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公認心理師(国家資格)制度におけるモラルハザード(4)カウンセラーになりたい欲の怪しさと副業ブーム

人を癒したい、救いたいという気持ちは怪しい、と言ったら、あなたはどう思いますか?そんなの酷いじゃないか、優しい人しか、そんなことは思わないはずだ、と思うかもしれませんね。第三者の立場として、そう思うのは自由ですし、一理はあると思います。ただ、それは自分が癒す側、救う側になりたいと望むときには、きちんと向き合わなければならないものです。

(3)でも触れましたが、人を救いたいというメシア願望をどうコントロールするかは、支援者が訓練を受けるなかで適切に身につけなければならないものです。人を救うことで自分が満たされようとする心理は、支援相手の領域を侵すとても有害なものだからです。人間は自分が可愛いものですから、そう簡単にコントロールできるわけではありません。だから、時間をかけて自分を振り返り、指導者の支援を得ながら習得する必要があるのです。具体的には、それが修士課程で行われる訓練に含まれます。だから、公認心理師は修士課程修了者の中から選ぶことが一定の目安となります。

また、(3)にて国家資格として公認心理師が成立した後も、様々なカウンセラーの民間資格が放置されたままであることを述べました。カウンセリングなどの業務自体は国がコントロールしていないからです。本来は、国が認めた心理の専門職を作りたかったはずですが、そこにモラルハザードが起き、不適切な受験を潜り抜けた有資格者が多数出たため、公認心理師なら大丈夫ですとは、とても言えない状況になってしまいました。それに加え、カウンセラー業務自体に制限はかけられていませんから、様々にカウンセラーを名乗る方々が存在しています。

なぜ、人はそんなにカウンセラーになりたがるのでしょうか。端的に言えば、それだけメシア願望が根強い人間の心理だからだと思います。カウンセラーになりたい人の典型的な自己宣伝は「自分が辛いを思いをしたから、人を助けたい」です。それ自体は、ごく普通の心理で、そしりを受ける筋合いもないのですが、そこから専門家として自己の欲望を扱えるようになるまでには、相当の距離があります。その距離を的確に辿れない人は、支援者の適性に問題が残るのです。

簡単になれるカウンセラーは、その道程をカットしてしまいます。そして、そのような資格商売をするカウンセラー養成者は、そこに倫理的な問題を感じることが出来ません。それと同様のことが(1)(2)に述べた「30時間で出来上がる公認心理師」にも起きています。

そのような方々が公認心理師やカウンセラーとして活躍したい場合、どうなるかを考えましょう。実は、わたしたち心理職が懸念する通り、既に現場ではトラブルが起っているようです。事態を懸念する専門家たちは、それらの情報を集めて次なる対応策を考えてもいます。それでも、彼らの活動に改善を求められるほど状況が成熟していないので、残念ながら、しばらくは一般社会の皆さんが自衛するしか、方法がありません。

ところで、昨今、副業ブームが起こっています。働き方改革と言えば聞こえはいいかもしれませんが、人々は先行きを不安視しており、そのために副業を考えているのが実態だと思います。そして、そこに付け込む起業ビジネス家たちが存在します。様々な業種をもちかけられますが、そのなかにカウンセラー稼業も含まれています。

起業ビジネス家は言います。既存のカウンセリングでは効果がない、うちのカウンセリングには、こんな素晴らしいノウハウがある。私はこれで成功して来た、あなたもきっとカウンセラーとして稼げるはず!と。今の社会では将来が不安だ、この方法で副業を始めれば成功出来る!と。

国が認めた公認心理師養成には学部、大学院の6年がかかります。そのカリキュラムはこんな感じです。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000174192.pdf(5枚目から7枚目までをご覧ください)

それに対し、起業ビジネス家や、それに並ぶ資格商法家が提示する講座はかなり養成期間が短く、副業であればさらに「お手軽に始められる」感を醸し、ハードルを低くします

巷の“カウンセラー”のみならず、(1)(2)で述べた「30時間で出来上がる公認心理師」がこの手の稼業を始める可能性は十分にあります。なぜならば、見る目のある人から見れば、心理職としてどのような人材を採用すべきかはおのずとわかるものであり、修士課程で訓練を受けていない公認心理師は採用から外される可能性が高いからです。しかし、彼らの自己実現欲求は留まることなく、今の仕事に加えて副業ビジネスという形で現れるかもしれません。

そのような人々に起業されたら、もう誰もあなたを守ってくれません。そのサービスを買うあなたの選ぶ力にしか頼れません。ですから、公認心理師を選ぶときは、どうぞくれぐれも気を付けてください。また、副業サイトのカウンセリングサービスは選ばないに越したことはないかもしれません。片手間に学び、片手間に提供されるカウンセリングは信用しないほうが無難です。

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