映画についてのetc.:エンドクレジットの楽しみ方

こんにちは、柊太郎です。
唐突ですが、あなたはエンドクレジット、最後まで見る派ですか?それとも見ない派?
僕自身は、映画館では最後まで見るけと、お家でのサブスクや円盤鑑賞の時はすっ飛ばす派です。
最近はポストクレジットシーン(エンドクレジットが終わった後にながれるにオマケ的な映像)がある作品も増えてきたので、最後まで見る人も増えてるんじゃないかとは思います。
作品の余音に浸りつつ、ただただ漫然と目の前に流れる黒字に白の文字列をただ眺めるのも良いとは思いますが、どうせならエンドクレジットを見る上で、ちょっと楽しくなる知識をいくつかお教えしたいと思います。


セカンド・ユニット(Second Unit):第二班

ある程度、制作規模が大きい作品のエンドクレジットてよく目にするセカンド・ユニットという役割、よく目にはするけど、いったい何なの?と常々思われているかたも多いんじゃないでしょうか。
大作映画においては、メインのキャストが絡まないシーンの撮影も数多く発生します。例えば一連のシークエンスの冒頭に、舞台となる街並みや風景を引きの画で……なんていう時、監督自らが出向いて撮影してたら時間がもったいないですよね、そんな時に活躍するのがセカンド・ユニットです。メインのキャストが絡まないシーンなら気楽そうと思われるかもしれませんが、さにあらず、己の作家性は堅く封印し、脚本と監督の意図を汲み取り、いかにもこの監督ならこのように撮るであろうというショットをものにして、編集した時に違和感のないようにしなければいけません。なかなか大変そうですよね。
風景などの撮影以外に、セカンド・ユニットが特に大きな役割をはたす場合があります。それはスタントを必要とするシーン、いわゆるアクションシーンです。
アクション映画におけるセカンド・ユニットの監督(ディレクター)は、事実上アクション監督としての役割も果たします。『ジョン・ウィック』シリーズの監督として注目されているチャド・スタエルスキは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』や『エクスペンダブルズ2』などの作品でセカンド・ユニット・ディレクターをやっていました。
例えば(この映画、脚本はダメダメだけどアクションシーンは妙にキレが良い……)なんて時には、ぜひセカンド・ユニット・ディレクターなどをチェックしてみる事をオススメします。
さらに映画の規模がデカくなると、セカンド・ユニット以外に(イタリア・ユニットとかハンガリー・ユニットといった具合に)国ごとにユニットを組んだりします。『ミッション・インポッシブル』シリーズなんかがそうですね。

スクリプト・スーパーバイザー(script supervisor):記録

直訳すると“脚本監督”とか“脚本監修”になってしまうので、割と勘違いしやすい役割なんですが、スクリプト・スーパーバイザーはいわゆる記録係です。
一連のシーンを撮影する時に、撮影がサクサク進めば問題ないのですが、監督がこだわる人で何度も何度も取り直し、1日が終わってしまった、残りの撮影はまた明日……なんて時に出番が来るのがスクリプト・スーパーバイザーです。小道具の位置、俳優の髪型やメイク、自然光やライティング、などなど、改めて場面を再現するために必要な情報を決められたフォーマットで残し、例えば翌日など時間をおいての撮影再開でも不自然にならないようにします。また、この前のシーンでこのキャラは顔に傷を負っているので、ここから後のシーンでは顔に傷のメイクが必要、みたいな事を管理するのもスクリプト・スーパーバイザーの役割です。
スクリプト・スーパーバイザーの仕事が上手くない場面、いわゆる連続性の誤り(continuity error)と呼ばれるミスが発生してしまいます。連続性の誤りの代表的な例としては、『コマンドー』に出てくる黄色いポルシェが良い例ですね。前の場面でボコボコになっていたのが、次の場面では傷一つないきれいな状態に戻っていたりします。もっとも劇中ではそれどころじゃない出来事が次々と起こるため、初見でこの誤りに気づく人はあまりいないのではと思いますが……。

ガファー(Gaffer):照明

監督の撮影プランに従って現場(スタジオ内あるいは屋外)の照明を考える人がガファーです。
ガファーという独特な呼び名の由来は諸説あります、その一つは映画の誕生前、舞台で演劇が行われていた時代にガフ(Gaff)と呼ばれる棒を使って舞台照明を操作していたからというもの、もう一つは親方的な意味合いで呼ばれていたゴッドファーザー(Godfather)の短縮形であるという説。
いずれにせよ、照明機材を実際に現場に実装する段においては後述のグリップ(Grip)の出番となります。
ちなみに、劇中の時代の光量をリアルに再現するために、夜間の室内のシーンの撮影には蝋燭の光だけを使用したと伝えられるキューブリックの『バリー・リンドン』にもガファーとしてクレジットされている人がいて、一体何をやっていたんだろう、蝋燭の買い出しとか?と思ったら、実は昼間の撮影には電気の照明を使っていたとのことでした。

キー・グリップ(Key Grip):機材管理

グリップ(Grip)と呼ばれるスタッフの役割はドリーやクレーン等の大型の撮影機材の設置や運用、それと前述の照明機材を撮影現場に設置すること、そしてそれらグリップを統括するのがキー・グリップです。
ドリーは撮影現場にレール状のものを敷いて、カメラの水平方向への移動をスムーズにするもの。クレーンは文字通りクレーン車のクレーンアーム状の物の先にカメラを付け、主に上下方向へのカメラの移動をスムーズにするものです。
ちなみに木製のクレーンを初めて映画の撮影に使用したのはD・W・グリフィスですが、それの見様見真似で鉄製のクレーンを制作し、初めて映画撮影に使ったのは円谷英二だそうです。
ドリーとクレーンがめちゃめちゃいい仕事をしてるのが『1917 命をかけた伝令』です。YouTubeで"1917 making"とかで検索してみると、その撮影の様子がわかるかと思います。

ベスト・ボーイ(Best Boy):助手

ベスト・ボーイは助手の事です。もう少し細かく分けたいときはBest Boy Electric:照明助手等と表記したりします。役割によっては"best boy"ではなく"assistant"何々と言う場合もあり、両者の使い分けにどういう基準があるか、自分はまだよくわかってません、すみません。

プロダクション・ベイビーズ(Production Babies):制作中に生まれた赤ちゃん

これはまあそのまんま、映画の制作中にスタッフが授かった赤ちゃんです。このクレジット表記がいつから始まったかは、はっきり分かっていて、1995年のピクサー作品『トイ・ストーリー』が最初です。

クレイジー・クレジット:イカれたクレジット表記

これは役職とか役割ではなくて、映画のエンドクレジットにギャグなどが仕込んであるものですね。
『スクリーム』のエンドクレジットでは、サンタ・ローザ市の教育委員会がホラー映画の撮影だと知って直前で撮影許可を取り消した事を当てこすって、「コイツらには全く感謝してません(NO THANKS WHATSOEVER TO)」という一文を入れています。

以上、いかがでしたでしょうか。
この文が、あなたが映画を楽しむ一助となれば幸いです。

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