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第5回読書会 マリオ・バルガス=リョサ『楽園への道』開催報告

2024年9月7日にマリオ・バルガス=リョサ『楽園への道』読書会を開催しましたので報告いたします。zoomにて開催し参加者は2名でした。

芸術の革新を志し、フランスからタヒチへ赴くポール・ゴーギャンと、ユートピアを目指して労働者の連帯を解くその祖母フローラ・トリスタンとの生涯が、交互に描かれる小説でした。

参加者からは以下のような感想が出ました。

・改行が少なくみっちりと文章が詰まっているが、フローラとポールの物語が入れ替わりつつ語られる構成。章ごとの長さが短く、入れ替わる頻度が高いため、連絡短編のように読めた。
・心地よい緊張感が通して続く小説だった。劇的に盛り上がるわけではないけど、全体を通して面白かった。
・ポールよりフローラの方が人物として好きだけど、小説として面白かったのは
ポールのパート。作者?と思われる語り手から主人公たちへの呼びかけは、ユーモラスで笑っちゃう部分もあった。二人ともキリスト教には敵対しているのは共通だが、セックスについての考え方は対照的。ポールのパートはセックスの話だけだと嫌気がさしたかもしれないが、芸術の話もあったから入り込めた。
・フローラとポール両方の同性愛、セクシャリティの揺らぎのテーマ、もっと膨らませたらもっと面白かったかも。
・2つのパートが相互浸透するのかと最初は思っていたが、基本的には交わらなかった。ただ、小説の最初と最後での楽園を探す遊びの描写で、全く違った個性を持つフローラから、ポールに、この世ならざる楽園を探す精神が受け継がれたのがわかった。
・フローラはカッコよく、ポーツはダメ人間だが、二人ともそれぞれの方法で19世紀ヨーロッパを否定した存在。「この世界は変えられる、別の世界がある」と信じられた時代が羨ましい。
フローラとポールの二人とも特異な、ぶっ飛んだ存在だけど、そうした存在にならざるを得なかった必然性を、説得力のある回想シーンで説明してくれた。時空が重層的で人物造形の厚みもある小説だった。

読書会の課題本とは別に、参加者から最近読んだ本、気になった本を紹介いただきました。小説以外の本が多かったので、読書会でも小説以外の本を取り上げてみたくなりました。

岡真理・小山哲・藤原辰史『中学生から知りたいパレスチナのこと』
アイザック・ドイッチャー『非ユダヤ的ユダヤ人』
山口昌男『本の神話学』
濱口竜介『他なる映画と 1・2』
小山田浩子『庭』

第6回の読書会は11月9日(土)19時30分から、ギュスターヴ・フローベール『感情教育』を課題にし開催します。初めてのご参加、zoomでの参加も歓迎ですので、ぜひご参加ください。お申し込みはPeatixにて受付しております。

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