花屋のむすめ、メイリの話。
明るくて気立てのいいメイリは一人で花屋を切り盛りしているが、実は病気になっていた。それはメイリの一族がかかる変わった病気で…という内容。
ちゃんと花に関わる病で、切なくてちょっとこわいね…と思っていたら、ソントク。おいお前、最後。やっぱ怪しいやつだったか…。
あと、ソントクのチャイナじゃない服装が見られる貴重な回。
◇『まねきネコ福と死んだカラス』 鵜飼ショウ 作
あるときから、燃えるゴミの日に、ゴミ捨て場に死んだカラスが置かれるようになった。
そのあたりの土地を所有するバイバイという男が、カラスのせいで地価が下がった腹いせに殺しているらしいという話をつかんだ化けネコの福が、カラスたちの恨みを晴らすため…。
陳損得の一族⇔バイバイ、ネコ⇔カラスのライバル関係があるのね。まあソントク名前しか出てこないけど。
ネコとカラスは普段は喧嘩することもあるけど、儲けのためだけに生き物を殺すのは許せない!という福のアツい部分がすごくよかった。
ちょっとハードボイルドっぽい。
②『ゆうぐれ亭のまっ黒ソース』からピックアップ
◇『ゆうぐれ亭のまっ黒ソース』 森野トリ 作 一話試し読みできます
表題作が一話試し読みとは。
アヤシーナタウンに新しくオープンした弁当屋「ゆうぐれ亭」。
絶妙なあまからまっ黒ソースのからあげ弁当、焼肉弁当がおいしいと話題に。
それに、食べ終わると容器の底に占いが現れ、これがまたよく当たるのだとか…。
店主のジョーは取材を受けるレベルに。じつは、亡くなったジョーのお母さんが関わっていて…。
幽霊話ではありますが、母の愛の方に気が向いてあまり怖くは感じなかったかもしれない。
怖いけど食べてみたいなこのお弁当。あとジョーも独り立ちがんばって。
◇『悪魔のトンポーロー』 栗田拓 作
トンポーローってなんだっけと思って調べたら、東坡煮・ラフテーの元で、日本の角煮の起源と言われている料理のようでした。作中でも「ブタの角煮」と紹介されていた。
肉饅頭の友人・シンタオは、隣町の店で絶品の「激辛トンポーロー」を作っている。
あるとき肉饅頭が、どうやってそのレシピを思いついたのか尋ねると…。
まあ、やばい悪魔みたいなのと契約しちゃった系なんですが、「証として血を飲む」というのがなかなか…。
あとこれは私の癖(へき)なんですが、血を飲むシーンのシンタオの絵、良すぎ…グロいけどね…いいですね…。
◇『アライと食器洗い機』 栗田拓 作
港近くの定食屋で働くアライという男の話。
アライは10年以上働いていて、無口ではあるけれど真面目で、皿洗いが好きで、味覚もピカイチ。
なので店長には気に入られているけれど、もう一人の料理人はそれが不満で、ある日…という話。
これは、アライ自身は、この結末を悪くないと思ってそうなのがよかったです。
あと陳損得がダジャレみたいなこと言うんですが、この状況楽しんでない?また怪しくなってきた…。
◇『うわさの手鏡』 豊田花 作
最近、アヤシーナタウンの市場にできた古道具屋でのお話。
この店の目立つところに飾ってある手鏡は、多くの人を魅了するが、店主は売ろうとしない。
ある日、女の人がやってきて、カバンから瓜二つの鏡をとりだし…!?
私、この店主が女の人かと思ってたんですけど、デザインが中性的なだけで普通に男性でしたね。
特定のアイテムを特定の方法でなにかすると…という定番ではあるけれど、怖かったですね。
この方は1巻でマーじいさんの話を書いた方ではないのだけど、この話の冒頭でマーじいさんがマグカップ買いに来ててよかった。つながってる~!
あと、各話の間にソントクのイラスト+前後の話のコメントみたいなページがたまに挟まるんですが、そこに「トラブルがおきたときの後片付けもワタクシの役目」的なことが書いてあった。
へえ~、「あとかたづけ」ねえ。花屋の件を思い出しちゃうんですけど。
③『ぜうぜうさまの呪い』からピックアップ
◇『ぜうぜうさまの呪い』 栗田拓 作
この巻は試し読みがないのですが、3巻までチェックしに来た人はもう試し読まなくても買うのではないか?と思いました。わからんけど。
子ども3人が「願いをかなえてくれるぜうぜうさま」の儀式をすることに。
呪文を唱え終わると、街も建物もない灰色の世界になっていて、遠くから影が近づいてくる…。
表題作ですが、これはほんと怖いですね。ぜうぜうさまの目的も正体もわかんないんだもの…。
表紙にいる異形、あちらがぜうぜうさまでございます。個人的にはすごく好みなデザインです…。
とにかく「いい友達がいてよかったねえ…」という気持ちになります。
◇『しあわせのオルゴヲル』 栗田拓 作
こんなん罠じゃん!!!!
少女スゥちゃんが街を歩いていると、いつのまにか雑貨屋ができている。そこに飾られたオルゴールに目を惹かれるが、裕福ではないので、買えそうにない。
そう言ったものの、店主の女性は「ここにおいておくからね」と言って、店の奥に引っ込んでしまいます。
スゥちゃんは迷って、結局抗えずに、オルゴールを持ち帰ってしまうが、翌朝から不幸が…!という内容。
店主、わざとおいてんじゃん?罠ですよね?
子どもがこれ我慢できますかね?そんな風に言われて。なあ。
こういう、目をつけられたり店に気が付いてしまったりしたら、そのときにはもう…っていうの、怖いですよね。
後味はよくないけど、一応誰も死なないのでまだよかった。
◇『古いエビチリのレシピ』 栗田拓 作
ニイハオ大飯店に料理人見習いが二人、入ることになった。
フェイとリーという名前で、二人ともすぐに打ち解け、リーがあるノートを見せる。
それはリーのおじいちゃんのノートで、エビチリなどのレシピが書かれており、リーがおじいちゃんについて話をしてくれるが…。
ちょいグロかもしれない。あくまでニイハオ大飯店の、リーのおじいちゃんの話なんで。お願いしますね。
リーのデザインがかわいいですね…男だと思うんだけど…。
あと、おじいちゃんのレシピを大事にしてる、みたいなのいいですよね。
ちょいグロでうへ、となるシーンもありましたが、理由付けみたいなのがちゃんとあったのでよかったです。
◇『福が化けネコになったわけ』 豊田花 作
福ちゃんの話キタ!
福はもともと普通のネコで、ソントクの何代も前の店主に飼われていた。
あるとき、墓場で死人が動くという噂を聞いた、若き血気盛んな福は、自分が解決してやろうと墓地へ向かいます。
そこでピンチを化けネコ軍団のボスに助けてもらい…。
福ちゃんの話は何話かありますが、多分これが一番昔の話なんでしょうな。
ゾンビ的存在にも立ち向かっていくボス。そりゃああこがれちゃうよな。
ボスもめちゃかっこかわいいネコなので最高です。
今や福ちゃんが化けネコ軍団のボス。立派だ…。
まとめ
かなりかいつまんだつもりというか…、4話ずつにしぼったのにまためちゃめちゃ長くなってるんですが…。
それほどまでに、私はこの『アヤシーナタウン』シリーズが大好きです。
続巻が出るのかどうかわかりませんが、出てくれたらうれしい。
何より子どもたちにも人気の作品なんですよね。
正直言うと、アニメ化してほしいよ~!
話も全部個性的で面白いし、キャラクターデザインもカワズミさんのイラストでかなりしっかりしてるから無理じゃないと思うんですよね。
紹介動画まで作られてるし!
というわけで、アヤシーナタウンシリーズの紹介でした。
ぜひ読んでみてくださいな。