第二言語をいつ教えるべきなのか。国によって異なる3つのシナリオを比較してみよう
読者から「日本語が完璧になってから英語を教えるべきだと思いますか? それとも、小さい頃から多言語を教えたほうがいいでしょうか?」と聞かれました。
ちょうど大学院でそんな論文が出てきたので紹介します。
日本と同様に、英語を第二言語とするインドではどうでしょうか。
インドの言語学者、作家、教育者である、ペギー・モーハン(Peggy Mohan)の論文「Learning in inclusive schools」です。 Economic and Political Weeklyに掲載された英語の論文です。
ペギーはインドの学校において、英語環境に移行するための3つのシナリオを挙げていました。
著者によると、インドでの小学生生徒の母語はヒンズー語だったり、タミル語だったりとさまざまですが、社会的に成功するためには、英語が重要だと理解されている社会なのだそうです。
では、貧しい人々はどうやってこの環境に行き着くのか?
論文の中で「英語教育をいつやるのがいいか」が議論されています。
(背景説明)
デリーの私立学校では、建設用地を優遇価格で購入した学校は、経済的に恵まれない子供たちのために、20%を用意しなければいけません。
これは、そんなEWS(economically weaker sections =経済的弱者)の子どもたちを、英語環境にどう統合するかという論文の一部です。
英語が重要な理由について、ペギーはこう書いています。(原文は英語)
ペギーが挙げているシナリオは3つ。
3つのシナリオを比較してみる
シナリオ1: 遅らせた統合
異なる文化や言語環境にいる子どもを、早期から異質な英語環境に無理に押し込まない方が良いとする考えです。幼少期の学習は、子どもが知っている世界とつながりがある方が効果的であるため、地域の言語で基礎を築いてから英語の環境に移ることが推奨されています。このアプローチは、英語教育を遅らせることで、子どもがより自然に適応しやすくするものであり、結果的に時間を節約できる可能性があると考えられています。
シナリオ2: 中等教育開始時(6年生)に英語環境へ移行する 段階的統合
初等教育は地元の言語で行い、中等教育が始まる6年生で英語環境に移行します。インドでは初等教育と中等教育が同じ教育機関で行われることが一般的ですが、他国では中等教育への進学は新しい入学プロセスを含むことが多いです。このシナリオでは、特定の選抜試験を通過した子どもたちが6年生(または中等教育)から英語教育の学校に入学し、仲間とともに進むことで自信をつけることが期待されています。一定数の子どもが参加することで、単なるチャリティではなく、実際の教育の一環として受け入れられるようになるとしています。 入学試験に合格した自信と、20%の定員枠で多数のEWS学生がいることで、彼らはクラス内で重要な存在となります。これにより、孤立感や慈善の対象と見なされることを防げます。
シナリオ3: 初期からの統合 初等教育から英語環境に浸り、徐々に英語力を習得する
子供たちを初等教育の早い段階(例: 2年生)から英語環境の教室に参加させます。初めは言語の壁で苦労しますが、授業や遊びの中で英語を「聞く」ことに慣れ、理解力を高めます。音楽や演劇などを通じて、実用的な英語表現を学びます。 時間をかけて自信を築き、クラスメートの支援も受けながら、積極的に授業に参加できるようになります。この方法は最も人道的であり、子供たちが早期から英語環境に適応する助けとなります。
国によってとっている方策は異なる
現在、第二外国語の習得方法において「初期からの統合」「段階的統合」を採用している国は多く、特に欧州の一部やアジア諸国の教育システムで見られます。一方、「遅らせた統合」を選択している例も一部存在します。以下はChatGPTの力を借りながら、調べてみました。
1. 初期からの英語教育・段階的統合を行っている国
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