折々の絵はがき(65)
◆絵はがき〈対柳居画譜 向日葵に飛蝗〉柴田是真◆
明治時代 19世紀 東京国立博物館蔵
どこかからセミの声が聞こえてきます。遠くに目をやるとゆらゆらと陽炎が揺れ、その間も全身は熱波に包まれているよう。太陽は容赦なく照り付け、服の中を汗が幾筋も流れ落ちていきます。シャツは背中に貼りつき、目は暑さから逃れられる場所を探すのを止められません。1枚の絵はがきからはそんな真夏のひとときが思い浮かび、「ああ、また夏が来るな」と覚悟
するような気持ちになりました。
画面をはみ出して描かれた大きなヒマワリ。その姿はエネルギーに満ちていて、全身で太陽を味わっているのが伝わってきます。おや、花びらに1匹のバッタが。なんでまたこんな不安定なところにと思いますが、手足を使い器用に掴まる様子は、いきいきと輝くヒマワリのそばへ少しでも近づきたかったようにも見え、彼らが言葉を交わす物語を思い浮かべました。
柴田是真は幕末から明治初期において、漆芸家や画家として第一線で活躍しました。まばゆい日差しの下、彼はどれほどの時間をかけて花を見続けたのでしょう。ヒマワリとバッタ。たったそれだけで真夏の光景を大胆に切り取って見せた彼の感性にもっと触れたくなりました。
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