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未来の研究員さんへ


 京都市・北大路に実在するけったいなBar、京都洋酒研究所。前にも書いたように、まず名前がけったいや。北大路なんて辺鄙な住宅街でやってるってのも、まあけったいやね。で”名は体を表す”っていうくらいだから、中身も思う存分けったいなのよ。


 今回はうちの研究所のどこがけったいかについて、以前SNSに書いたことも一緒にまとめてみた。それがきっと、未来の研究員さんにとってええ塩梅なうちの紹介になるだろう。



 noteで初めてうちのことを知ってくださった方も、SNSやウイスキー仲間の話で興味を持って頂いた方もいるだろう。何にせよ当研究所に興味を持ってくださったことに素直に感謝している。「コロナが落ち着いたら行ってみたい」と行きたいお店リストに挙げてくださった未来の研究員さんがいたとしたら、本当に光栄なことである。


 実際に来店されたお客様のSNSを拝見すると、プロのカメラマンのようなすばらしい腕前で、当店の内装やボトルたちが実物よりずっと素敵に見えている。とてもうれしいと同時に、来店前のお客様が当研究所を過大評価してしまうのではと心配にもなる。せっかくお越し頂いても「想像と違う」とならぬよう、等身大の研究所を紹介しておきたい。


①京都の繁華街にない
 京都市北区・地下鉄北大路駅北口から西へ徒歩5分。住宅地の中のショッピングストリートといった雰囲気の、夜は比較的静かなところだ。
✖︎デメリット:四条・祇園のお食事処やバーからちょっと歩いて、という距離ではない。地下鉄かタクシーでの移動が必要なので、往復のために余計な時間と費用がかかる。
○メリット:繁華街にないためそもそもお客様が少ない。またオールドモルトウイスキーというものは飲み始めるとお尻に根が生える人が多いため、急かされずゆっくりと心ゆくまでウイスキーたちと向き合ってもらえる。さらに当研究所の面する新町通り商店街周辺は、ディープでコアなお店や地元民行きつけの美味しいお店の宝庫である。詳しくは研究所で所長に聞いてほしい。こんな京都、絶対みんな知らん。友達に自慢出来るでぇ!
②置いている酒が偏っている
 研究所に並ぶお酒は、経営・運営している所長の個人コレクションで、ほとんどが1990年〜2010年ボトリングのオールドスコッチウイスキーである。また、そのほとんどがボトラーズ、シングルカスク、カスクストレングスの1点もので、売り切れ御免となる。現行物のスコッチ、スコッチ以外のウイスキーやその他のスピリッツはないか、あっても数本以内だ。例えばバーボン、アイリッシュウイスキー、カナディアンウイスキーは全くない。そしてメジャー蒸留所よりも閉鎖蒸留所やローランドモルトが比較的多いとか、モンスター的な個性のはっきりしたものよりも中庸の美学・穏やかでしみじみ旨いものが多いとか、すべて所長が飲みたいもの、飲んでおいしいとお勧めできるもの、という所長の好み丸出し基準でのわがままチョイスである。ただいまポートエレン34種類飲み比べOKだよ!
✖︎デメリット現行物の味しか知らない人にはとっても悲しい顔をされることもしばしば。トロピカルたわわとか、モンスター級ヘビーピートとかが好きな方には心底がっかりさせてしまうこともある。バーボン好きさんが瞬殺されたことも!
○メリットオールドモルトラヴァーズさんには、入った瞬間タイムトリップできる、たまらんワンダーランドみたいです。麦々系やオールドリアルシェリーカスク好きさん、または閉鎖蒸留所やローランドモルト好きさん、もしくは所長と同じエレンフェチさんは寄っといで!
③不定休、また長期休暇もあり
 当研究所の所長が命の次に大切なのは旅行である。多い時には月に1〜2回出かけてしまう。この経験がウイスキー・テイスティングの礎になっているのだからお許しいただきたい。また、所長は昼間別に本業を持っている。その兼ね合いでお休みをいただくこともある。
✖︎デメリット:「せっかく来たのにお休みやった」と本当良く言われてしまう。まったくもってすまぬ・・・。FB、インスタ等に店休日を載せているので、来店前に確認いただければ幸いである。
○メリット:不定休は、決まった曜日に休まないためである。休みの曜日を決めると同じ曜日が休みの人は永遠に来られなくなるでしょ?全てのオールドモルトラヴァーズは当研究員になる資格を持っているのだ!
④口に入れるもの以外はかなり簡素
 お酒やおつまみ類のクオリティには自信があるが、それ以外は至って簡素である。見事なカウンターもきらびやかなシャンデリアもうっとりするアンティークやバカラのグラスもここにはない。
⑤スマートなイケメンマスターも気の利く美人スタッフも皆無
 当店は基本所長(カジュアルな服装にエプロンのおばはん)一人で運営している。スマートでおしゃれなサービスは無理だが、同じモルトラヴァーズとしてお客様が雑念なくお酒と向きあえる環境を提供できるよう心がけている。どうぞラフな服装(ジャージ、サンダルOK)でアットホームにくつろいで、気兼ねなくモルトとの濃密な時間を過ごしてほしい。
✖︎デメリット:バーというものはそういうものを全て含めて総合的に評価されるものである、という考えは私もとても良く判る。そのために高いお金を払いたい、払っても惜しくないという方ももちろん大勢いるだろう。だがそういう方々を充分満足させられる、とても素敵なすばらしいバーが京都にはすでにわんさとある。とてもうちなんかが同じ土俵で太刀打ちできない。中途半端なことをするくらいなら、オンリーワンでありたい。
○メリット:お客様に実質的に還元できるのはお酒とおつまみだけである。それ以外にお金をかけなくてもいいのではないか。むしろ本質以外の装飾品を取っ払った方が、裸の王様を見つめる子供のように本質をしっかり見抜けるのではないか。そういうお店が一つぐらいあってもいいじゃないか。そういうお店を経営しても許される年齢じゃないか。その分のお金でより良いウイスキーをできるだけ安く提供したい。全てはこの一心のみ。


ウイスキーボトルとグラス


 全てはオールドモルトラヴァーズのために。オールドモルトラヴァーズのちいさなサンクチュアりとなれるべく、大好きなオールドモルトウイスキーたちとゆっくり・まったり運営を続けている(現在コロナのため無期限休業中)。温かく見守って頂ければとてもうれしい。

よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは京都市北大路に実在するバー「京都洋酒研究所」存続のために使わせていただきます。