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「生命感覚」に耳を澄ます
この3ヶ月間、慢性胃炎の薬を飲み続けていました。もともと胃が弱く、これまでも胃薬を飲むことはありましたが、ここまで長く飲み続けたのは初めてでした。
実は、数週間前から、飲むと逆に不快感が増すように感じていました。「もしかして、やめたほうがいいのでは?」という思いがあったけれど、消化器内科の先生に「副作用の可能性もあるが、薬が効くまでに時間がかかることもあので、続けてください」と言われ、私は真面目に毎日飲み続けていました。
先週、胃カメラの検査を受けたところ、特に異常はないと分かりました。にもかかわらず、薬を飲むたびにむかつきを感じるので、「これはもしや、薬をやめるタイミングでは?」と直感し、思い切ってやめてみました。
すると、まだ食後のもたれは多少あるものの、薬を飲んでいた時のような不快感は明らかに減りました。「やっぱりやめて正解だったのかもしれない」と感じました。
最初に胃の不調を感じたとき、すぐに薬を飲めばよかったのですが、食べ物や食べる量などを調整すればすぐに治るだろうと高を括っていたのが、そもそもこじらせた原因でした。
薬を飲み始めると徐々に症状が和らいでいき、そろそろ止められるかなと思って、飲むのを止めるとまた不調がぶり返す、という負のサイクルに完全に入ってしまいました。医者には「症状がある間は飲み続けるように」と言われ、私はきちんと治しきりたいと思い、その指示を守り続けました。
けれど、やっぱり薬を飲むとかえって胃が不快になるように感じ、検査でも問題なしと分かり、自分の中で「もう薬は必要ないんじゃないか」という感覚が湧き上がってきました。そう思ったとき、私は『生命感覚』という言葉を思い出した。
「生命感覚」という内なるサイン
ルドルフ・シュタイナーは、人間の感覚を5つではなく12に分類し、その中に『生命感覚』というものがあると説いています。
『生命感覚』とは、快・不快、痛み、だるさ、疲れなどを感じる感覚です。数値で測れるものではなく、非常に個人的な感覚になります。
今回の「もう薬は必要ないのでは?」という私の感覚も、まさに『生命感覚』によるものだと思います。
私たち人間は一人ひとり違います。いくら科学的根拠や治療のガイドラインがあっても、自分の生命感覚が何かを訴えているなら、それに耳を傾けることはとても大切ではないでしょうか。
もちろん、医療や科学を否定するわけではありません。むしろ適切な診断や検査、治療は必要なことです。でも、それを踏まえた上でなお、自分の体から発せられるサインを無視してはいけないと思います。
なぜなら、本来、自分の体調や健康について一番よく知っているのは「自分」だから。頭では分かっていなくても、体はちゃんとサインを送ってくれています。そのサインを見逃さないことが大切なのではないでしょうか。
ちょうど、私が自分の不調や薬について向き合っていたとき、とても興味深いドキュメンタリー映画を観ました。
『ガイアシンフォニー地球交響曲第2番』に登場する3人の中に、佐藤初女さんという女性がいました。彼女は食を通して多くの人を癒してきた方ですが、その原点には自身の病があったといいます。
彼女は大病を患い、ずっと薬を飲み続けていました。でもある日、「この病気は薬では治らない」と直感したそうです。そして、自分の体を癒してくれるのは「食べ物」だと気づいたのだといいます。
彼女は自分の『生命感覚』から湧いてきた声を大切にし、その結果、自分自身だけでなく、多くの人をも癒すことになりました。
薬は素晴らしい発明であり、多くの病気が治療可能になりました。私も薬のおかげで症状を抑えられていました。でも、最終的に健康をつくるのは、自分自身の免疫力や治癒力なのではないでしょうか。
薬を怖がって避ける必要はないけれど、漫然と頼りすぎるのもやっぱり違う。
医療の力と、自分の『生命感覚』の声。そのバランスを見極めながら、自分にとって本当に必要なものを選んでいきたい。そんなふうに感じた体験でした。