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<小学校の思い出>おやつタイムとは何だったのか

 これは2000年代前半、僕が小学生だった頃の話である。僕の小学校では一時期「おやつタイム」を導入する計画をあった。結局実現することのなかった計画であったが、小学生時代で最も印象深かった思い出の一つであり、稀有な経験だと思うのでここで共有したい。

 発案者は僕が高学年くらいの時の校長先生。50代くらいの女性の先生だった。話し方は穏やかであるが芯の強そうな人で、存在感の濃い先生だった。ある日、校長先生は、週に一度の運動場で行われる全校集会のときに、全児童の前で「おやつタイム」という言葉を発したのだった。おやつタイムとはどのような制度なのか?それは、給食と似た制度で、学校が配布するおやつを児童が楽しみながら食べる時間を設けるというものだった。詳細は覚えていないが、時間割の6時間目に組み込むか、6時間目の後の時間を使うことを想定したものだったのであろう。僕ら児童はおやつタイムという強烈なパワーワードに引き込まれた。

 ただし、おやつタイムというのは無条件で実現できるものではなく、僕たち児童が「良い児童」であると認められたときに実現されるものであると、校長先生は話した。校長先生のおやつタイム発言は一回のみならず、その後の全校集会のときに度々言及した。それは、僕らの学校での生活態度に関連付けた言い回しであった。

「今日の皆さんの全校集会への集合する態度を見ていて、おやつタイムの実現はまだまだ先かなあと思いました。」

 一体どれほど大変なことなのか。一体どれほどの善行を積めば、おやつタイムに辿り着けるのか。僕ら児童は気づいたのだ、おやつタイムの実現は並大抵の事ではないということを。

 結局、おやつタイムは実現することなく、校長先生は僕らの学校から異動になり、おやつタイムについて言及する人は一人もいなくなった。今思うと、おやつタイムについての言及は全て校長先生からであり、他の先生からは全くなかったように思う。
 
 おやつタイムとは何だったのか。本当に実現の見込みがあったのか。費用は誰が負担する想定だったのか。おやつは、給食センターに協力要請するほどのものなのか、それとも市販のお菓子の配布を想定していたのか。校長先生以外の先生は賛成していたのか。全てが謎のまま終わってしまった。今となっては、おやつタイムは、僕らの記憶の中にしかない。

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