わたしの看取りプロジェクト14
すごい! 端座位
父が最初に入院した病院はいわゆる老人病院で、リハビリは行っていませんでした。
2週間点滴が続いてほぼ寝たきりになっていましたが、普通食に戻ってからは理学療法士の妹が医師の許可を取り、身体の曲げ伸ばしなどのリハビリをやってくれました。
「端座位(たんざい)をしてみよう」
なんすか、それ?
端座位とは介護用語で、患者がベッドに座り、足を降ろした状態のことを言います。
わたしたちは家から踏み台を持ち込んでベッドの横に置き、父が座ったときに足の裏が踏み台に着くようにしました。
妹とふたりで父を起こし、ベッドに座らせ、妹が前を、わたしが後ろから父を支えました。
すると、なんということでしょう!
ビフォー端座位は目をつぶってうつろな表情だった父が、アフターはバッチリ目をあけ、病室に入ってきた看護師さんに挨拶するではないですか!
それを見てわたしたちは思わず笑ってしまいました。父もつられて笑っていたと思います。
人間って、寝るとき以外は縦になっているのが基本なんだなあ。
偶然ですが、その日書店に寄ったら週刊東洋経済のバックナンバーが並んでいて、介護特集のページに端座位の記事が載っていました。
確か、「重度認知症も端座位でハッキリ!」みたいなタイトルだったと思います。
こういうリハビリは、早く始めるほどいいと思いました。
しかし数日後に父のお尻にできたじょくそうの治療痕を見て以来、こわくて端座位ができなくなってしまいました。
(2014.9)