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#10:憧れのルーヴル美術館で彫像の迫力を知る
パリと言えばルーヴル美術館です。
この世界一有名な美術館はおそらく世界一混んでいるので、丸腰で臨むのは危険です。館内もものすごく広く展示数も多いですし。
それでも美術館巡りにやってきたのだし、有名作品を満足できるまでじっくり観たい。
そこで私が考えた作戦はこうです。
一度にまとめず、複数回訪れるのです。
まず、現地ツアーで有名どころや入り口など知っていると役立つ情報を教えてもらっておきます。
そして次に、今度はひとりでオーディオガイドを借りて自分のペースでのんびり見て回ります。
書いてみると大した作戦でもないのですが、最初にプロに全体像を教えていただいたのはとてもよかったです。
じっくり見て回ろうとすると1週間かかるという話も聞いたことがありましたが、結果的にはツアーと自分一人の計2回訪れて満足できました。
現地ツアーは、金曜日の夜に訪れるツアーでした。
なぜ金曜日かというと、金曜日だけ夜間まで開いていて、夜間は混雑が若干改善されるので狙い目だかららしいです。それでももちろん混んでいましたが、普段の混雑はこの比ではないとのことです。
カルーゼル・デュ・ルーヴルという地下ショッピングセンターから入りました。(帰りにおみやげもここで購入)
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逆さピラミッドのあるホールから
この現地ツアーがとてもよくて、ルーブル美術館で絶対に観ておきたい展示を少人数でさくっと回って解説が聴けて、その場で疑問にも答えていただけます。
なによりそれまでずっと一人でいたので、日本語を聞けるのが嬉しい。
同じく一人旅の方とおしゃべりしたりして一期一会を楽しみました。
この方とふたりでガイドさんの近くを歩いていたのですが、とても聡明な方で、その場でガイドさんにする質問が鋭く、ガイドさんも嬉しそうに答えていました。
私はその横で「ははぁ!」とか「へへぇ!」とか、ハ行を駆使しながら興味深く拝聴。
そのときに思ったのが、美術館や博物館を回るときにガイドさんがいてもいなくてもさらに楽しめる「もし~なら、どうなんだろう?」という問いです。
条件の「もし」で、例えば神話の前提で「愛の神ヴィーナス(ギリシャ神話のアフロディーテ)はりんごを持っている」という知識を仕入れたら、「ではもしミロのヴィーナス像の腕がついていたら、りんごを手にしているかもしれない」という感じです。
あとは仮定の「もし」でもっとぶっ飛んだ想像をして楽しむのもありです。
美術の専門家が色々な発見や解釈をして既存の知識というのもたっぷりありますが、せっかく自分で直接観てるわけですから自分の想像上で作品を転がして楽しんだっていいわけです。
知識があると深く楽しめますが、「こう観なくてはいけない」というのは、美術館賞を退屈にさせますね。
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右手には「最も美しい女神に贈る」と記した黄金の林檎、
左手にはそれを映した鏡(柄のみ)
鏡に映してるっていうのがナルシストっぽくていいですね。
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足元にいるのはワシ
さて、ツアーの中ではテレビや本で何度も観ていた作品を実際に観られて、大興奮でした!
お目当ては絵画ばかりだったのですが、実際に行ってみて自分の予想をはるかに越えて感動したのは彫像でした。
特にギリシャ彫刻、サモトラケのニケ。
ナイキの語原にもなった勝利の女神です。
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それまで平面でしか見たことがなかったものが、立体としてそこにあります。ものすごく大きい。
発見当時はパーツが細かくばらばらになっていて、しかも右の翼は見つからず後から補ったものという話なのに、目の前にある彫像は今にも飛び立っていきそうな迫力があります。よくここまで復元できたなぁ。
完全な形で断崖絶壁上の神殿に立っている様子を想像し、また発見した人になって腰を抜かすところを想像したりしていました(笑)。
紀元前2世紀に、こんなに美しいものをどんな人が彫ったんだろう。
無くなってしまった頭や腕はどんなだったんだろう。
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美術館巡りで覚悟しておくべきことの一つとして、お目当ての絵が展示されていない可能性があることです。
他の美術館へ出張していたり修復していたり単純に休ませていたりと、「この絵のために来たのに!」とがっかりすることもあります。
しかし、逆の場合もあります。
今回、ルーブル美術館へ行くのがとてもタイミングが良かったと思ったのは、修復直後のドラクロワの「民衆を導く自由の女神(1830年7月28日)」が鑑賞できたことです。
なぜかというと、この修復で大発見があったのです!
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この有名な絵は、そんなに見たことはないけれど女性の服が黄色だったことは覚えています。
しかしそれが違っていたというのです!長年塗り重ねたニスが酸化して黄色くなっていたそうです。
実は灰色がかった白!
配色として全然違った印象になり、自由の女神が掲げるフランスの三色旗の色が引き立っていました。
背景も鮮やかな青空が出てきて一気に明るい作品になりました。
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ずいぶん変わりましたね!
これが実際の色ならば、ドラクロワのこの七月革命を題材にした作品の見方も変わってくるのでしょうね。
そのほかでまとめるのも恐縮ですが、あのモナ・リザやロンドン・ナショナル・ギャラリーで観たのと少し違うバージョンの「岩窟の聖母」などのダ・ヴィンチ作品、大好きなラファエロ作品などを巡って夢のような時間を過ごしました。本当に宝石のような名画たちです。
幼い頃からのあこがれの絵画を前に、「来たよ、来ちゃったよ…!」と心の中で飛び跳ねていました。
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左がロンドン・ナショナル・ギャラリー、右がルーヴル美術館
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そして2回目。今度はひとりでやってきました。
パリはミュージアム・パスというのがあり、それを購入して事前に日時を指定しておきました。
今度は前回とは違う、あの有名なガラスのピラミッドにある入り口から入りました。
ものすごい行列です!
その場でチケットを購入している人はもちろんですが、予約していても並びます。
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ずいぶん待ってからようやく入場。
一度来たことがあるとひとりでも自信を持って進んでいけます。
…と思ったけれどオーディオガイドを借りる場所が分からなかったりして、やっぱりウロウロしました(笑)。
今回のお目当ては主に3階です。
3階に展示されているのは14~19世紀のフランス絵画やオランダ絵画など。
面白いことにルーヴル美術館でもロンドン・ナショナル・ギャラリーと同じく、まだらなオーバーツーリズムとなっていて、ここ3階もほとんど人がいません。
フェルメールの絵もあるのに!
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という訳で、絵が好きで下の階の人混みに酔ってしまった方は3階に避難して、のんびり名画を鑑賞しましょう。
近くに印象派の宝庫、オルセー美術館があるのでルーヴル美術館には多くないものの、印象派作品もいくつか観ることができます。
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他にもテレビなどで見たことのある作品が、興奮を抑えきれなくなるくらいたくさんあります。
正直なところ、見たことがあってなじみがあるから良い作品に見えるのかなとも思いましたが、実際に間近に観た繊細な筆致やコントラストの美しさ、そして題材のおもしろさから、「好きなものは好き」と結論が出ました(笑)。
例えばこのラ・トゥールの「ダイヤのエースを持ついかさま師」。
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左の男女3人が組んで、右のお金持ちで世間知らずな若者をだまそうとしている絵です。
この女性の目つき、いかにも「抜かりはないだろうな?!」と言っているみたいで好きです(笑)。男性のドヤ顔もいい。
また、このジャン・シメオン・シャルダンの『赤エイ』もなぜか昔から好きでした。
エイは当時の庶民の大好物だったとか。
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オーディオガイドはニンテンドー3DSに内蔵されたものです。
面白そうと思って借りてみました。
もちろん有用でしたが、膨大な数の展示に比べて正直紹介してくれる作品が少なく、解説の内容をとってもやはり現地のガイドさんには遠くおよばずでした。
とても広い館内なので、マップ上に現在地が示されるというのは大変ありがたかったです。それでも迷いましたが…。
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3階の絵をじっくりと観た後は、下の階に降りて前回鑑賞した作品をまた眺め、大満足でこの世界一有名で世界一行ってみたかった美術館を後にしました。
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夫婦で宴席に臨む、女性蔑視をしないエトルリア人の
死後も永遠の愛を誓う二人です。
ところで、日本も最近はずいぶんと物騒になってきましたが、やはり日本とは比較にならないほど海外では犯罪に注意が必要です。
特にパリは要注意という話を、地球の歩き方やブログなど様々な場所で目にしました。観光客をねらったスリやひったくりといった軽犯罪が多いらしい。
このルーヴル美術館の館内でもあるというのです!特にモナ・リザなどの人の多いところで。
東京の朝の通勤電車とまではいかないですが、混んでいるとスリにはかっこうの仕事場です。
ルーヴル美術館に入るのも安くないし行列に並ばなくてはいけないので、「そんなに手間とお金をかけてスリするの?」とにわかには信じがたいのですがあるようです。それでも元が取れてしまうんですね。。
いくら軽犯罪とはいえ、そんな目にあったらせっかくの旅行の楽しい気分が台無しです。それに今回はひとり旅なので頼れるのは自分だけ。
そこで対策として、まずは片っ端から現地で起こった犯罪の事例を見ていきました。
外務省のサイトや地球の歩き方、そして旅行会社や個人のブログなど。
まずは敵を知る。そしてショックで絶望する(「こんなことあるの?!」)。その後、気を取り直して何をしたらいいのか確認する。
とはいえ、どんなに対策を講じても巻き込まれるときは巻き込まれるものです。
その後のリカバリーをいかに早くするかも対策しておきます。
パスポートが無くなったらどうしたらいいかを調べておくとか、スマホが無くなったときのために必要な書類(航空券の番号やチケットなど)は印刷してとっておくとか。
しかし、ここまでしても…ついに…遭ったのですよ…。
それはパリでの早朝、オルセー美術館に行くために人のほとんどいないルーヴルのガラスのピラミッドを横切っていたのですが、そのときニコニコと話しかけてくるロマとおぼしき女の子の集団が!
これは当時よくあると見聞きしていたもので、集団で観光客にアンケートをさせてほしい、もしくは署名してほしいと言ってボードを持って近寄ってきて、書いている間に他の人たちに取り囲まれてバッグからすられるというものです。
女の子たちが近づいてきて話しかけられた瞬間、「あれだ!」と察して、「脱兎のごとく」というフレーズを考えた人が見たら「コレよ、コレ!」とほめてもらえるくらいお手本のような脱兎を披露して走って逃げ出しました。
話しかけた方も話しかけ終わる前に私が走り出したのでびっくりしたらしく、「お、おいっ!」という声がしたのを覚えています。
すごく俊敏そうな子たちだったので、走って追いかけられたら捕まったかもしれませんが、そこまで暴力的な集団でなくて助かりました。
逃げてほっとしたのもつかの間、すぐ近くで別の女性に同様にニコニコしながら話しかけられたのでまた逃げ出しました。
早朝、危ないな。
ひとりでふらふら歩いている人にニコニコ話しかけてくるのは詐欺師か宗教の勧誘かのどちらかだと心得ましょう。
今回、幸運にも、一番危ない目に遭ったものでもこれくらいですみました。
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違う時間帯ですが、こんな素敵な写真を撮っている人もいます。
・参考資料
記事の内容は旅行当時の2024年4~6月の情報を基にしています。最新情報・正確な情報はご自身でお調べのうえ、ご確認ください。