わたしの看取りプロジェクト13
点滴やめました
9月9日の退院以来、父は一日おきに皮下点滴をしていましたが、19日を最後にそれもやめました。
点滴で身体によけいな水分を入れると、痰やむくみの原因になり、本人にとって負担となるそうです。
20日、痰が絡んで苦しそうだったので訪問看護師さんを呼び、痰の吸引をしてもらいました。
父には点滴によるマイナスの影響はあまり出ていませんでしたが、母が「もうやめようか」と言い、わたしも同意しました。
退院後初めての訪問診療の際、医師から点滴をするかどうか聞かれ、一日おきに500ccの輸液(「ソリタ-T1号輸液」。塩化ナトリウム2.07g、L-乳酸ナトリウム1.12g、ブドウ糖13.0g)を入れることにしたのは母の希望です。
その母が終わりを決めたのは、わたしが友人と会えずにいることに気兼ねしたのではないかと、あとから気付きました。
父は寝たまま口をあけて息をすることが多いので、いまは氷のかけらで口を湿らせたり、うるおいキープというジェルを歯に塗ったりして、渇くのを防いでいます。
2日後、痰を吸引してくれた看護師さんがまた来ました。もう点滴の針を刺す仕事はありません。彼女は父の身体をくまなく確認してくれました。
足の親指の爪が少し伸びていて、人差し指に爪が食い込みそうになっていたのを見つけ、こういうちょっとしたことに気を配ることを教えてくれました。
わたしが剃ってまだらになっていた髭も「わたし、これやるの好きなんだ」と言いながらきれに剃りあげてくれ、伸び放題だった鼻毛もカットしてくれました。口の中で乾いていた痰もきれいに取り除いてくれました。
その間、あれこれしゃべりながら作業していたのですが、看護師さんは父のことをいろいろ質問してきました。どうやら彼女は、父の人となりを知ろうとしていたのではないか。わたしにはそう思えてなりませんでした。
その日は連休中だったため、妹親子と遠くに住む兄がうちにいたことに気づき、看護師さんは「たまたまカメラを持っているから撮ってあげます」と言いました。
介護ベッドの背を起こし、わたしたちは目をつぶったままの父を囲んで一枚の写真におさまりました。
「点滴をやめてから1週間がんばった方もおられます」
医師の言葉どおりなら、あとわずか。
兄は着替えをうちに置いたまま自宅に戻りました。
(2014.9)