『ミステリと言う勿れ』 1-4巻 田村由美
むしゃくしゃすることがあった。気分を変えたい。「漫画だ、漫画の世界に行こう」と本屋に行った。何かいい新刊が出ていないか。見つからない。こんな時につまらない漫画に当たりたくない。もっと悲しい気持ちになるから。ああ、田村由美なら。『BASARA』と『7SEEDS』の田村由美先生なら!と4冊大人買いをした。
主人公は男子大学生の久能整(くのう ととのう)。頭の良い彼が事件に巻き込まれ、話しながら解決していく。タイトルが『ミステリと言う勿れ』だけど私にとってはミステリ。(後書きで「ミステリなんて難しくてかけない」と描いてあったが・・・)原案などで他の人の名前が載っていないので、田村先生が考えているのだと思う。
『BASARA』『7SEEDS』の壮大な世界と比べると、現代日本の大学生はスケールが小さいような気がしてしまう。だけど田村先生がすごさが煌めいている。その一つが整くんのキャラクター。彼は、大半の人が見逃してしまう「ないもの」に気づいて、ちゃんと拾う。事件に関することはもちろん、人の気持ちに寄り沿うことまで。インド人による「0(ゼロ)」の発明のように、新しい概念を作り出す非常にクリエイティブな性質なんじゃないか。なんでこんな要素を登場人物に組み込めるんだろう。
他にも、ストーリーには三好達治、マルクス・アウレーリウス、論語の九思が引用されていて、田村先生の造詣の深さに感服。
一つ一つの事件は整くんが綺麗に解決していく。でも整くん自身の謎がうっすらと示唆されていて、解決されていない。これが今後どう明らかになっていくのか。田村先生のことだから、すごいことになってくる気がする。
244-247 ミステリと言う勿れ 1-4巻