記野式:サクッと!ゲーム業界講座 9月前半号
こんにちは。オリンピックもパラリンピックも終わり、8月末の猛暑から一転9月になると過ごしやすい日々が続いていますが、何しろ青空が見えないのが残念。猛暑が復活する可能性もある9月ですので体調を崩さないようにしたいですね。
さて、今回もいろいろな角度から記事を書いてみようと思います。恒例のイギリス週間ランキングは「クラウドゲーム」の話の後にしました。今回の為替レートは1ドル=110円で計算しています。
<記野式まえがき:ゲームを禁止する国と解禁する国>
8月前半号で書き下ろした中国政府の規制ですが、これによって世界のIT、ゲーム会社はかなり右往左往しています。さらにアップデートがあったので報告しますね。
1.中国でゲームプレイ制限令が発出される
8月上旬に中国国営通信社の新華社通信系の新聞が、ゲームは「Spiritual opium (精神的アヘン)」だ!として、ゲーム業界が10代の子供たちに有害であると批判されてから、政府が何らかのメスを入れてくるだろうと言われていたのですが…。出ました。
2019年から、未成年者のゲームプレイ時間は原則月曜日~木曜日は90分、週末は3時間に制限されていました。つまり未成年者のゲームプレイ可能時間は週に15時間にすでに制限されていたのです。
しかしながらこれでは不十分との判断。「中国当局はオンラインゲームの規制強化を行う。具体的には18歳未満の子どもにオンラインゲームを提供できるのは週末(金、土、日曜)と祝日の20~21時の1時間のみ」と8月末に新華社通信が伝えました。これにより、未成年(18歳未満)の若者たちは週3時間までしかオンラインゲームを遊べないことになりました。
ちなみにロイターによると、このオンラインゲーム規制は中国のeSports選手に大打撃を与えているとのこと。週3時間ではプロとしての練習時間が足りないでしょうから今後国際大会においての中国人選手のプレゼンスも危ぶまれるでしょうね。
中国の2020年のeSports市場規模は約2兆5,300億円だったとロイターは伝えています。またファン人口は4億人を超えています。
この規制にはゲームメーカーに対してユーザー実名のデータ保存を義務化、監視体制を強化することが含まれています。つまり、ユーザーとしての未成年を処罰するものではなく、提供するメーカー側への規制なのです。
この報道を受け、中国最大手のゲームメーカーTencentやNeteaseなどの株価が下落しました。これに対応するためNeteaseは同社の未成年者による売上は総売上の「1%未満である」と、またTencentは「3%未満である」と株式市場に対する説明に躍起になっています。
8月前半号でも語りましたが、中国政府は7月に営利目的の教育機関の設立を禁止する規制を発表しています。つまり、学習塾の禁止です。これと併せて小中学生の宿題を減らして学校外での教育の負担も減らすという政策も発表しました。
受験戦争を抑えて、子どもの「勉強漬け」を回避するとのこと。勉強からの逃避としてゲームに夢中になる子どもに対しての「ゲーム漬け」を防ぐとのことらしいです。中国当局は「勉強漬け」、「ゲーム漬け」になる代わりに文化や芸術活動やスポーツ、ボランティアを奨励します、とのこと。
あくまでも未成年向けの施策ですから目くじらを立てる必要もないかと思いますが、インパクトは大きいですね。「ゲーム漬け」はともかく子供が勉強しないと国力弱まりますよ?
2.韓国では真逆の動き!シンデレラは夜中でもプレイOK!
2011年から韓国で施行されてきた「青少年夜間ゲームシャットダウン制度」。今回の中国の施策に近いのですが、ゲームメーカーは16歳未満のユーザーに対して0時~6時の深夜帯にゲームサービスを提供してはいけない、という法律。もちろん若者の「ゲーム依存症」をなどを是正する動きでした。0時からゲームプレイできなくなることから「シンデレラ法♪」と呼ばれていたそうです。笑。
ところが10年後の2021年8月25日、韓国当局は「シンデレラ法」を年内に廃止すると発表したのです。この法律は『Minecraft(マインクラフト)』すら成人指定になるほど影響があったため、ユーザーからは廃止を希望する声が上がっていました。
国として「ゲーム依存症」へのアプローチは継続して続けていくが、このような入り口からの一律の規制はやめるってことらしいです。
ちなみに『Minecraft(マインクラフト)』成人指定に対して政府向けに今年7月提出されたシンデレラ法廃止嘆願は、1か月で12万を超える数の署名を集めていたとのことです。
韓国ではXbox LiveやPlayStation Networkなどももちろん年齢制限を設ける設定になっていましたので韓国向けにサービスするのはちょっと面倒でした。あらゆるゲームメーカーにとってもユーザーにとっても大きな緩和となることは確実です。
ということで中国とは真逆の動き。笑。強い規制をかけたと聞くと、つい「北風と太陽」のお話を思い出すんですけど気のせいでしょうかね。
<クラウドゲームサービスはどうなってるのかな?>
1.クラウドゲームってなんだ?
クラウドゲームってなんだっけ?ってところからの人も、言葉に負けずに読んでみてください。クラウド、つまりサーバ上でゲームプレイをすることです。自分が持っているハードウェアに依存せず、コントロールだけ手元で行うゲーミングスタイルです。
クラウドゲームではゲーム専用機はいりません。必要なのはインターネット接続とディスプレイ(テレビでもスマホでもPCのディスプレイでも)と入力をするコントローラ。だから!論理的には「いつでもどこでもゲームがプレイできる」のです。
ゲーム版Netflix、Amazon Primeのようなものと言ったらいいでしょうか。ただし、それらのとの違いはインタラクティブ性(プレイヤーの入力をサーバ上で演算して結果を返してくれる)でしょう。あ、余計わかんなくなっちゃった人…ゴメンなさい。
~ Softbank News より ~
上記で書いたように「論理的には」です。ダウンロードしたゲームは手元で動くのでタイムラグはないでしょ?でも、クラウドの場合はイチイチ通信を伴うので、現在のインフラ(特に欧米諸国)では処理が遅れます。ゲームによってはこのタイムラグがゲームプレイを致命的に破壊することもあります。
だからこその5G待ちなのです。もちろん5Gが出回ればもっともっと早くなると考えられますから時間の問題ではありますが、やはりゲームジャンルや映像の重さによっては描画速度やインプットに対する反応も気になります。これらのストレスを技術的に取り除いていくのも今後のゲームメーカーやその関連企業のお仕事なんでしょうね。
きっと「クラウド」なんていう専門用語を意識せずに、ユーザーが遊ぼうと思ったときに勝手につながってストレスなくサクサクとゲームが遊べる時代になれば、「クラウドゲーム」なんて呼ばれずただの「ゲーム」になり、それこそが「クラウドゲーム」の成功なんだろうなぁと思います。
さて、長い前置きはおいといて…Newzooが世界のクラウドゲーム市場について報告してくれたので紹介しますね。
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