虚と実について
映画『八犬伝』を観てきた。
「虚と実、
2つの世界がシンクロする『八犬伝』」
というのが映画のキャッチコピーだった。
「実」である馬琴先生の人生を描くパートと、
『八犬伝』の物語を描く「虚」のパート。
この二つが交叉しながら
物語は進んでいくわけだけど…
何が「虚」で何が「実」なのか、
答えの出ない問いと向き合いながら
作品を創り出す馬琴先生の姿が印象的だった。
馬琴先生はすでに亡くなり実在しないが、
物語はこうして今も色褪せることなく存在している。
今となっては馬琴先生が「虚」で
『八犬伝』が「実」なのだ。
そう考えると、「実」と「虚」というのは
そもそもが同じもので、
受け手の条件によって
見え方が変わるだけなのだろう。
はたまた、
目に見えているものを「実」
見えないものを「虚」としがちだが
果たしてその分類が適切なのかも疑問が残る。
奥深くまた、興味深い問いである。
この映画を通し
作者が死してなお
私たちは『南総里見八犬伝』という作品から
多大な影響を受けていることに
改めて気づいた。
ただこれは、
決して馬琴先生が特別なのではなく
亡くなった後も
周りに影響を与え続けるというのは
誰にでも当てはまることなのだ。
究極のところ、
自分がどんな「実」を残すかは
自分が「虚」とならないと
わからないのかもしれない。
自分の預かり知らぬところで
影響を与えてしまう…
これはなかなか恐ろしいことである😂
だからこそ「実」であると感じる今を
悔いなく、誠実に生きたいと思った。
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トップの写真は先日出かけた
Mrs. GREEN APPLEのライブ会場
Kアリーナ横浜
滅多にお目にかかれない
アーティストが目の前にいる、
生の歌声が聞けるという
「実」を体験しているはずなのに
煌びやかな演出や興奮する人々の気は
ライブが終わると魔法のようにパッと消え
まるで「虚」の世界のように感じた。
「虚」と「実」はやはりひとつだ。