不機嫌のナッジ
ナッジという言葉をご存知でしょうか。
人々の選択の自由を残しながら、より良い方向に行動を促す仕掛けのことです。
今回は、広告代理店に勤める奈地さんが、市役所環境課の田端さんに「不機嫌なときのナッジ」についてお話を伺いました。
ナッジ研究を趣味にしている奈地さんと、実務でナッジを活用する田端さん。
2人の対話から、イライラを建設的な方向に変える可能性が見えてきました。
奈地さん「田端さん、今日は取材の時間を作ってくださって、ありがとうございます」
田端さん「いえいえ。環境課の成果を取り上げていただけるのは光栄です」
奈地さん「市役所の窓口でナッジを活用されたと聞いて、すごく興味を持ったんです。私、ナッジの研究を趣味でしているので」
田端さん「ああ、環境フェアの時からですよね。確か広告の仕事をされてて…」
奈地さん「はい！あの時の田端さんの講演で、環境保護にナッジを使うっていう発想に驚いて。それで取材させていただいて…あ、また私、昔話長くなっちゃいそう。すみません、癖なんです」
田端さん「ふふ。今回の件についてお話ししましょうか。実は面白い発見があったんです」
奈地さん「はい、ぜひ聞かせてください！」
田端さん「不機嫌な来庁者への対応って、どの部署でも課題なんですよ。特に暑い日は…」
奈地さん「ああ、わかります。私も役所に来ると、待ち時間とか手続きの多さにイライラしちゃうことありますから」
田端さん「そうなんです。で、従来は接遇研修で対応してたんですが、限界がありまして」
奈地さん「職員の方の対応を改善する、という方向性ですよね」
田端さん「はい。でも、来庁者の不機嫌自体を和らげる方法はないかと考えたんです」
奈地さん「あ！それでナッジを…」
田端さん「待合スペースの環境を少し変えてみたんです。窓際に観葉植物を置いて、壁には地域の風景写真を。そして、ちょっとした仕掛けを」
奈地さん「仕掛けですか？」
田端さん「待ち時間の表示方法を工夫したんです。『あと15分』じゃなくて『残り時間15分で、今日のウォーキング目標の5%達成できます』って」
奈地さん「まさに不機嫌をポジティブに変換する…すごいアイデアですね！効果は？」
田端さん「予想以上でした。クレームが3割減って、しかも来庁者の方が待ち時間に廊下を歩いて過ごすようになった。健康促進の効果も」
奈地さん「それって…不機嫌だからこそ効果があったのかもしれませんね。イライラして動きたい気持ちを、健康的な方向に誘導する」
田端さん「鋭い観点ですね。私たちも同じことに気づいて」
奈地さん「実は…私、いつか『ナッジの協会』を作りたいって思ってるんです。こういう事例をもっと集めて、社会に広められたら…あ、また余計な話を」
田端さん「いえ、それは面白い。『不機嫌のナッジ』、新しいコンセプトになりそうです」
奈地さん「本当ですか？私なんかに…」
田端さん「奈地さん、ナッジって要は人の気持ちに寄り添うことでしょう。長話が多いのも、相手の気持ちを理解したいからかもしれません」
奈地さん「田端さん…そう言っていただけると嬉しいです。でも協会を作るなんて、まだまだ先の話で」
田端さん「いやいや、今回の取材記事を書いてみては？不機嫌をポジティブに変えるナッジの可能性。協会設立の第一歩になるかも」
奈地さん「そうですね！さっそく…あ、もう昼休みが終わりそうですね。お時間作っていただいて、本当にありがとうございました」
田端さん「こちらこそ。また面白い発見があったら、ぜひ教えてください」
奈地さん「はい！今日は不機嫌のナッジについて、新しい視点をいただけて…あ、また長くなりそう。失礼します！」
田端さん「ふふ。相変わらずですね」
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