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折々の絵はがき(25)

『幼年の友』より 大正時代 生田誠コレクション

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◆暑中見舞いはがき 『幼年の友』より ◆

 毎日暑い日が続いています。お変わりございませんか?

 普段はLINEやメール、電話などでつながっている人へこんな風に暑中お見舞いのはがきをしたためるのは少し気恥ずかしいような気がするかもしれません。「連絡をとろうと思えば、いつでもとれるしなあ…」。あまり必要性を感じないという声にうなずきかけて、いやいやいや。もし家のポストを開けて大切な人からはがきが届いていたらと想像すると、どんなにうれしいだろうと思うのです。懐かしい文字を見て、まずはどうしたんだろう? と驚くでしょう。絵を眺めれば「うわあ」と息をのむかもしれない。さらに文面を読んでそれが季節のご挨拶だったら「なんて素敵なことをするんだろう」「ああ、先を越されてしまった!」と少し悔しい気持ちにもなりそうです。それと同時になんとなく「大人になったんだな、わたしたち」とも思う気がするのです。

 忙しない日々のなか、誰かを思ってはがきを選び、言葉を綴る。やってみると、ただそれだけのことで代わり映えしない日常が彩られていくようです。不思議なもので絵はがきを前にすると、スマホを手にしたときとは違う、思いがけない言葉がペン先からこぼれ落ちていきます。

 大きな亀に乗せてもらった得意そうな二人の様子に心がほどけます。これは1909~1926年の間に出版された子ども向け月刊雑誌『幼年の友』の付録であった一枚です。ポストに投函したあとは「ふふふ、どんな顔するかなあ?」と考えるのがまた楽しい。絵はがきも手紙ももらうともちろんうれしいですが、送る方はそれ以上に豊かな気持ちを味わえるのかもしれません。

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