不器用で邪魔な『女』職人から有能なのに嫌われる職人になった話
私が家具職人を目指して具体的に行動に移したのは20年以上前のことで、もっというと8歳の時に憧れた仕事だった。それについては、『家具職人への道』としてブログに書いているので興味がある人は検索して欲しい
当時は『若い女』というだけで門前払いだった。その話は何度も何度も何度もしているので省くけど、ようやく修業の道を拓いたのに今度は
『壊滅的に不器用』『空気読めない邪魔女』
という壁にぶつかった。自分でもガッカリするくらい不器用で『向いてない!辞めろ!』っと怒鳴られる度にごもっともだと思い深く落ち込んでいたけどシツコク作業を続けて1人になったら泣く日々だった。
もともと否定的に育てられているために自己肯定感は低いけど木工作業に向かうとあまりにも酷い有様で『マジ向いてない』って何度も辞める言い訳を考えた。
でもすぐに辞めたら信頼も居場所もこれからやりたい事を仕事にする未来も掴めないままなのはわかっているから何とか食いしばることにした。
例えばノコギリを墨通りに真っ直ぐに引く作業、人が3回で習得できることが30回しても真っ直ぐ引けず『お前の性格が歪んでるからや』と言われ、自責と戦いながら数を重ねる。
時間は皆平等だから私だけ朝早く来て1番最後に帰り、作業時間を多く取った上で人が5回することを10回20回としなきゃうまくなれないので周りはじっくりしているのに自分だけゆとりのない、スピードが全く違うセカセカ空気が出来上がり身につくまでは悪循環だった。
10年以上経過して気づいたのだけどあの頃の私には筋力がなく、道具を真っ直ぐ均一の力で使いこなす安定感がある筋肉が無かったのが不器用の大きな原因だったと考える。
それに気づいたのは新人さんに教える機会が増え、最初は皆不安定だけどしばらくしたらすぐできるようになるので自分の新人時はよっぽど不器用で向いていないのにしがみついてきてようやくって感じだなぁと自己肯定感さらに低くなると同時に、経験の有無の差は関係なく新人男性の方が材料持てる重量が多いことからだ。
これは男女差別ではなく区別として筋肉の素質が男女では違っていて、女性の場合はまず筋肉が圧倒的に少なくて、かつ筋肉自体付きにくいから時間がかかるのだ。私は体幹の違いによる差に気が付かずにドンドン置いてきぼりでかつ、足を引っ張るのが嫌でがむしゃらに作業時間を費やした(見渡せる中では圧倒的に時間を費やした自覚アリ)
向いてない
辞めろ
帰れ
邪魔、迷惑
など何度言われても空気を読まずにしがみついた結果…いつの日からか作業時間や挑戦回数などの基礎レベルが上がり、体力も筋力も上がってきたら手元が安定し始めて出来るスピードが上がって正確さも上がってきたのである。
ということは…やっとこさここから普通になれて、『長い時間たくさんの数をこなす』ことが当たり前で苦なく出来るという利点まで体得した。
木工所を何軒か転職しているが聴覚、精神、発達、知的など様々な障がい者が働く木工所のオーダー家具部門にいた時、工場のメインに量産ラインがあり適材適所があてがわれていたので、皆それぞれのパートでめいっぱい技術を活かしていた。
時折オーダー家具の仕事がない時や人手が足りない時に私がラインに入ると皆があまりにもスピードが速く、キレイに完成品までできていくので自分は1人で作るオーダー家具のスピードしか出せず、流れを乱して落ち込んだことがある。
ライン作業で一人でも遅い人が入ると一日の生産量がガクンと減ってしまう、普段と違う人が中に入ると恐ろしく数字に表れるので私は『私が入ると生産高が上がった』といわれるよう鍛錬した。特に扉などの金物を大量につける時にインパクトドライバーでビスを止める作業はめっちゃ早い。
この経験が良い効果を生み、周りに追い込まれてめちゃくちゃ腕が上がった。特にASDの人が多く、決まった仕事は有能で数学が得意な人、1度した仕事は2度と寸法を忘れない人、確認が慎重でミスが起こりにくい人
逆に数字は数えられないし言葉も話せない人は洞察力が高く段取りが上手く、耳が聴こえない人は機械整備や設定が得意など一つ一つの能力が高くその中で鍛えられたので私も普通のレベルが上がってきたのだ。
わかりやすく言うと毎日ランニングをキロ4分半のペースで10km走るのとキロ6分で5km走る人の違いで、早く長く走れるプロランナーには、遅く少ないファンランナーの距離やスピードでは満足いかないし、逆にペースが遅いファンランナーがプロランナーのようなハイペースになると息も上がり故障して長く続かないのと同じ現象だ。
(私は遅めで長く走るから周りとのペースが合わず置いてけぼりで、体力と技術が身についてきたら早く長く走れるようになったということ)
現在の私はどちらかというと周りを無言の圧で追い込んでいて、周りが疲弊して息切れしているのに自分だけはまだまだ安定して作業をし続けることができる状況。本当は追い込む気はなくて自分の中に1時間で〇〇を終わらせる!というノルマがあるので余計な休憩全然取らない完全に正当な機械女(笑)
同じ気質の人と仕事するとめちゃくちゃ心地よいし仕事もめちゃくちゃ進む!(でも介護離職後に手伝いしている木工所関連の中では一人も同じ価値観の人にであったことがない)
この目に見える仕事のスピードも量も1日の進捗も違うから今まで自分が王様で自信があった年上の男性は私のことを疎ましく思うのである。
昔は不器用で足手纏いで怒られていたけど、積み重ねにより早く正確にできて、かつ長く安定して作業し続けれる私には作業的には非がなく、正当な注意することがない(可愛げもない…)から疎ましい気持ちが私に対する態度を悪くして排除するためにイジワルするしかなくなる惨めなオッサンになるだけである。
もちろん、決して自分がズバ抜けて能力が高いとは思っていない。本当にポンコツで怒られて邪魔者扱いから脱却するためにただ費やす時間が長く、やっと普通に追いついたら自然と周りとペースが合わないスピードと時間をこなせるようになっただけ。無能から普通の有能に上がった。ただそれだけ。
そのおこぼれの利点により私がこなすスピードが早いから周りが自分がサボるスキもなく、日当も私より高いのに私より仕事をこなせてないことが目の当たりになるので、負けじと追い抜こうとするかと思いきや、もっと手抜きして全部押し付けてくるクズ親父が出来上がる。
それを私は可愛げが無いから指摘をする、煙たいから嫌ってくる。(私の方が経験年数低いし女に負けたくないプライドもあるのだろう、でも私ももともと意味なく偉そうで人に仕事を押し付けるオッサンが許せないのでハッキリ言う)
嫌われた(嫌われる)からといって周りと同じようなペースに合わせて私の能力を下げるつもりもない、また自分が身につけた心地よいペースで手を抜かず丁寧に仕事をこなすスタイルがマイルールなのに、人間関係の調和のためにマイナススキルに落として変えるつもりもないし、効率を考えてする仕事が好きだ。
するとどうなるか?
3人でしていた仕事が私一人で充分終わることが増えてくる。ゆっくりペースで仕事していた人達は下っ端に押し付けて楽するつもりが私が許さないので窮屈になって辞めてしまう。皆と調和が取れない私が悪いのだろうけど、仕事としては利益率が高いのは私。
さらにいうと私は父の血譲りもあり、整理整頓や、片付けにかなりこだわりがあるので雑な人は全く合わない。(整理整頓も仕事が早くなる理由の一つで大事!)この点でも仕事サボりたい人は上手くできない人が多く私と揉めたりする。
若い時は仕事できなくて邪魔者扱いされ、努力して身につけたらプライド傷つけて嫌われる、もともと可愛く頼れないから尚更勘に障るのはわかるけど、私は仲良しごっこで仕事のレベルを下げる無駄なことはストレスだし、もう歳を重ねると自力で磨いた価値を下げたらギアチェンジもしんどくなってくるので絶対にわざと落ちぶれてはいけないと強く思う。
ただそんな人たちでも数があれば仕事になるし職人に辞められたら困るのは出入り先の社長(日当払いすぎて大変そうだけど)。私も自分の会社じゃないんだし大人だし相手の気持ちを考えねば!!!っとフリーの職人で必要な技術を提供して素早く去って長く共に働かない関係性が1番迷惑にならないと学習した。(介護生活までは全部自分で仕事を決めて納品までしていたけど介護で全部直仕事は休止している)
いつか歳を重ねて能力が落ち、自分が身につけたスキルが発揮できなくなり周りの迷惑になって不利益を出すようになれば自覚してキレイに去りたい。
私がASDだとわかってから尚更、自分にあった正しい働き方を無意識に選んでいるなと実感している。それまで住宅販売の仕事も当時は向いていると思ったけど自分が良いと思っていないと勧められないし、不動産にありがちな隠し事やその場限りの嘘などつけない性分だし金銭感覚も人間関係も、私にとってはずれた世界なので心を壊しかけたのはもうこれ向いてないよっという警告だったんだろうと思う。
例えば、木工作業が自分の性分に合っている部分は過集中でやり続けることが出来ること、マイルール・こだわりが強い部分が仕事と相性良くスキルアップに繋がっていること、神経質な分、綺麗に仕上げるまでやり切れる。またいい意味も悪い意味も空気が読めないから遊びや飲み会よりも仕事を優先した。
憂うことやネガティブ思考になる時に木工が大好きで没頭できることで余計なこと考えずに済み相当助かっている。
ちなみに。どうがんばっても力の差はある。持てないなら仕事をするなと一喝された若いころ、だいぶ力を付けたつもりでも物を持ち上げる力、運ぶ力、締める力、瞬発力など20年以上経過しても性別的男性の方が潜在的に能力が高く、新人さんの方が力は強い。家具だとなんとか対等になれるけど大工さんとなると思っている以上に力の差を痛感するのだろうなと想定している。だからスポーツの世界でも男女の区別って必要と強く思う。
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なるべくしてこうしてる話
とてつもなく勇気を出して色々本音を書いていくので金額が高めになっています。 それは不特定多数に知られたくない自分がいるからで、仕事では知ら…
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