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[アニメーションコース特別授業 レポート]プロに聞く、アニメーションの裏側の世界。
こんにちは。広報グループHです。 あっという間に年が明けましたね。
今回は少しだけ時をさかのぼって、昨年末に行ったマンガ学部アニメーションコースの特別授業の様子をレポートします。「アニメが好き!アニメの仕事に就きたい」という人はもちろん、「将来はクリエイティブな仕事がしたい」という人も、きっと参考になると思います!
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講師には、株式会社スタジオエイトカラーズ代表の宇田英男さんと、株式会社リアルコーヒーエンタテインメント代表の篠﨑真哉さんのお二人にお越しいただきました。
宇田さんが代表を務められているスタジオエイトカラーズは、高知県初のアニメーション制作会社です。TVアニメ「ねこに転生したおじさん」などの作品のほか、賞金総額や規模の大きさで話題になった「高知アニメクリエイターアワード」の企画も担当されています。(ちなみに2024年のグランプリは、本学アニメーションコース卒業制作作品『REDMAN』が受賞しました!)宇田さんは、こうした次世代クリエイターを育てる環境づくりにも取り組まれています。
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篠﨑さんが代表を務めるリアルコーヒーエンタテインメントの業務内容は幅広く、映像コンテンツの企画・プロデュースや製作、コンテンツ関連の宣伝業務、音楽制作および管理業務と多岐にわたります。篠﨑さんは20年以上エンターテインメント業界で活躍されており、映画「ルックバック」のプロデューサーも務められました。
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テーマは「アニメ業界への支度」。
普段はなかなか見えづらい、裏側のお話が聞けそうです。
◆アニメーションにおける「制作」と「製作」の違い
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さて、今回の授業でよく出てきたのが「制作」と「製作」という言葉。
みなさんはこの違いをご存じでしょうか。
学生たちの多くが将来像として最初の段階でイメージするのは、アニメーターや監督、脚本、背景美術、制作進行など、アニメを創造するパートです。こちらは宇田さんの会社が行っている「制作」側の仕事。
対して篠﨑さんが行っている「製作」の仕事は、作品をつくるための資金集めから商品展開など、アニメーションのビジネスを行うパート。たとえば作品を国内で配信する、海外に売る、グッズをつくるなどは製作の仕事です。
つくり手を支える仕事をしている宇田さんと、企画を形にして、届ける仕事をしている篠﨑さん。ひとことで「アニメーションの仕事」といっても、いろんな関わり方や働き方があるんですね。
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◆アニメ1話にかかる費用から、規模の大きさが見えてきた
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「テレビアニメ1話分にかかる費用はいくらくらいだと思いますか?」
授業の冒頭に篠﨑さんから投げられた質問です。
学生の回答は「200万円」。わたしも同じくらいの感覚でした。
正解は作品内容やフォーマット、つくり方によりますが、1話あたり1500万から 5000万以上、場合によっては1億円なんてことも。
一軒家が建てられる、高級車が買える、世界一周ができる金額…。
予想以上の規模に教室もどよめいてました。
つまり、それだけ多くの人びとが関わって、ひとつの作品がつくられているということ。当然、立場の違いから意見の対立もあります。
たとえば「製作」側の成功はプロジェクトの黒字化で、「制作」側の成功は作品クオリティの高さだとしたら…。製作側の「限られた予算で期日までに仕上げ、より多くの人に確実に届けたい」という思いと、制作側の「じっくり時間をかけていいものをつくりたい」という思いがぶつかってしまうことも多いそうです。
お二人をはじめ、セイカで教えている先生たちも、アニメーション業界の人はみんな言語化がすごくうまいんです。きっとことばで互いの考えを共有して、すり合わせることが必須だからですね。(きっとセイカの学生たちも、チームでの制作をするなかで磨かれていくことでしょう!)
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◆アニメの未来とAI
質疑応答では学生から「AIは今後、どう活用されていくと思いますか?」という質問が。日々進化していく生成AIのニュースは、学生たちにとっても大きな関心事です。
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この質問に対して、「ちょうど最後にこの話をしようと思っていました」と篠﨑さん。「リアルコーヒーエンタテインメントではいま、映像や音声、音楽すべてをAI生成で作る映画『ジェネレイドスコープ』を制作中です。かなり葛藤があったけれど、踏み切りました。AI作品ではまだ観て良かったとか、泣けたとか、人の心を動かすものはできていない。なので、あえて挑戦しようと思ったんです。アニメーションのクリエイティブにおいても、否定はできないけど肯定もできない、というのが現状です。だけど、みんなはもう使ってみて、ちゃんと仕組みを理解しておいた方がいい。そうしないと世界と戦えなくなる」
AIはあくまでも道具。わからないから遠ざけるのではなくて、わかったうえで自分がどう活用していくかが重要なんですね。
なんとなく不安だったり不快に思ったりしていた学生も、ヒントをもらって少しほっとしたんじゃないでしょうか。
続けて、アニメーションコースの米澤彩織先生はこう補足します。
「とはいえ、みんなはせっかくこのアニメーションコースで学んでいるのだから、まずは一枚一枚しっかり描こう。その絵が動きに変わり、命が宿る瞬間を実感してほしいです」
宇田さん、篠﨑さんともに、大きく頷かれていました。
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みんな真剣で授業の熱気がすごくて、終わったらちょっと汗をかいていました。その場にいる全員の「アニメーションへの愛」を感じた90分でした。
宇田さん、篠﨑さん、本当にありがとうございました!
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おわり