折々の絵はがき(57)
◆〈竹〉福田平八郎◆
昭和16年頃 京都国立近代美術館蔵
どこかの竹林でしょうか。竹は競い合うように空へとその背を伸ばしています。姿は凛々しく、しっかりと広く張った根が思い浮かびました。描かれた7つの竹は色や太さもそれぞれ微妙に違います。ひんやりと冷たく固い肌に浮かび上がる模様。つるりとしていたりざらざらだったり、そっと触れるときっと手触りも違うのでしょう。
京都には随所に竹林があり、中にはうっそうと生い茂る竹藪も多くあります。そっと足を踏み入れるとそこには思いのほか冷たい空気が漂っています。背の高い竹に茂る笹の葉がお日様を遮るからでしょう。しんと静まり返った場所には、頭の上からさらさらと葉が揺れる音が降ってくるのです。福田も繰り返しその音を聞いたに違いありません。
福田は制作の中で何よりも写生を大切にしました。対象をじっくりと眺め、見極めることに集中し、だからこそ同じ草花を毎年繰り返し描いたといいます。その眺め方はというと、斜め上からだったり、真横からクローズアップしたりと様々で、どの作品にも彼独特の視点が見て取れます。竹はとりわけ福田が好んだ画題でした。彼は戦時中、依頼の少なくなったのを幸いに、京都周辺の竹藪をすべて歩き回り、飽きることなく写生に没頭したそうです。一つの画題を繰り返し描き、深化させることを生涯に渡り続けました。
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