記野式:サクッと!ゲーム業界講座 1月後半号
正月気分も抜けて、2022年も1か月が過ぎようとしています。が、アメリカ時間1月18日にものすごいニュースが入ってきました。ええ、ご存じの通りMicrosoftがActivision Blizzardを買収!というニュース。
その金額もすごいけど…Tencentなど一部の中国のジャイアントたちを除けば Activision Blizzardは間違いなく世界一のゲーム会社。それをそっくりMicrosoftがパックリ。このニュースを見て朝から腰を抜かしていました。あ、これは後ほどゆっくり書きますね。
ま、書こうと思ってたことがすべて吹っ飛ぶくらいのニュースだったってことです。が、正常運転も大事。笑。まずはアメリカ市場データNPDの12月分と2021年度のソフトウェアランキングをレポートします。また、PSNでの12月度ソフトランキングと、モバイルゲームの12月度ランキングもお届けしますよ。本来はこっちのほうが目玉記事だったんですが…汗。
まえがきでは2020年正月にラスベガスで行われたCES 2020のお話を。 Activision Blizzardのお話はアメリカ市場データNPDレポートのあとまでお待ちください!
今回の為替レートは1ドル=114円で計算しています。1ユーロ=129円で計算しています。
<記野式まえがき:CES 2022はイベントとしてどうだったのか?>
毎年正月のしょっぱなから行われるCESですがご存じでしょうか?
1.CESってなんだ?
本編でもよく紹介するCES(シーイーエス、またはセス)ですが、もともとはConsumer Electronics Show(家電ショー)の略語でした。しかしながら、家電というにはあまりに大きなテクノロジー関連の発表の場であるため、あるときから主催者CTA(Consumer Technology Association)から家電ショーって言うな!ってお達しがあって、それ以来略字ではなく正式名称CESってなったようでございます。
毎年1月にネバダ州ラスベガスで行われ、新年早々世界中の最新テクノロジーが発表され話題になる展示会/見本市でございます。見本市なので一般ピープルは参加できません。
私も3回ほど参加したことがありますが、世界中からどうやってこんなに人が集まるんだろう?とビックリしたのを思い出します。空港からタクシーに乗るにも500人くらい待っていて数時間空港前で並んだのを覚えています。会食に行くにも数か月前から予約が入っていて「予約なし」だと会場近辺の高級レストランはまったく入れない状況でした。
2.CESでは世界のテクノロジーが発表されるのだ!
ソニーがPlayStation 5向けのPlayStation VR(PSVR)2を発表したのもこの場でしたが、今年一番のソニーの発表はEV(電気自動車)参入じゃないでしょうか?
このほか前号でも触れましたが、Panasonic や Samsung、Hyundaiなどの大手メーカーがメタバースに参入!などと言われ、今年のCESはとくに「メタバース」が注目されていました(後述:本家のMeta(旧Facebook)が参加していませんがね笑)。
ま、メタバースの話は前号のあとがきで辛口コメントしたので読み忘れた方はご覧ください。笑。今回はこの話がしたいわけではないので割愛。
3.CES 2022はしょっぱかった?
そんな盛り上がったと思われたCES 2022ですが… ご多分に漏れず新型コロナ感染拡大、とくにオミクロン爆発の影響を受けており、会期中の参加者数が45,000人、出展者数は2,300社との発表でした。これは、2020年1月に開催された前回のCES2020(2021はオンラインイベントでした)の参加者171,000人、出展者4,400社から大きく数字を減らしています。
主催者であるCTAは11月の時点でショーの規模を通常の半分程度になると予想していました。海外からの参加もコロナ渦では難しいですしね。しかしながら、オミクロンの影響で大手のドタキャンが増えてさらに規模が小さくなってしまったとのこと。
それなのにこれだけの出展社を集めたのはえらいなと思っていたら、実は「ドタキャンしてもブース代をCTAが返金してくれない」ことにより中小の出展社は出展するしかなかったとのこと。大手さんは出展することの方が費用返金されないよりもリスクが大きいと言えますけど、中小企業はそうはいきませんからね。
CES 2022はかなり前から準備されていました。夏の段階では、すべての参加者に事前のワクチン接種と会場内でのマスク着用を義務付けるとしていました。また、会場の通路を広くしたり会議質室の座席をあけてソーシャルディスタンスを取り、展示物のいくつかを屋外に設置すると決めていました。海外からのビジターにはその場でPCRテストを無料で行う準備も進めていました。
しかし、2021年12月31日大晦日、つまり開催5日前(直前だわー)にCTAは、ショーを1日短縮することを発表しました。新型コロナ感染のリスクを下げ出展社の人員配置の問題に対処するためのギリギリの決断でした。
CTAはこれをウィズコロナとして「開催」を成功と考えているようです。確かに人が少ないから行列がそれほど長くなくて、ほとんと待たずにブースやイベントに参加できたようです。また、大手が不在のことから小規模企業にも輝けるチャンスがありました。
CTAは最後まで難しい決断をしたのでしょう。しかし「CTAが人々の健康よりもお金を選んだ」と言う人たちの意見もあります。11月にニューヨークで行われてクラスターとなったAnime NYCもそうですが、「安全」をうたっていながらも実は感染症をシャットアウトすることなどできないのですから。
不参加を決めた人や、ドタキャンした出展社、ドタキャンしたかった出展社の方々は、自分自身、そして家族や友人を危険にさらしたくなかったのでしょう。
4.大規模な業界向け展示会って今後どうなるんでしょ?
CESは新しいテクノロジーを世界的に発表する場として必要不可欠な存在ですが、、、今後もこれは続くのでしょうか?
クルマの見本市であるMotor Showも2021年は軒並み中止になっています。東京モーターショー、ニューヨーク・モーターショー、ジュネーブ・モーターショーなどなど。
もちろん新型コロナ感染拡大の影響が一番ですが、ゲーム業界もそうであるように実はリアルの展示会ってお金かかり過ぎじゃね?って議論が新型コロナ感染拡大の前からあったのです。
もちろんショーの主催者側から出ている声ではありません。これは出展社からの声なのです。たくさんのお金を使って、わざわざ混みあった会場に大勢で出かけてこれらのショーをやるよりも、小規模な自社イベントやインターネットでの発表が業界の人に限らず世界中の人々にフェアにリアルタイムで発表ができるじゃないですか!しかもコストパフォーマンスがいい!
一気にはいかなくてそういう流れになる!って2018年くらいから言われていたのに…新型コロナウイルス感染拡大がさらにプッシュしたと言えますね。
5.ゲーム業界はどう?
そこで、ゲーム業界はどうでしょうか?2月にやはりラスベガスで開催されるDICEサミット、サンフランシスコで3月に開催されるGame Developers' Conference(GDC)などのイベントへの参加が賢明かどうかが大きな話題となっています。
6月に開催されるElectronic Entertainment Expo(E3)はすでに主催者のEntertainment Software Association(ESA)がオンラインのみで開催すると発表しています。
ゲーム業界では、任天堂が2011年からスタートさせたデジタル配信発表会「Nintendo Direct(ニンテンドーダイレクト)」の形が現在のゲーム業界では標準となっていて大手他社もそれに追随しています。
ソニーは2019年からE3には参加しないことを選択して「State of Play」という独自の配信プレゼンテーションを確立していますよね。もちろん、リアルな発表とオンラインでの発表の違いはありますが、発表内容や情報量という点ではすべてデジタルで伝えることができるのです。しかも人数を限ることなく全世界に同時に。
新型コロナ感染拡大前には、E3は値段が高すぎるとの声が聞かれていました。物理的なROMでしかゲームが実機で動かなかったころは、E3は意味がありました。なぜならそこに行かないとこれから発売されるゲームは遊べなかったからです。私の記憶ではE3に出展する場合、一番手前の大きなブースは2.5日間で15億円以上(ざっくりやなぁ)でした。
これに従業員をたくさん送るための出張費、この話は20年以上前の話なので当時は「15億円ってゲーム何本も作れるやん!」って吠えていました。今はもっとなんだろうなぁって考えると、ESAに仕切られずにメーカーが独自に自社イベントを好きな形で開催したほうが…って気持ちもわかります。
もちろん業界関係者にとっていいこともいっぱいありました。同業他社がどういうタイトルを発売しようとしているのかこの数日間でほとんど知れる、年に一回の同業他社との交流ができる、多種多様な交渉をこの会期中にいっぺんにできるなどなど。
時代が変わったのです。デジタル化のおかげで B to Bから B to C になりつつあること、PRの手法もリアルからデジタルへ移行していることなどなども要因です。新型コロナ感染拡大の影響はこの流れをブーストしたにすぎません。
課題は中小のメーカーやインディーズの露出です。彼らは大手がドライブするE3に乗っかって告知のタイミングを得ていたのですから、今後独自の告知方法を探るか、大手またはソニー、任天堂、MicrosoftなどのハードメーカーやSteam、Epic、Apple、Googleなどのプラットフォーマのイベントがその機能を担うことが期待されますね。
いずれにしてもリアルイベントとしての業界向け見本市や展示会は縮小していく流れは止められないかもしれませんね。
<2021年12月 米国市場動向 NPDデータ分析!>
さて、ココからは年末商戦最後のアメリカの12月ゲーム市場売上データです。ブラックフライデーは過ぎていますが、本来であればアメリカでは引き続きモノが売れるタイミングです。
でも…先月のレポートの通り、新型コロナウイルスのおかげでブラックフライデー前にみんなが買い物してたって事実もありますからどうなんでしょうね。
1.2021年12月の市場概況
今回のデータは「ブラックフライデーを終えたけれど、クリスマス本番はまさにこれから!」という時期(2021年11月28日~2022年1月1日)のものです。オミクロン株の蔓延による新型コロナウイルス感染再拡大が懸念されましたが、ゲーム市場の売上には大きな影響を与えることはなかった模様です。
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