第3回京都文学レジデンシ―参加者紹介⑦今宿未悠(Mew Imashuku)
7人目のご紹介は、日本の詩人今宿末悠さんです。現代美術のパフォーマンス作品にも出演されています。プロフィール紹介のあとには2編の詩「踊り子」と「焼ける」を掲載しているので、ぜひ最後までご覧ください!
Today, we present Mew Imashuku, a Japanese poet born in Tokyo, who will be participating in the residency. She also takes part inthe contemporary art performance work. We post her two poems at the end of the page. Please enjoy reading them!
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About Kyoto Writers Residency. To attend the Opening Forum on 29 September.
今宿未悠(Mew Imashuku)
(京都文学レジデンシーフェロー)
プロフィール/Bio
東京都出身の詩人。大学在学中に詩作をはじめる。2023年に第一回西脇順三郎新人賞を受賞し、第一詩集『還るためのプラクティス』を刊行。2024年には現代美術のパフォーマンス作品「a garden of prothesis」(tokas opensite 8)にも出演。身体を用いた表現に挑み、そこで得られた感覚を詩に昇華することを試みている。
Poet born in Tokyo. In 2023, she won the first Nishiwaki Junzaburo Prize for New Writers. She published her first collection of poems. In 2024, she participated in the contemporary art performance work “a garden of prothesis” (tokas opensite 8). She challenges expression using the body and attempts to sublimate the sensations obtained in this process into poetry.
今宿未悠
踊り子
からだを
舐める
ネオンの光
反射する
鈍い
ポールを
太ももに
挟んで
反り返った
私の
乳房が
闇に
埋もれる
いくつかの目
に
揺れている
ゆわん
まつげの影
瞬きを
するたびに
劇場に
充満した
陶酔を
かきまぜる
やがて音楽は止み
ネオンの光も消える
脱ぎ落とした衣装を拾い
手に抱えてそそくさ捌ける
舞台裏の階段を地下へ地下へ
踊り子の楽屋は粉っぽく霞んでいる
あけすけな蛍光灯に晒されて
鏡にうつる皮膚の凹凸
尻には肉割れの跡が何本か走っており
内腿のあざはさっきポールを挟んだ時にできたもの
血管が潰されて噴き出した赤い青が
内腿の大部分をいくつものぷつぷつで汚している
あなたのあざ、星みたい
彼女の声に3秒遅れて彼女の匂いが届いた
毛並みの良い猫のようなムスクの甘さが喉を鳴らして
ふわりとした彼女に目を向ける
肩を押されて近くのソファに腰が落ちる
埃が彼女の匂いと混ざって舞い上がる
隣に腰掛ける彼女
太ももがかすかにあたる彼女の太もも
手が伸びてきて
這うように
内腿のあざのぷつぷつを一つずつなぞって結んでいく
しずかに呼吸して
わたしは股関節を外側へ捻り
ぷつぷつをもっとあらわにする
彼女の薄ピンク色のネイルを施された爪が
蛍光灯の光をはね返しながら
太ももの肉にめりこみつつ移動するとき
ぷつぷつを追いかけるゆっくりとした光の軌跡
網膜にずっと残る
わたしたち、星座を結んでいる
青い星、指先の光でつながって星座になる
地下の霞んだ楽屋でわたしたち二人
ひそかに たしかに 呼吸を続ける
焼ける
左の、手首から先を失った男性が
脂と八角の匂いが立ちこめる路上で
オレンジ色をしたプラスチック容器を前に
アスファルトに
ずっと頭を打ちつけているその頭の数十センチ周囲
を避けて通り過ぎる人の太ももが輪郭をつくり結果的な空隙となる、揺れる、場所は湿気に満ちておりそれは粒子として皮膚をうめつくす手首から先の、やわらかい、そのやわらかさは撫でたことがない、断端、まで舐めるように、
プラスチック容器には小銭すら入らない
頭髪はべたついている
中年男性特有の
瞼は固く閉じられながら
左の腕を頭より高く掲げて
揺らす
火に濡れていく部屋を眺めながら
ふとその厭だったシーンが、数回前の夏の台湾滞在中に見たそのシーンが去来して、なぜこのタイミングで、このシーンが?と 断絶や格差やそのほかありとあらゆる無理解の象徴を
かき抱いて、焼かれてゆくことが
最後の記憶にふさわしいと
選択が起きたのかもしれない、脂と八角の匂いは記号的な記憶としてあれど実感を伴って思い出せず
現在、鼻をつくのはガソリンの撒かれた床、壁などが燃える、匂いで
少しずつ覆われていく、濡れていく、
ぬらぬらとした部屋は日常を順番に崩し、
可燃性の高いものが真っ先にその形を火にゆずりわたして、
無抵抗に、
私はその中で、どうしてもガソリンを頭から被ることができずに、
すなわちかぶせることはできてもかぶることができずに、
火は輪郭をつくり結果的な空隙……
を、私の周りにつくっており、ただきっと私もいつか呑まれる、あるいは窒息して先に意識が遠のくかもしれない、いずれにせよ待つことしかできない部屋の、
あの男性の左腕の断端の、
柔らかの、
匂い
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SNS配信について
第3回京都文学レジデンシーの詳しいイベント情報はSNSで随時更新中です。
(参加者は9月28日から10月27日の約一カ月間滞在します。)
X:@kyoto_writers(日本語)/ @kwr_eng(ENGLISH)
Instagram:@kyotowritersresidency
ホームページ:Kyoto Writers Residency - 京都文学レジデンシー
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個人様からの寄付がレジデンシーの大切な資金源となっています。ご支援をよろしくお願いいたします。寄付ページはこちらです。 <https://congrant.com/project/kyotowriterinresidence/3631>
主催:京都文学レジデンシー実行委員会
共催:立命館大学国際言語文化研究所/龍谷大学/京都芸術大学
協賛:香老舗 松栄堂/DMG森精機/京都 蔦屋書店/共立メンテナンス/ 丸善ジュンク堂書店/早稲田大学
助成:Arts Aid KYOTO(京都市)/ベルギー王国フランス語共同政府国際交 流振興庁/大阪イタリア文化会館/EU/リトアニア/国際交流基金 ASEAN文芸フェロー/ニュージーランド
後援:京都市/京都経済同友会/京都市教育委員会
共同プロデュース:MUZ ART PRODUCE/CAVA BOOKS