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アメリカの留学カウンセラーが勧める学費節約の「ウルトラC」とは
海外で子どもを学ばせる保護者からよくある質問が「どのような大学に行けるのか」です。
ここで、最近大きな問題となるのが学費です。
大学の学費が高騰しています。米国のみならず、従来は比較的入りやすいと言われたカナダ、オーストラリアも同様で、年間500万円超の学校もありました。果たして、今の時代、そこまで大学に価値があるのか? と悩んでしまう人も多いと思います。
そんな中で、刺激的なタイトルの本を読みました。「留学で夢もお金も失う日本人 大金を投じて留学に失敗しないために」です。著者は留学カウンセラーの栄陽子さん。米国の留学サポートをされているようです。内容は非常に実践的かつ実現可能かなと思ったので、書いてみます。
日本人にあるあるの海外大学にまつわる誤解
本書では、いくつかの日本人の誤解(例・ホームステイが当たり前だと思ってしまう。「英語」を学ぶために留学してしまう)を解きます。
たとえば「アメリカの大学に留学したい」と言うその理由を聞いてみると、かなりの確率で「英語がしゃべれるようになりたい」と答えが返ってくるのは、もはやお馴染みの光景です。
「またか….…」と思いつつ、さらに詳しく話を聞いてみると、「レベルの高い大学に入りたい」「できれば、ハーバード大学」「もしくはUCLA」と続くことも、これがまた何度あったことか。そればかりか、「奨学金をもらってただで入れる方法を教えて」と言い出す確率も、とても高いのです。
こうした人たちに会うと「あー、世界とは別の基準でしか、物事が測れない人たちがまだこんなにいるのか」と心のそこからがっかりしてしまいます。
これはマレーシアでもあるあるです。
英語ができないうちから、「とにかくレベルの高いところに!」と望むかたが多いのです。入る「だけ」ならできるかもしれませんが、うっかり英語も怪しいのに競争が激しいところに放り込まれたら、しんどい思いをするのは本人です。
そんなわけで、アメリカの場合、先に比較的入りやすく学費も安い「コミュニティ・カレッジ」に通い、そこから大学に編入する方法がよく知られています。
しかし日本人は「コミュニティ・カレッジ」を語学留学の場所としてしまうため、8割が「ドロップアウト」してしまい、大学には入れない問題があるそうです。
この原因は、「カレッジの英語の授業についていけない」「語学学校の授業が簡単すぎてやってられない」の2つの面があり、また「日本人留学生の仲が良すぎてつるんでしまう」も挫折の原因だとします。
これも、マレーシアのインターで見られる挫折原因そのものです。
正規の中学の授業にはついていけない、しかし「語学特別クラス」の授業は簡単すぎてつまらない。「特別クラス」にいるのは日本人ばかりなので、仲良くなってつるんでしまうーー同じです!
昨今では、コミュニティ・カレッジの学費も高騰しているため、そこでお金も失ってしまい、日本の大学に戻りたくても予算がなくなってしまいます。
ではどうしたらいいのか。栄さんは、高騰した学費の中、どう留学させるかの方法をいくつか紹介します。
放送大学と期間工という選択
一つが放送大学からの編入を狙うことです。ウルトラCとして紹介されています。
コミュニティ・カレッジでのドロップアウト率が8割ですが、日本の大学で60単位を取得し、アメリカの大学に編入すれば、トータルの学費は減ります。そこで、学費が安く、時間の融通が効き、資金稼ぎができる場所として著者が勧めるのが、放送大学です。放送大学は歴とした大学で、自分のペースで勉強でき、授業料は1科目あたり1万1000円。ですから、40万円弱で大学編入の準備ができ、なおかつバイトも可能です。
私が通う「ピープル大学」は放送大学と同様の米国のオンライン大学ですが、授業料は1科目あたり300ドルなので、今だと4万円弱です。英語ができれば誰でも入れます。マレーシアのカレッジは欧米への編入が目的に設立されているところもあるので、ここもありだと思います。
ここで、「有名大学」を目指してしまう人がいるのですが、編入時には入ってからの「成績」が重視されるので、よほど自信がある場合を除いて、あまりお勧めしないです。「名前」にこだわることにあんまり意味がないのです。
もう一つが自分で学費を貯めることです。著者は学生でもできる稼げる仕事として「期間工」を推奨しています。なるほどなーと思いました。
再三お伝えしているように、アメリカの大学の学費はとんでもなく高額です。それを若者が「自分で稼ぐ」と心に決め、頑張るという意志を持つことは本当に素晴らしく、心から応援したいと思っています。
しかし、高校を出たばかりの一〇代の若者が短期間で学費を稼ぐのは至難の業。たとえ時給のよいアルバイトを見つけたところで日々の暮らしのなかでせっかく稼いだお金が目減りすることもあるし、長時間労働で体を壊してしまうこともあります。
それでも自分で学費を貯めたいという若者に対し、私は「期間工」という道を推奨しています。
若い世代にとって「期間工」は耳慣れない言葉で、文字さえ浮かばないという若者がほとんどなので、いつも「期間工とは何か」から話を始めなければなりません。
期間工とは、主に自動車工場で一定期間だけ働く工員のこと。つまり非正規雇用者なのですが、目的を持って短期間で資金を貯めるにはとても効率のよい制度といえます。
今アメリカの大学で学んでいる私は大学側が「多様性」にこだわっていることを知っていますので、この方法はすごくありじゃないかな、と思います。クラスにトヨタの期間工をしていた経験がある人がいたら、彼・彼女から学べるものは大きい気がしますから、かなり良い経験として評価されるのではないでしょうか。
栄さんは、学費を貯めるために自衛隊に入ったJくんの例を紹介します。
そのエッセイと元自衛官という経歴が大学当局の目に留まり、こういう学生ならほかの学生にとてもよい影響を与えるに違いないと、入学許可と同時に授業料免除とはいかないものの、かなり優遇された奨学金が支給されることが決まりました。
実は、アメリカの大学はJ君のような個性的な経歴の持ち主を好む傾向があります。画一的な学生が揃うよりも人種も信条も経歴もさまざまな学生を集めたほうが学生同士が刺激し合い、活性化し、大学の価値が上がることを知っているのです。
今いるアメリカの教育学の授業でも嫌というほど「教室の多様性」の話が出てきますので、この方法は大アリなんだろうなと思いました。
将来、子供を海外で学ばせたい方にはすごく参考になる本だと思いました。
それではまた。
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