【韓国スタートアップ紹介記①】簡単チャット製作SDKサービス、SendBird
最近、BtoB SaaS(Software as a Service)が熱いですね。なので思い立ったついでに韓国のBtoB SaaS系のサービスについて、”どんなことをやっているのか”、”どんな戦略をとっているのか”について少し書いていってみようと思います。
その第1回目は、実は日本でも使ってる方いらっしゃるんじゃないかな?と思うSendBirdというサービスです。
サービスのコンセプトは「A Complete Chat Platform, Messaging and Chat SDK and API」ということで、チャットのすべてをSDK及びAPIで提供するというものです。(もう少しわかりやすく言うと、チャットの機能をDIYで楽に作れるキットを提供しています、ということです。IKEAとかに近いですね)
GoJeKやNEXON、redditなど、かなりトラフィックの大きいサービスも採用しているため、かなり堅牢なサービスだろうということが伺いしれます。
ちょっと前ではありますが、日本語の記事はこちらにもありました。
ちなみに代表のキム・ドンシン氏は2007年に創業したソーシャルゲーム系の会社をGREEに売却しています。(GREE KOREA、ありましたね)
そのSendbirdは先日、シリーズBで5,200万米ドルを調達し、韓国スタートアップ業界では話題になりましたが、彼らが話題になった理由の一つは、徹底的に韓国スタートアップ色を配していることでもあります。なんならサイトは韓国語版すらありません(笑)
これはAtlassian(豪)やIntercom(アイルランド)など、シリコンバレーで成功しているいくつかの海外企業の共通項でもあるのですが、アジアの企業でこの戦略をとっているのはそう多くないと思います。
また、SendBirdはいまのSendBirdになる前、JIVER(ジャイバー)という名前のサービスであったことはあまり知られていません(というか私も調べながら知りました)。もともとは2013年にSmile Momというママコミュニティ向けのサービスでしたが、スケーラビリティに限界を感じ、2015年今のMaaS(Messaging as a Service)という領域へピボットしています。
さて、SendBirdがここまで急速に成長できた理由はいろいろあると思いますが、その中で私が面白いと思った点をいくつか上げておきたいと思います。
1.徹底的なグローバル思考
すでに述べていることですが、SendBirdは韓国企業でありながらそれを微塵も思わせないサイトづくりをしています。先日代表のインタビュー動画をみましたが、その中で語られていた話が面白かったです。「シリコンバレーに来る海外スタートアップのよくある失敗は、自国である程度結果を出し、それをそのまま翻訳してもってくる。悪くはないが、どこかしらぎこちなさが残る。そのために信頼を得ることができない。」と。SendBirdはシリコンバレーに溶け込むためにそれまでの韓国語サイトを消し、デザイナーはすべてのデバイスのUIを英語に変え、ベンチマークサイトもすべて海外企業のものにした、とのことです。
2.成長のための戦略的な調達
キム氏はインタビューで、2015年の年末にY Combinatorで採択されたことがエポックメイキングな出来事であると同時に、企業の生存に直結したと語っています。シリーズAの調達の際に、YCより投資家からのレファレンスチェックにどう答えるかなども常に共有されていたそうです。
シリーズAを調達したShastaVenturesのDoug PepperはMarketoに、また、AugustCapitalのVilli IltchevはSalesforceにて戦略及びM&A理事としてHubspotやBoxなどのBtoB SaaSに投資したとのことでBtoB SaaSに強く、ちゃんとExitまでもっていったVCから調達しているなという印象でした。
また、シリーズBはリードインベスターがFacebook(正確にはザッカーバーグだけど)とも関係があるICONIQ Capitalということで、将来的な大型M&AまたはIPO、両方をきちんと狙うための布石なのかなと思いました。
3.成長(Growth)に貪欲になるための数値管理
これはSendBirdが初期にKPIとして定めていたLive Appsの数を見るためのマトリックスで、これら一つ一つの数値をみながらどのアクションがどの数値と結びつくのかを研究していたとのことです。
SaaSの成長に関しては、『起業の科学』などいろいろな書籍で語られていますが、それらを自社のものとして落とし込み、数値管理することはそう簡単なものではないと思います。特にStabilityのところはインフラとして提供するチャットサービスならではの部分もあるかなと思います。
さて、こういうふうにいろんな視点があるかとは思いますが、韓国のスタートアップは割とシリコンバレーの手法に慣れているのかなと言うのが自分が所属してかつ周りの話を聞いた部分でした。
また引き続き、紹介できればなと思います。
<参考ウェブサイト>
サポートいただいた分は今後のリサーチのために使わせていただきます