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人吉〜鹿児島間はどこまで高速化できるか―肥薩線再生策⑤―

前回までさまざまな人吉〜鹿児島間の高速化を提案した。肥薩線の山線を復旧し、持続可能な運行をするには、鹿児島とのアクセスは欠かせない。
現状山線の日常利用はゼロとJR九州社長が言う通り、人吉以南の輸送需要は、はっきり言ってない。個人的に自家用車転換が最適と思う。しかし鉄道を残すなら、鹿児島に向かう需要、鹿児島から人吉へ向かう需要を作り出さないと鉄道復旧はありえない。
鹿児島空港や鹿児島市と直結し、九州周遊旅行をするお客さんのニーズをつかむ、鹿児島への通勤通学需要を作らなければ肥薩線山線は残せない。ゼロから需要を作り出すから困難である。
人吉から鹿児島中央までは、現行の営業キロで102.5km。東京〜熱海間程度である。人吉〜熊本は、124.2kmなので、東京〜沼津間程度である。
人吉〜宮崎は、146.6km、東京〜富士間程度である。鹿児島は、人吉から見れば距離的には最も近い都市と言える。

現状の人吉からの移動時間


人吉駅から鹿児島中央駅まで、自家用車なら2時間15分程度である。公共交通機関なら2時間25分。これは鹿児島空港乗り換えのリムジンバスの時間である。残念ながら残った肥薩線を使うルートは検索できない。
人吉駅から熊本駅までは、自家用車で2時間22分、公共交通機関では、新幹線を使うと2時間少々、高速バスのみでは2時間半ほどである。
人吉駅から宮崎駅までは、自家用車で2時間12分、公共交通機関では3時間前後である。

いずれの都市も遠すぎて、現状日常利用は見込めない。しかし今まで挙げた改善策で鹿児島との所要時間を短縮したら日常利用できるようになるのかを検証したい。

人吉〜吉松間

こちらに書いたが、現行運休前は、1時間以上かかった同区間は、、新加久藤トンネルで15〜20分になる。途中駅がなく、減速箇所もほぼないので160km/h運転すれば12分だろう。
運休前は58分だったので、ここだけで46分短縮できる。

吉松〜隼人間

こちらは鹿児島空港付け替えがメインだが、利用の少ない駅の廃止、空港付近や大隅横川付近など曲線緩和で160km/h運転。これにより、人吉〜鹿児島空港は吉松、霧島温泉のみ停車で26分。各駅停車タイプでも28分になる。鹿児島空港〜隼人は6分なので、吉松〜隼人間は32〜34分になる。

隼人〜鹿児島中央間


複線化で行き違い待ちがなくなる他、鹿児島〜重富間をトンネルに付け替えで160km/h運転する。
各駅停車の所要時間は、複線化とトンネル化だけで、現在最速で32分が25分に短縮される。姶良市内の駅間距離が短いので、肥薩線乗り入れ、国分以北の日豊本線乗り入れを快速化(区間快速)、停車駅を鹿児島、帖佐、加治木、隼人に絞ると所要時間20分になる。空港連絡の速達列車(空港快速)を設定し、鹿児島中央駅〜鹿児島空港の途中停車駅を鹿児島、隼人だけに絞ると鹿児島中央〜隼人間は16分になる。

ここまでをまとめると、
完全に各駅停車でも人吉〜鹿児島中央は67分になる。日豊本線内を快速運転すれば62分、空港快速で停車駅を最小限に絞ると48分になる。
 1時間前後なら通勤通学圏になるが、1時間を超えるとパターンダイヤにする際に列車の編成数が多くなる。67分で毎時2本運転なら、鹿児島中央駅を6時に出た列車は7時7分に人吉駅に着き、7時半に人吉駅を出発し、8時37分に鹿児島中央駅に到着。次に鹿児島中央駅を発車できるのは、9時。その間6時半、7時、7時半、8時、8時半に出発する編成が必要なので6編成必要になる。毎時1本なら、人吉駅、鹿児島中央駅での待機時間が53分になり、効率が悪い。
48分で毎時2本運転なら、鹿児島中央駅を6時に出た列車は6時48分に人吉駅に着き、7時人吉駅発、7時48分鹿児島中央駅到着。8時の人吉行の運用に入れる。だから4編成で毎時2本運転でき、毎時1本なら2編成で済む。
パターンダイヤにして頻発するなら、60分以内の所要時間の区間で運行するのが効率良い。肥薩線なら、鹿児島中央〜鹿児島空港、又は霧島温泉の各駅停車(所要時間34分、40分)、鹿児島中央〜吉松の区間快速(所要時間48分)、 鹿児島中央〜人吉の空港快速(所要時間48分)がこれに合う運行区間になる。

想定ダイヤ

人吉〜吉松
空港連絡鉄道なら、それなりの本数が求められる。鹿児島中央駅〜鹿児島空港は、817系タイプの2両編成なら、毎時4〜6本程度。肥薩線へは毎時1本程度だろう。817系は1両あたり、130〜150人の定員だが、スーツケースを持った旅行客ならその3分の1程度しか乗れないので実際乗れるのは90人程度。4〜6本のうち毎時1本を人吉に乗り入れれば十分だろう。人吉〜吉松間のトンネル化で途中駅はないので各駅停車設定の必要もない。空港連絡需要創出のため、くま川鉄道へは、819系のような蓄電池車両を併結して乗り入れれば良い。こちらは片道30分ほどなので往復1時間。鹿児島中央から乗り入れると、鹿児島中央〜湯前の所要時間は1時間20分ほどなので、3時間毎に空港空港快速に併結して乗り入れることになる。くま川鉄道自体毎時1本も走っておらず、朝夕の通学需要中心の運行ダイヤなので3時間毎の鹿児島空港経由鹿児島中央乗り入れで十分だろう。
ということで毎時1本の鹿児島中央〜人吉間空港快速に、3時間毎にくま川鉄道乗り入れの蓄電池車両を併結して走るのが良い。

吉松〜鹿児島空港
この区間は、現状も普通列車が11往復。1時間1本どころか、2〜3時間も間が空くことさえある。ローカル輸送は、肥薩線内各駅停車、日豊本線は隼人、加治木、帖佐、鹿児島のみ停車の区間快速を毎時1本走らせれば十分である。
霧島温泉以外は利用者が少ないので、日当山駅、大隅横川駅を通過し、湧水町の中心駅でもある栗野、吉松停車の快速を設定しても良い。理想は1時間に区間快速1本、快速1本だが、利用者数で言うなら、1時間毎に区間快速と快速を交互に走らせても良いだろう。快速は人吉方面には人吉まで58分はかかり、パターンダイヤにするには人吉駅や鹿児島中央駅で折り返しに長時間停車が必要となるためメリットがないが、小林方面には有効である。吉都線は利用者が少ないが、吉松〜小林間は駅が多く、各駅の利用者も少ない。吉都線は1日8往復で、2〜3時間に1本の運行である。京町温泉、えびの、小林に停車駅を絞り毎時1本走らせれば鹿児島空港、鹿児島中央駅へのアクセスが良くなる。元々西諸地区と呼ばれるこの付近は鹿児島市とのつながりが強く、移動需要はある。小林から鹿児島への需要を肥薩線に取り込むことで輸送密度をふやせる。
霧島温泉〜鹿児島空港は、鹿児島中央から各駅停車を毎時1本乗り入れすれば十分である。しかし鹿児島空港駅は地下深くなるので引上線が設置困難になることも予想されるので、その場合各駅停車を霧島温泉発着にすれば良い。

鹿児島空港〜隼人


鹿児島中央〜鹿児島空港は、鹿児島空港駅ができれば5,000人前後の利用者が見込めるので毎時4本の空港快速は必要である。数値は過去に条件が似ている新千歳空港と比較して推計したものによる。速達型はさらに2本は必要なので、これが快速、区間快速になる。日当山駅は快速、区間快速が停まらない駅になるので各駅停車が必要となる。鹿児島中央から鹿児島空港、または霧島温泉まで各駅停車が毎時3本。これは日豊本線内の各駅停車がそれなりに本数が必要なので、毎時6本と想定し、3本を国分行、3本を鹿児島空港/霧島温泉行になると想定した。

隼人〜鹿児島中央


現状各駅停車、または各駅停車に近い特急が1時間に2〜3本走っているが、長い閉塞区間で増発不可能なことから輸送力が不足して慢性的に混んでいる。沿線の国道も渋滞箇所なので、輸送力が圧倒的に不足している。
ここは市電並の各駅停車10分おきで対応するのが良い。間隔が空くと自動車からの転移が見込めない。鹿児島中央〜鹿児島空港/国分間を毎時3本ずつ運転すれば合計6本になる。
停車駅を鹿児島、帖佐、加治木、隼人に絞り、肥薩線、日豊本線国分以北に乗り入れる快速は、毎時1本ずつ。理想を言えば2本ずつで、片方は鹿児島空港、国分以北を各駅停車、もう片方は肥薩線内、日豊本線内も快速にすると良い。しかし817系タイプの2両の電車を使っても、輸送力過剰だろうから、実際は毎時1本の快速を乗り入れ先で1時間ごとに各駅停車、快速とするだろう。特に肥薩線内や国分以北の駅では2時間に1本で十分な駅の方が多い。
ここに空港快速を毎時4本、宮崎方面の特急を毎時1本入れる。
所要時間が大幅に短縮し、本数も増えて駅の待ち時間も減ればかなり自家用車から転移が見込める。自家用車から転移は、高速道路に対抗できる130km/h運転以上の高速運転が必要だが、鹿児島〜重富間をトンネル化、一部線形改良、複線化、立体化で160km/h運転すれば高速道路経由に対しても競争力が出る。特に鹿児島〜重富間は各駅停車も160km/h運転できるのは大きい。鹿児島中央から姶良市、霧島市まで市内移動と同程度の時間で着くなら新たな需要も生まれる。
財源は鹿児島〜重富間、吉松〜人吉間の長大トンネル区間を急行化し、急行料金を徴収。運賃を最初から急行料金込みにすれば良い。現状特急きりしまを各駅停車にして特急料金を徴収しても利用があるので割安な急行料金なら高速化費用の捻出も出来て運賃も比較的割安になるので良い。
さらに自家用車から転移を促すために、各駅の近くに駐車場設置は必須である。


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