廃材から作られたバッグがマレーシアで人気のわけ
こんにちは。
先日、TBSラジオ「アシタノカレッジ」に出たのですが、テーマは「エシカルファッション・ブランド」についてでした。
今日は趣向を変えて、少し詳しく説明します。
エシカルとは「倫理的」って意味です。要するに環境とか地域、人のことを考えて作られた商品ってことらしい。
マレーシアでも、昨年まで取材に行くと、大企業でもよく「持続可能性」や「フェアトレード」と言い出しました。
要するに、ゴミを出さないようにするとか、従業員にちゃんとお金を払うとか、動物実験しないとかですね。マレーシアでも外国人労働者の待遇が問題となる一方、「倫理的」なブランドが注目されてるのです。
マレーシアのエシカル事情
さてマレーシアでは、特に若い世代のベンチャーが頑張っています。
今回は、「ビジビジ イニシアチブ」を紹介しました。ビジビジはマレー語で「種」。有名なので、マレーシアにお住まいの方は、多分ご存知では。
私が初めて取材したのは2017年5月です。
こちらが公式ページ。
彼らが手がけるのは「アップサイクリング」。リサイクルと違い、アップサイクルでは、廃材を拾って製品を作るんです。ビジビジが手がける主な素材は「シートベルト」「バナー」「カーペット」の3つ。
特にシートベルトを使ったバッグ、有名です。
マレーシアはシートベルトの製造国なんです。
ところが、生産時に、車のモデルチェンジやベルトのよれ、汚れなどにより、使えないロットが出ます。
この廃棄される未使用品シートベルトを使ったバッグを考案したのです。シートベルトはそれぞれロットごとに微妙に色が違います。組み合わせによりバッグの色合いも一つ一つ違います。
私ももう3年も使ってますが、とにかく丈夫で雨にも強いので重宝します。
また、マレーシアは展示会が多いのですが、ここでも大量のゴミが出るそう。それが「バナー」と「フェルト」で、これは数日の展示期間が終われば廃棄されます。そこで、カーペットのフェルト素材やバナーを生かせないかと始めたんです。
日本の中駒織物とも協業し、日本で使い道がなくて困っていた古着物を使って商品化もしてます。
昨年はKLファッションウィークにも登場(この写真は渡部明子さん提供)。
従業員を大事にする
ビジビジの特徴は、その製品の完成度の高さにあります。だから値段も高めです。
取材したとき、こう言ってました。
「廃材を使っているのに価格が高いじゃないかと言う人もいる。僕たちは、利益の多くを職人に還元する。だから安売りはしません」
分厚いシートベルトやバナーを、職人がていねいに手縫いするんですが、相当の技術が必要なんだそうです。さらに、工程のいくつかでは、障害者が働く会社に生産の一部を委託してます。
実はビジビジ では、CEOより、縫製の二人の職人さんのほうがお給料が良いそうです。理由は「職人がいないと成り立たないから」。二人の職人はパキスタン人ですが、今回のcovid-19でも恩義を感じ母国に帰らなかったそうなんです。
「自由に真似してくれて構わない」
もう一つの特徴は「オープンソース」です。バッグの作り方、教えてます。
最初に取材したときは、住宅地にある家が会社でした。今ではクアラルンプールのモントキアラに「mereka」というスペースを作り、難民やシングルマザーに、デザイン、縫製、家具造りや、3Dプリンターやリサイクル技術、プログラミングなどを教えてます。
「製品をコピーされたらどうするの」って聞いたら、コピーしてくれて問題ない。作った製品はうちで販売することもできるよ」だそうです。
最近では、このbiji-bijiにかつていた従業員が、自分の別ブランドを立ち上げたりしてます。
ーー
日本にも「マザーハウス」みたいなエシカル・ブランドがあるので似てるかもしれません。
マザーハウスとビジビジの共通点は、「誰一人バッグを作ったことがなかった」って人たちが起業してることかな……。マザーハウスの山口絵里子さんなんて、バッグの製造を始めてから学校で技術学んだりしてます。ビジビジは、前職が科学者やジャーナリストの人たちが作ってるんです。面白いですよね。
それではまた。
これまで数百件を超えるサポート、ありがとうございました。今は500円のマガジンの定期購読者が750人を超えました。お気持ちだけで嬉しいです。文章を読んで元気になっていただければ。