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折々の絵はがき(64)

◆絵はがき〈鯉のぼり〉国吉康雄◆
福武コレクション

絵はがき〈鯉のぼり〉国吉康雄

 画面いっぱいに描かれた大きな鯉のぼり。その姿はどこか子どもが描くおおらかな絵のようで、一目見ると忘れられない迫力をたたえています。ぎょろりと大きな目は何かをひたと見つめ、立派な身体は途中で折れ曲がり…おや? よく見ると口から真っ赤な何かが出てる? 急に不穏さを感じ、画題に《鯉のぼり》となければ生きた魚に見えたかもしれないと思いました。
 よく見ると、女性が両腕を上げて鯉のぼりを支えています。ふと中心から目を離すと、玉乗りや空中ブランコ、右下にはピエロ風情の人物も描かれています。右上には「JULY4」の看板文字。7月4日のアメリカ独立記念日に行われたサーカスの会場のようにも見えます。しかし独立記念日と鯉のぼり、一見そぐわない二つはどうつながるのでしょう?
 国吉は、少年の頃に単身でアメリカへ渡り、日米の戦争ではアメリカを支持したそうです。独立宣言にある「すべての人は平等であり、生命、自由、幸福を追求する権利がある」とする社会で生きた国吉。戦後まもない時期に制作された本作に、親が子の成長を願う祖国の風習と独立宣言を重ね、彼は日米だけでなく世界中の幸福を願ったのではないでしょうか。

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