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「理系女子的生き方のススメ」を10年後に読み直す―リケジョだけでなく、すべての女性へ送る普遍的メッセージ

2012年に発刊された美馬のゆり著『理系女子的生き方のススメ』は、女子中高生に向けて理系のキャリアを考える上での指針を提供した本です。しかし、10年以上が経った今も、その内容はリケジョだけに限らず、幅広い読者層に新たな視点を提供するものではないでしょうか。今回は、文系の視点からこの本を再読し、さらに美馬氏の続編への期待も交えて紹介します。

1. 本書の概要:リケジョの道を示す指南書

理系女子的生き方のススメ』は、女子中高生を対象に、理系の道に進む選択肢とその後のキャリア展望を紹介する一冊です。著者の美馬のゆり氏は、自身の経験をもとに、「理系=難しい、男性向け」という固定観念を打ち破り、理系のキャリアが持つ可能性とやりがいを説いています。特に、「自分のやりたいことを見つける力」や「問題解決能力」を育む大切さが強調されており、理系に進むか迷っている若い女性たちに勇気を与える内容です。

2. 当時の女子中高生にとっての意義

発刊当時、理系分野は依然として男性が多く、女子中高生が理系進路を選ぶことへの社会的な後押しは少なかった状況でした。この本は、女性が理系分野でキャリアを積むことがどれほど可能性に満ちているかを具体的に示すと同時に、迷いや不安を抱える彼女たちに実際の体験談を通じて安心感を与えました。当時、このような本は少なく、特に理系進路を選びたくても周囲に相談できる相手がいない学生にとって、本書は大きな支えだったでしょう。

出典:内閣府男女共同参画室「理工系分野における女性活躍の推進を目的とした関係国の社会制度・人材育成等に関する比較・分析調査報告書(平成29年4月)」より

3. 現在の視点で読み直す意義

10年が経ち、私自身も文系出身ながら、今後のキャリアや生き方を考え直すために学び直しを始めました。その中で、理系分野に限らず、自己成長や問題解決能力の重要性が改めて強調されていることに気づかされます。特に、第三章「仕事のしかた、リケジョの場合」で提起されている「労働によって報酬を得る」という考え方に対し、社会的な役割としての仕事が単なる労働で良いのか、また、言語能力だけでなく非言語能力の重要性についても問いが残ります。現在では、技術の進化や多様な働き方が広まり、当時の見解を見直す価値が大きいと感じます。

4. 時代や読者の属性を超えた普遍性

本書はリケジョに向けた指南書であるものの、根底にあるメッセージは、「自分の道を見つける力」や「問題解決能力」を重視するもので、時代や読者の属性を超えて、すべての女性に有益です。また、著者が強調する「コミュニケーション能力」や「チームワーク」の重要性も、あらゆる分野で求められる能力であり、理系か文系かを問わず、社会で生き抜くために不可欠なスキルと言えるでしょう。個々の能力を尊重しながらも、多様なチームでの協力が必要な現代の働き方に通じる普遍的な内容です。

5. 続編への期待:AI時代における新たな洞察

本書の続編ともいえる『AIの時代を生きる - 未来をデザインする創造力と共感力』が2021年に出版され、その後10年間の変化に合わせた新たな視点が提供されています。特に、本書で疑問が残った「仕事=労働」の捉え方や、非言語能力の価値について、この新しい本ではより現代的な視点で回答が得られるのではないかと期待しています。AI時代において求められる創造力や共感力というテーマが、今後の生き方やキャリア選択にどのように影響を与えるのか、非常に興味深い内容です。

まとめ

理系女子的生き方のススメ』は、発刊当時のリケジョに向けたメッセージでありながら、今再び読み返すと、その内容は多くの読者に普遍的な価値を提供していることに気づきます。理系・文系を超えて、自己成長や問題解決力を身につける重要性、コミュニケーションやチームワークの本質が浮き彫りになります。さらに、10年を経て書かれた続編にも期待が膨らみ、これからの未来をどう生き抜くか、私たちに新たな視点を与えてくれるでしょう。

というわけで次回は、美馬のゆり著『AIの時代を生きる - 未来をデザインする創造力と共感力』について。このマガジンでは、まちライブラリー「沼への入り口」(No.1124 埼玉県 滑川町)スタッフが、「沼」的読書術で出会った本たちを紹介していきます。お楽しみに!


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