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いろんなおはなしたち

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なにかについての、おはなし。
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#エッセイ

おわりのはなし。

恋人がいなくなった。失踪したとか突然死したとかではなく、恋人という呼称をつける対象が消えた、という話。男の人も女の人も両方、無くしてしまった。失う選択をしたのは紛れもなく私自身なのだけれど。

どうしてそうしたのかは、未だによくわからない。仕事を辞めた理由を覚えていないしわからなかったように、何かを自ら失う時の気持ちというのは何故だか酷くぼんやりとしている。自衛なのかもしれないし、単に短期記憶の容

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思い出のはなし

思い出、言い換えれば記憶は、きっと喉のあたりに存在しているんじゃないかと思う。それは息をしていて、平素は別にそこにあるだけなのに膨らむと喉につっかえてくる。呼吸する思い出。

ふと思い返した時にしんどくなるやつと、ちょっとだけ愉快な気持ちになるのが、ある。どっちにしろ思い出は綺麗になってしまうからにこにこしながら見つめてしまうのだけれど。前者も後者もずっと同じ形をしていることってあんまりなくて、同

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現在進行形のはなし 1

ああ、そういえば。と思った。唐突に。

今の恋人の話をしていなかった気がするし、今までしようとも思ったことがなかったのにちょっと残しておいてもいい気がするなぁって気持ちになったので、やってみる。

出会ったのはバイト先、お客さんと雀荘のメンバーとして。別の大学で歳は1つ上、身長は30センチくらい違う、性別も違う、そんな人。第一印象は、真面目そうな人だなぁ?くらい?当時は別の彼氏がいたわけで、特に仲

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誰かのはなし

これは、誰の話だろう。夏の太陽みたいにまぶしいのに、冬の空みたいに灰色のひと。北陸出身なので、どうしても冬の空は灰色のイメージになる。たまにさす晴れ間も、どうせすぐいなくなっちゃうんでしょ、くらいの距離感。

人を疑わないひとが、この世に存在するのだろうか。いや違うな、人を信じられるひとってとても尊くてきらきらしているのに、世界で一番怖いな、と思う。信じた結果、裏切られた時のことを考えると、どうし

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