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この秋に読みたい!『教育改革を問う――キーパーソン7人と考える「最新論争点」』

 2010年代から加速化してきた教育改革。よりよい教育の在り方を求め、いまもなお議論は絶えず、デジタル化をはじめとした激しい社会の変化によって改革の速度はアップしている感さえあります。
 そのようななかで、いったん歩みを止め、これまでどんな施策が展開され、それが現在にどう影響しているのか、そして未来はどうなっていくのか、この秋に教育改革について考えてみるのはいかがでしょうか。
 本書『教育改革を問う』では、教育改革を追い続けてきた著者が、現在、過去、未来の学校教育について教育界のキーパーソン7人と共に考えていきます。
 また、本書では月刊誌『別冊教職研修「学校管理職合格セミナー」』の13年に及ぶ巻頭コラム「教育界最新論争点」(現在も継続中)から28本を厳選し収録。節目となった教育政策や法改正、事案などを振り返ることで、現在につながる教育改革の流れが把握でき、温故知新にもつながります。

[著者]中西 茂(なかにし・しげる)
    玉川大学教育学部教授/教育ジャーナリスト
[略歴]1958年、三重県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。元読売新聞編集委員。長期連載「教育ルネサンス」の立ち上げ人で、教育問題の取材歴は30年近い。2009年から『別冊教職研修「学校管理職合格セミナー」』で巻頭コラム「教育界最新論争点」を続けている。2016年から玉川大学教授。文部科学省で、中央教育審議会教員養成部会などの委員、教育相談などの協力者会議の委員を務めた。現在、教育委員、学校運営協議会長、学校関係者評価委員長として学校現場を見る立場でもある。著書に『もう一度考えたい「ゆとり教育」の意義』(悠光堂、共著)など。

PART.1

教員を巡る政策を 荒瀬 克己さん(教職員支援機構理事長)に聞く

 京都市立堀川高校を「堀川の奇跡」と言われるまで躍進させた元校長は、大学の教員を経ていま、独立行政法人「教職員支援機構」(NITS)の理事長として、教員免許更新制が廃止された後の新しい研修体制の構築に大きな影響力と責任を持っている。中央教育審議会の副会長・初等中等教育分科会長という立場でもあり、その発言が注目される存在だ。話題が、これからの教師、そして校長の在り方に及んだのは当然の成り行きだった。

PART.2

文部科学省を“定点観測”する 青木 栄一さん(東北大学教授)に聞く

 教育政策に限らないことだが、政策は少なくとも10年スパンで見ることが大切だ。教育行政学者の青木栄一さんは、文部科学省を“定点観測”する数少ない研究者の一人で、『文部科学省』(中公新書、2021年)の著者である。文科省の国立教育政策研究所勤務の経験もある。この10数年の文科省の政策形成過程をどう見ているか、聞きたいと思った。その結果、官僚論から、背景にある政治との関係、ひいては大学論まで展開されることになった。

PART.3
「情報化」を通した教育の未来とは 遠藤 洋路さん(熊本市教育長)に聞く

 コロナ禍でいち早くオンライン授業を実現し、「奇跡」とまで言われた熊本市。そのわけを記した『教育委員会が本気出したらスゴかった。』(佐藤明彦著、時事通信出版局、2020年)が話題を呼んだ。自著『みんなの「今」を幸せにする学校』(時事通信出版局、2022年)で、新しい学校のカタチを示した遠藤洋路さんとの対話は、単なる「教育の情報化」の現状にとどまらず、教育委員会改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)にも及んだ。

PART.4
文科省のキーマン 合田 哲雄さん(文化庁次長)に聞く

 ご本人は「官僚は黒子」が口癖だが、異動する所、異動する所に大きな政策課題が待ち受けているのだから、「文科省のキーマン」と呼ばざるを得ない。初等中等教育の分野だけをみても、担当室長と担当課長として学習指導要領の改訂に二度携わり、教員の働き方改革を主導したかと思ったら、内閣府に出向して次の指導要領につながる教育の未来像の取りまとめ役となった。メディアへの露出も増え、黒子ではいられなくなっている。

PART.5
「働き方改革」のインフルエンサー 妹尾 昌俊さん(教育研究家)に聞く

 「教育研究家」という肩書が通用するのはこの人以外にはあまり知らない。大手コンサルタント会社から子育て中に脱サラして教育問題に関わるようになったという経歴を持つ。文部科学省の政策に対して在野から直球勝負の指摘をし続けた結果、学校の働き方改革を推進するうえで欠かせない存在になっている。そんなインフルエンサーとともに、さまざまな教員の働き方について話し合ってみた。

PART.6
新しい『生徒指導提要』をまとめた 八並 光俊さん (東京理科大学大学院教授)に聞く

 生徒指導の基本を記した『生徒指導提要』が12年ぶりに改訂された。その中心にいたのが八並さん。1960年代のSF漫画『8マン』の主人公そっくりの風貌で、自身もそれを意識したかのような活躍ぶりだ。子どもたちを取り巻く環境が劇変するなかで、課題が山積する生徒指導のこれからを、「提要」改訂のねらいとともに聞いた。

PART.7
ミスター・コミュニティ・スクール 貝ノ瀨 滋さん(三鷹市教育長)に聞く

 コミュニティ・スクールの原型を作ったとも言える東京都三鷹市で長年、教育長を務めてきた。コミュニティ・スクールの拡大は、この人抜きには考えられない。文部科学省の参与や政府の教育再生実行会議委員も経験し、この政策を引っ張る存在だ。制度の広がりとともに地域と学校の関係がどう進化していくのかを知りたいと思った。

SPECIAL
[特別対談]氏岡 真弓さん(朝日新聞編集委員)と教育取材を振り返る

 朝日新聞の編集委員、氏岡真弓さんは、筆者の中西とほぼ同時期に教育専門記者となり、いまも現役の教育記者である。そのキャリアは約四半世紀。学級崩壊を巡るキャンペーンをはじめ、教育問題を捉える切り口のするどさには定評がある。さまざまな取材先で出くわし、「えっ、ここにも!」と驚くこともたびたび。ただ、教育取材についてじっくりと話すのは初めての機会となった。
 普段はあまり知ることのない教育記者の仕事や教育取材の在り方、そして教育記事の読み方などを大いに語っていただいた。(司会:教育開発研究所編集部)

――「はじめに」より
 教育は常に論争が起きるものです。誰もが教育を受けた経験をもとに一家言を持っています。そして、どれが正しいと言い切れない。そこがむずかしくておもしろい。教育論争は正解のない問いを考える原点のような気がしていますが、本書を読んで、自分なりの答えを探していただければ幸いです。

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