わたしの看取りプロジェクト17

訪問入浴は日本独自のサービスらしい

父は週2回、木曜の9時と日曜の17時に訪問入浴のサービスを受けていました。

退院が決まったとき、わたしは介護ベッドを玄関に近い父の書斎(5畳くらいの洋間)に置こうと思いました。
オムツ交換のときのニオイが気になったから、台所から離れた部屋がいいと思ったのです。

でも父の留守中に書斎に入れたベッドの分解ができなかったので、介護ベッドは台所に続く居間(8畳)に置くことになりました。

結果として、これがいちばんよかった。

食べないから排せつもほとんどなくニオイはゼロだったし、台所にいることが多い母やわたしが、いつでも父を見ることができました。

訪問入浴のときはベッドの横に余裕をもって浴槽を置き、父の頭と左右から3人のスタッフがていねいに洗ってくれました。

入浴する前、2人が浴槽を組み立てているあいだ、看護師さんが血圧と体温、皮膚などのバイタルチェックをします。
問題ないとなれば、浴槽に張ったネットの上に父を乗せ、炭酸泉で洗ってくれます。

ボイラーは家の前に駐車した車に積んであり、水は庭の蛇口から引き、排水は風呂場を使いました。

入浴から寝間着に着替えるまで、ずっとバスタオルで身体を覆っているから、はずかしいこともありません。

血色のよくなった父は、ほんとうに気持よさそうでした。
入院中も週1でお風呂に入れてくれましたが、こっちのほうがずっとていねいでした。
聞けば、こういう形の訪問入浴サービスは日本独自のものだそうです。

4回目の訪問入浴のとき、楽しげに作業するスタッフの笑い声につられて父は笑顔を見せました。父が笑ったのは何カ月ぶりだろう。

営業の人も含め、訪問入浴のスタッフのみなさんは、みな明るい人たちでした。彼らが帰るときはいつも、千代紙の折り鶴をくれました。

父の笑顔を引き出してくれたスタッフさんたち、ほんとうにありがとう。

5羽の折り鶴は、通夜の晩、棺の上に飾られ、告別式のあとは父と共に火葬されました。
(2014.9)

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