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考・「貧しい口元」
今回、旭日小綬章を受賞した小説家・宮本輝氏の随筆集『命の器』に「貧しい口元」という短い文章がある。
「・・・顔立ちの美醜とは全く無関係に、口元に、その人の本性が出る。目が心の窓だとすれば、口は心の玄関である。・・・人間としての賢さをたずさえている人は、みな口元が毅然としている。」と述べ、「外形に肥料を与えることばかり考えて、精神にその何倍ものこやしが必要であるのを知らない」人たちが今、17,8歳から24,5歳の年齢にさしかかっているのかもしれない・・・と氏は述べている。
思わずはっとした。翻って自分はどうか。鏡を見て自分の顔をしかと観察してみた。口元が毅然としているとは言い難い。何かが違う。欠けている。日頃から、外形にそれほど肥料を与えているわけではないが、やはり精神という土壌に、豊富な栄養分がまだまだ足りないのだろう。
「目は口ほどに物を言う」という言葉がある。自分なりに”目”には留意してきたつもりだが、口元には全く気が付かなかった。というか考えが至らなかった。どんなに表面をきれいにしていても、口元からは隠しようもなく、自分の生きざま全てが表れ出ているのである。
今回、この文章を読んで改めて知った。
自分なりに少しでも豊富な栄養分が摂取できるように、心がみずみずしく、深みが生まれるように、日々努めなければならないのだ。少しでも毅然とした口元になるためにも。
引用 『命の器』宮本輝(講談社文庫)より「貧しい口元」から一部抜粋
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