『宇喜多の捨て嫁』 木下昌輝
JUNE 21, 2018 Instagram掲載
「表裏第一の邪将、悪逆無道の悪将」と称された宇喜多直家が父。母は物心つく前に自刃した。一番上の姉も自刃、二番目の姉は発狂。三番の姉も政略結婚で嫁に行った。碁の捨て石になぞらえて世間は言う、「宇喜多の捨て嫁」と。主人公は四女於葉17歳、針の筵の中、嫁に行く。於葉は嫁ぎ先でどう生きていくのか。そして宇喜多直家とはどんな人物なのか。どうしてそういう人間になっていったのか。少しずつ時間を遡り、彼らの人生が明らかになっていく。
いやーむごい。ある場面ではあまりにむごくて食欲がなくなった。そんなことやらせるなって…あんまりだ。なまじ賢くて強いと、死ねない。こんなに辛いのに。
ほんとにこの時代に生きていなくてよかった。親の仇をうったり、弟に命を狙われたり、農民やってたら戦に駆り出され畑をボコボコにされたり、夫が戦場から持ち帰った塩漬けの生首を化粧したり、家族が磔になる、とか本当に嫌だ。裏切りと死と不信がうずまく乱世。人は環境でどんどん荒んでいく。殺らなきゃ、殺られるのだから。基本的人権とか社会保証って本当に大切だ。私の祖先は何とか乱世や戦争を生き延びて今わたしはここにいる。そして先人が殺し合いのない社会を作ってくれた。ありがとう… と深く感謝した。
章立て、というか物語の順序の組み立てが実に見事。時間軸が前後するけどとてもスムーズ。そして最後に伏線がきれいに繋がる。辛くて読むのをやめようかと思ったけど、最後まで読んでよかった…
この宇喜多直家、本当にひどいんだけど(しかも血膿が出る病で臭い)、最後まで読んだら成仏してほしい、と痛切に思った。地獄で辛い目にあったりするのではなくて、もう安らかに眠ってほしい。あんたの人生、本当に辛かったよ。そんな風にしたくなかったのにね。守りたかっただけなのにね。
4月に、この直家の息子が主役の『宇喜多の楽土』が出ている。くふぅ、楽しみ…!!
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