あなたの名脇役になりたいです


私の何気ない行動が誰かの夢を叶えるかもしれない。

私は贈り物をするのが好き。
相手のことを考えながら手紙を書くこと。
相手のことを考えながら贈り物を選ぶこと。
相手のことを考えながらお花を束ねること。
そんな時間をとても愛おしく思う。

今すぐ片手でピコンとメッセージを送ることもできるのだけど
その便利さも知った上で、
この不便さが、この手間暇が、なんとも気に入ってる。

数日前、仕事をご一緒したとても素敵な先輩のことをふと思い出し、
ただ思い出した、というそれだけの理由でお手紙を送った。

数日ですぐに贈り物が返ってきた。
返事や贈り物を望んでやっているわけではないのだけど、
その心遣いと行動力にまたさらにときめいてしまう。

お返事の手紙の中にこんな言葉があった。

「お手紙ありがとう。
スピッツの“さらさら”っていう曲の歌詞に
“遠く知らない街から手紙が届くようなときめきをつくれたらなあ”
っていうのがあってね、私が20代の頃、どうしたいのか、どうなりたいのか何に手を着けたらよいのかわからないけど、なんだか心打たれて手帳にこの歌詞を書いたことを思い出したし、ある種の夢がかなったからとても嬉しいです。」

大好きでとっても素敵な先輩の夢を、私が叶えることができたことがとても嬉しかったし、とても誇らしかった。
そして、私の何気ない自然な行動が誰かの夢を叶える可能性を宿しているということにハッとさせられた。

私が叶えられるのは自分の夢だけではないということ。

“どんな子どもでも家の中では世界一の有名人なんです。家の中で無名な子どもなんていないんです”

ちょうど読んでいた本の中で出会った印象的な言葉。
これは親と子供の関係を指しているけど、その他の関係の中でも成り立ち、そして忘れがちな大切な考え方であると感じた。

自分があまりにちっぽけで頼りなくて不安で心細くて泣きたくなってしまうことがある。

これは世界中でたった一人私だけが抱えている思いかもしれないけど、
もし仮に、大切な家族や恋人や友人が同じような思いを抱いていたとしたら、それはあまりに悲しいし苦しい。
お節介かもしれないし、
傲慢な自己満足なのかもしれないし、
逆効果かもしれないし、
何も生まれないかもしれない、
思いもよらない波を生むかもしれない。
それでも、そのままにしておくには、ただただあまりにも悲しいから。

私から見たあなたはたった一人かけがえのないとびきり素敵な主人公であると伝えたい。
そう伝えることは今私は果たしてできていただろうか。

自分をイケてる主人公にすることばかりに気を取られ、必死になっていたけれど
隣にいてくれる大切な皆を素敵でキラキラな主人公にしてあげられる脇役としての力もずっとずっと持っていたんだ。
すっかり忘れていた。
思い出せてよかった。

私が必死に生きているように、皆も生きていて。
みんなそれぞれの思いを抱いて生きていて。
みんなどうかとびっきりの幸せになってほしい。
何か壁にぶつかって苦しい時には、自分を責めず、焦ることなく、いたわりながら、自分のペースで、ゆっくり乗り越えていってほしいと、そう願う。

壁をドカンと壊してあげたいし、状況をぐるんとひっくり返してあげたい。
でもそんなことはできない。
物語を進めることができるのは主人公にしかできないから。
何気ない日常に小さな彩を添えるようなそんな脇役でいたいと思う。

私にできることはなんだろう。
私の幸せとあなたの幸せ、私の喜びとあなたの幸せ、ぴったりと重なることはないと思うけれど、私が今まで培ったもの、受け取ったものしか与えることはできないから、精一杯の愛を込めて。
自分にとっての幸せやときめきを沢山携えておくこと。
視野を広げる学びをコツコツと続けること。
いつでも分け与えてあげられるようにいつでもしっかり自分を満たしておくこと。
いつでも余裕を持つこと。

そしてもう一つ。
夢は自分で叶えるものだと思っていたし、頼らず自分の力で叶える強さをいつももっていたいと思って生きてきた。
「○○されたい。○○してもらいたい。」
そういう思いにぐっと蓋をしていたかもしれない、と気づく。

自分一人では叶えられない夢。私にもあるかもしれない。
叶うか叶わないか自分には決してわからないそんな「運」とか「タイミング」とかふんわりとした神秘的で静かで穏やかな夢も素敵だなと思った。
がつがつ狙っていく夢ではなくて、ふんわりとわくわくしてしまう夢。
今までそんなことに思いを馳せる余裕がなかった。

ゆったりすることの大切さに最近気づくようになった。
無駄にしてはいけない。あれもしたいこれもしたい。
思いは溢れて、あちこちに手を伸ばして、何かに急き立てられるように焦ってここまでバタバタと生きてきたような気がする。
「無駄」「余白」そういうものを必要以上に恐れて嫌って、必死に排除するように生きてきたかもしれない。
でもそうしたら何も入り込む余地がない。
息苦しくて堅苦しい。
きっとピリリと張り付いた緊張感を漂わせて生きてきたかもしれない。
もっと軽やかにいられたらいい。
ゆったりと静かにたたずんでいられたら。

ゆったりと軽やかな主人公になりたい。
そしてバリバリてきぱきな名脇役でいられたら。

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