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建築のモノガタリ消費〜熊野古道と伊勢神宮の比較から〜

 2019年の年末に熊野古道の熊野三山(和歌山県)と伊勢神宮(三重県)に一人旅に出かけました。今回の旅で、熊野古道と伊勢神宮をを比較して気づいたことがありますので、それについて書きたいと思います。

 熊野古道は、外国人観光客だと思われる方が多く訪れており、外国語での案内も充実しています。一方、伊勢神宮は、外国人と思わしき方はほとんど見かけることがなく、案内も充実していないということです。

 旅から帰還して、この差異をGoogleトレンドで分析してみることにしました。範囲を「すべての国」にすると「ise jingu」は、「kumano kodo」より検索されていないことがわかりました。ところが、範囲を「日本」にすると「伊勢神宮」は「熊野古道」より検索されているという結果でした。
 このことから、日本人には伊勢神宮の方が知名度が高いが、世界では熊野古道の方が知名度が高いことが分かります。このような差はなぜ生まれるのでしょうか?

 この疑問、視点を変えれば、「なぜ伊勢神宮は日本人だけを魅了するのか」という問い方をすることもできます。私の個人的な意見ですが、熊野古道の神社の方が見応えがあり面白い観光スポットだと思っています。一方、伊勢神宮は、写真撮影できる場所が制限され、良さがわかりにくいスポットだと思います。したがって、伊勢神宮には、目に見えない特別な何かがあるのだと考えました。
 私の見解ですが、日本人は、伊勢神宮の建築物自体の物理的な美しさ(インスタ映えするような)だけに魅力を感じているのではなく、その建築物(モノ)を媒介とした神道のモノガタリに魅力を感じているのだと思います。これは外国人には分かりにくいのかもしれません。
 「モノ消費からコト消費へ」と言われるようになってから久しいですが、最近、再び「モノ消費」の時代が来るという意見も聞くようになりました。それは従来の単なる「モノ消費」ではなく、「モノを媒介としたモノガタリ消費」のことだと思います。伊勢神宮で事例もこれに当てはまるのではないでしょうか。もっといえば、宗教建築の全てが「モノを媒介としたモノガタリ消費」とも言えます。伊勢神宮の場合、特にその傾向が強いと感じます。

 さて、今回は旅の経験から建築とモノ消費・コト消費の関係について考察しました。建築のモノガタリ消費って宗教建築以外にもあるのだろうか? そんな問いがまた浮かびました。

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