陸前高田のテロワール「4つのKeyword」
陸前高田は果樹産地として全国的にも稀有な海側のリンゴ産地。
全国100個あるリンゴ産地のうち、海の側の産地は10個ほど。
さらに畑から海が見えるリンゴ産地は、ほぼ無い。
ワイン産地として日本で有名なのはほとんどが盆地であり内陸。
山梨、長野、北海道、山形…。
様々な要素がうまく絡み合って成ってきた陸前高田の果樹産地。
全国的にも珍しい”海のテロワール”を生かしたワインづくりが可能。
Keyword 1
海も山もある
「海洋性気候」ゆえ、夏涼しく、冬は温暖。秋が長い。
人間も非常に過ごしやすく、果実はゆっくり熟すことができる。
そのため、陸前高田のリンゴは”ふじ”がしっかり熟すまで樹上に成らすことが可能。
陸前高田は岩手県の中でも最南東に位置し、県の中では温暖な地域。冬は雪がほぼ降らない。雪が降ったとしても数センチで、翌日には溶ける。そのため雪に慣れていない地元の人は意外と多い。雪深な東北のイメージとは真逆。
広田半島はまた特殊な気候で、市街地が雨のときは広田は晴れていたり、その逆パターンもある。広田半島側の広田町、小友町、米崎町、高田町は似たようなテロワールで、果樹が主に栽培されているのもこのエリア。気仙町や長部町のほうだと西日が当たらない。内陸側の竹駒町、横田町、矢作町だと沿岸部とはまるで環境が違う。やはり朝霜が確定で降りるのと、気候や日照確保の問題が果樹文化が無い主な理由だろう。
そしてただ海と山があることに留まらない。海と山の双方への距離が大変近く、「氷上山」という海からすぐ874メートルになる山は日本でもそう多くはない。
海の食材、山の食材それぞれに合わせやすく、そのカバー範囲は非常に広い。
Keyword 2
3つの太陽
三陸では稀有な「南斜面」、入り組んだ湾による穏やかな「海面からの光反射」、氷上花崗岩による「輻射熱」。総日照量としては豊富なのが陸前高田。(上写真は広田湾から照り返す西日)
そして「北限のゆず」の産地。ゆずが育つ産地化されている場所として日本最北。
さらに広田半島では産地化されていないがミカンも穫れる。広田半島に行くと南の地域の農産物であるミカンを植えている家庭もある。
リンゴというのは基本的に冷涼産地の農産物。陸前高田のリンゴ産地は全国でもトップクラスの130年の歴史がある。
三陸でそうした果樹が産地化されているテロワールは唯一無二。
隣り合う大船渡市や気仙沼市(鹿折唐桑には一応ある)、住田町には果樹の文化は無い。
釜石以北になってくると冷涼すぎであり、そもそも基本的に三陸のリアス式海岸は「東向き斜面」ゆえに、西日が当たりずらいので果樹栽培は基本的に向いていない。
Keyword 3
水はけのいい土と斜面
陸前高田を成す「氷上花崗岩」の土壌。
そして花崗岩の中でも非常に古い花崗岩で、風化している。三陸ジオパークはジオパークとして日本最大で、隣合う陸前高田市、気仙沼市、大船渡市、住田市だけでも地質が全く異なり、岩手全体の地質マップで見るとかなり入り組んでいて全国地質地図では浮いた色合いをしている。そもそもオーストラリアのゴンドワナ大陸から日本に合流した岩手なので、日本では稀有な非常に面白い地質を成している。
陸前高田市は基本的に石がゴロゴロの畑が多いが、沿岸部の潮風が当たる辺りは花崗岩が風化し脆く砂質(大粒)になる。排水性と保水性が良い果樹栽培に向いた地質となる。
表土を1メートルほど削ると風化した砂質(大粒)の花崗岩土壌が出現する。
Keyword 4
強い潮風と山から吹き下ろす風
海から山に吹き上がる潮風と、海と隣り合っている874メートルの氷上山からの吹き下ろす風が関係し合い、薬剤の使用を最小限にすることが可能。強い風は空気の循環を良くし、低コストハイクオリティーワインの製造が可能。
さらに病気に強いとされる白品種「アルバリーニョ」を用いれば、海産物とのペアリング、事業の持続可能性、参入のし易さ、商品化の幅広さ、環境への配慮が◎。アルバリーニョはスペインのリアス式海岸が原産地の品種で「海のワイン」と称されストーリー性もテロワール性もバッチリ合う。
ワイン銘醸地のフランス・ボルドーでも昨年認可品種になり、将来性もある品種。
サスティナブル思考のワインが売れていくムーヴは今後も続いていくと考えられる。
まとめ
陸前高田のテロワールを成すキーワードとしては、
①南向き斜面
②古い花崗岩土壌(大粒の砂質)
③輻射熱
④穏やかな海水面からの反射光
⑤よく当たる西陽
⑥海抜0mから氷上山の874mの標高による吹きおろし
⑦海から吹き抜ける強い潮風
が挙げられる。
非常に特異なテロワール。
陸前高田においては100年の歴史がある「神田葡萄園」がある。
ワイナリーとしてそんな歴史があるワイナリーは日本では指折り。
私のドメーヌ・ミカヅキ、そしてワタミオーガニックランドのワイナリーと同市に3つワイナリーがすでにあり、着実に増えてきており、今後も増えていくだろう。
やる気も資金も大事だけれど、ワインはテロワールが物語るものなので、大丈夫。
新たなワイナリー参入は非常にウェルカム。
ぜひご一緒に陸前高田でワイナリーをしましょう!
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