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折々の絵はがき(9)
〈兎二羽〉小原祥邨 東京国立近代美術館蔵
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夜の丘にうさぎが二羽。兄弟、それとも友達でしょうか。帰る時間を忘れるほど遊びほうけていたのか、空にはもう大きな満月がぽっかりと浮かんでいます。月明かりの下、二羽がぴったりとからだを寄せ合う様子は、愛らしいだけでなく、どこか神秘的な雰囲気が漂います。こんな風にやわらかな毛並みに頬ずりできたらどんなにうれしいでしょう。そうっと手をのばして撫でてみたい気持ちに駆られますが、なにかに気を取られている前の子と違い、うしろにいる子はじっとこちらを警戒しているようで、そろりと手を出すや、すぐさま逃げ出しそうな気配が漂っています。前にいる子のほほ笑んでいるように見える口元と、なにかに誘われるように一歩を踏み出そうとする様子に思わず視線を追いますが、見ているものはわかりません。
小原古邨は明治から昭和にかけて活躍した日本画家であり、花鳥画の絵師です。古邨、祥邨、豊邨と号を分け、鳥や動物、花や虫など身近な生き物を木版画で表現しました。彼が版下絵を手掛けた作品は多くが輸出されており、海外ではコレクターも多いそうです。
月にいるといわれるうさぎが月に照らされる様子に、生き物に温かいまなざしを向けた古邨のユーモアを感じます。前足を浮かせたうさぎはぴょんと跳ねてひょいと月へ行ってしまいそうにも見えて、いつまでも眺める楽しみは尽きません。美しい夜空をまとい、のびやかに咲く萩の花は風に揺れて、わたしたちに秋の訪れを教えてくれます。
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