滋賀から目指せJリーグ ! おじさんサポーター、レイラック滋賀とゆく その②
Jリーグを目指す滋賀県のサッカークラブ「レイラック滋賀」のファンになって18年目。いつの間にか白髪が増え、体力もすっかり落ちたけど、クラブはいっこうにJ入りできず。それでもめげないオジさんサポーターは、めげないクラブと今年も歩んでいきます。
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人生、甘くない
超がつく強豪「HondaFC」との一戦。キックオフ前からびくついていたオジさんですが、あれれ? 新加入選手の活躍で、なんと前半で2点先制!全く予想外の展開。ひょっとしてウチのクラブ、今年強いん? 勝てるんちゃうん。金星や! 早くも浮かれます。スタンドも大盛り上がりです。
そして、見てくださいこの見事な芝生。ふかふかのまさに緑のじゅうたん。小さな布引グリーンスタジアムですが、芝生はJリーグのスタジアムにもひけをとりません。この芝生を舞台にレイラックの選手たちが縦横に躍動し、次々に決定機をつくります。さあ勝利へ。
しかし人生同様、現実はそう甘くなかった。さすがはアマサッカーの盟主HondaFCでした。後半開始とともに、卓越したパスワークと個人技で、徐々にレイラックを追い詰めます。正確なパスが武器のHondaの選手たち。きれいな芝生ということは、それだけパスもきれいに繋がります。敵チームながらいつも見事な光景や。
そして同点に追い付かれます。舞い上がっていたオジさんの心は、早くもバキバキに折れかけています。さらに猛攻を受けます。ピンチのたびにスタンドに響く悲鳴を聞きながら、負けを見慣れたオジさんの心はもう敗戦モード。「まあそんな甘ないね」「やっぱHondaさん強いわ。いやよう頑張ったで」。自分に言い聞かせるように、敗戦の言い訳の準備を始めています。
レイラックがあんまり強くない(なかった)、というのは前回紹介したとおりです。最高順位は7位ですし、過去には8失点したこともあります。最下位だった昨年は12連敗も経験しました。これまで、幾度も幾度も叩きのめされてきたチームです。「ああこれまでか」。半ば諦めの気持ちを抱き、力なくピッチに目をやりました。
ここはホーム
選手たちの目は、死んでいませんでした。大声をかけ合って皆でゴール前を固めます。そう、いくら相手が強くても、スタジアムが小さくても、サポーターの数が少なくても、ここは滋賀県東近江市、我らがレイラックのホームです。選手にもサポーターにも、意地というものがあります。若いDF陣が必死の形相でシュートを防ぎます。キーパーが、右に左に跳んでボールを弾いています。
サポーター席から選手を鼓舞する「レイラック滋賀」コールが、一段と大きくなります。とても数十人の声量とは思えぬ力強さです。スネアドラムや太鼓の響きが、ともすれば沈みかける気持ちをたたき起こします。チームカラーの、水色の旗が劣勢を盛り返さんと、大きく翻ります。「頑張れー、レイラック頑張れ-」あどけないお子さんの声が響きます。
選手が踏ん張っているのに、あんな小さな子が応援しているのに情けない。はや諦めかけていた我が身を恥じつつ、オジさんは気持ちを立て直しました。最初から諦めてなかったんやで、という顔で「守れー」と叫びます。
小さなホームスタジアムはもう、一丸です。攻撃を防ぐたび、拍手がわき起こります。みんながクラブの、選手の名前を叫びます。JリーグだろうがJFLだろうが、もう関係ありません。目の前の試合がすべてです。まだ終わらないか、まだ続くのか。祈るような気持ちでいると、審判が試合終了の笛を吹きました。2-2。ホーム初戦、超強豪相手に貴重な勝ち点を掴みました。
苦しい試合をしのぎきったレイラックは、その後の試合を2連勝し、例年にないスタートダッシュに成功しました。
支えて、支えられて
試合後、スタジアムの外に出ると人だかりで賑やかです。なんと、今までピッチにいたレイラックの選手たちと、お客さんです。そう、レイラックは試合を終えたばかりの選手たちが観客の見送りに立ち、サインや写真撮影などのファンサービスを行うんです。今しがた試合終わったばっかり。相当疲れているはずですが、どの選手もにこやかな笑顔で、ユニホームや色紙にサインペンを走らせています。
この試合、好セーブを連発したGK伊東倖希選手の前にも、子どもたちが列をなしています。長身の伊東選手、子どもたちの目線までしゃがみこんで、一人一人、丁寧にサインに応じます。子どもたち、とても嬉しそう。前回、国領一平選手が話していた「選手とサポーターの距離が近い」っていうのは、この光景なんです。
-伊東さん、今日もいい守備でした。ピンチの時にサポーターやお客さんが声援送っていました。あれって聞こえてるんですか?
伊東さん「もちろん聞こえています。自分だけじゃなく、チームとして体を張って守っていますが、サポーターの声援が届くと、試合の中で苦しい時に奮い立つものがあります。耐えてやろう、という気持ちになってくるんですよ」
力強いヘディングで先制し、幾度も攻撃を跳ね返したDFの井出敬大選手も「辛い時間帯、子どもたちの声援が聞こえると助かってます」と声をそろえます。そうか、Jリーグみたいに大観衆でなくても、選手に気持ちは届いてるんやなあ。
ホーム初勝利を果たした4月2日の試合では、こんな一幕がありました。いつの頃からかレイラックが勝利した試合は、応援席の前で選手とサポーターが対面し、肩を組んでのダンスで喜びを分かち合う習慣があります。
この日、ダンスを終えると、選手の一人から「みんなで一緒に写真とりましょうよ!」と声が上がりました。芝生のスタンドを背景に、サポーターと選手、スタッフが一枚の絵に収まりました。オジさんもちょっと写りたかったけど、ここはお仕事です。撮影です。シャッターを切りながら思いました。アマチュアやけど、弱い(かった)クラブやけども、応援する側もされる側も、みな笑顔になれる光景をつくりだせるって、すごいやん。やっぱレイラック滋賀、いいやん。
選手の声が聞ける、選手に声が届いているのが分かる、って最高です。充実感をみなぎらせる選手と、喜びを爆発させるサポーター。年度明けで立て込んでいた仕事と、寒暖差でバテ気味だったオジさんも「よっしゃ明日も仕事頑張るぜ」と、元気をもらった光景でした。
次回は「あのレジェンドが滋賀に」
江藤 均
我らがレイラックが先日、天皇杯出場を決めました!その記事はこちらから