日本語の聴解授業と知里幸恵さん
日本語上級クラスの聴解授業で、私は初めて知里幸恵(ちり ゆきえ)さんと出会った。
彼女は1903年、北海道でアイヌ人の父母を持って誕生。身の周りのもの全てに神が宿るアイヌの信仰の中で、神への気持ちを歌った「ユーカラ」という歌(詩)を聞きながら育った。
政府の政策によりアイヌ民族への差別がある中で、15才で言語学者・金田一京助氏と出会う。アイヌの文化のすばらしさや「ユーカラ」が世界に誇る文学であることを、金田一氏に言われ、「ユーカラ」を文字に書き残すことを決心。(アイヌ語は文字を持たないから、ローマ字→日本語訳という流れ)
東京の金田一氏の自宅で、およそ4カ月間、自分が知っている物を全て書き残した。しかし、完成したその夜、彼女は心臓発作のため、19才で急逝。その翌年、『アイヌ神謡集』は出版され、アイヌの文化を後世に伝えることになった。
たった19年の命!
私は、思わず絶句してしまった。でも、どれだけ充実した人生だったことだろう。アイヌの人々や、文化を守る足がかりを築きあげたからだ。
幸恵さんは、まさにアイヌのことを未来に伝えるべく、生まれてきたのだ。そして「太く・短く・奥深く」そよ風のようにさっと通り過ぎてしまった。
なんて潔ぎよく、使命感に燃えた人生だったんだろう。
私には、知里幸恵さんがまぶしく、輝いているように見えてならない。
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