見出し画像

【お仕事をもらう立場から解説】「契約不適合責任」条項のチェックの仕方

2回にわたって、民法改正で新たにできた「契約不適合責任」について解説してきました。

今回は、その締めくくりとして、

お仕事をもらう立場から、契約書の「契約不適合責任」条項を、どのようにチェックしていけばよいか?

について、分かりやすく、具体的に解説していきます。


民法と比較して、どうか?

お仕事をもらう際の『業務委託契約書』は、通常、先方(クライアント側)から、先方雛形の契約書を提示されることが多いと思います。

その際に、

前2回で解説した民法の原則よりも、自社にとって不利な内容になっていないか?を確認します。

もし、不利な内容だったときは、

“民法の原則通りとしていただけないでしょうか”

と、民法を根拠として修正提案ができます。

では、具体的に、どういう箇所をチェックすればよいか、解説していきます。


①②③を順に見ていきます。

①「履行の追完」→「代金減額」の順番になっているか?
②先方が請求できる期間は妥当か?
③その方法は、こちら側にも選択の余地があるか?


①「履行の追完」→「代金減額」の順番になっているか?

前回の投稿でもお伝えしたとおり、民法では、下記のようになっています。

買主(クライアント)は、履行の追完を請求しても追完されたなかった場合にはじめて、代金の減額を請求することができる(民法第563条)。

この民法の原則にかかわらず、

買主(クライアント)は、履行の追完を請求することなく、代金の減額を請求できる

などと、最初から代金の減額を請求できるようになっていたら、注意が必要です。

これでは、民法の原則よりも、こちら側にとって不利な内容になっているということですので、

“民法の原則通りとしていただけないでしょうか”

と、民法を根拠として積極的に修正提案をするようにしましょう。


②先方が請求できる期間は妥当か?

こちら側としては、

どのくらいの期間、履行の追完や代金減額の請求に応じなければならないか

ということですので、もちろん短ければ短いほど有難いものです。

民法では、下記のようになっています。


買主は、不適合を知ってから1年以内に不適合の事実を「通知」することによって権利を保全できる(民法第566条)


買主(クライアント)は、まずは契約不適合を発見してから「1年以内」に「契約不適合責任を追求する」という通知をしなければなりません。


この民法の原則にかかわらず、

1年を超えてその期間が設定されていたりした場合、

民法の原則よりも、こちら側にとって不利な内容になっているということですので、修正提案すべき箇所ということができます。

その方法は、こちら側にも選択の余地があるか?

民法では、基本的には買主が「履行の追完」の方法を選択することができるように定められていますが、売主としても何もできないわけではありません。

民法では、「買主に不相当な負担を課するものでないとき」は、売主は、買主が請求したのと異なる方法で追完することができます。

つまり、

買主から「やり直してください」と申し出があったとしても、売主としては、「やり直しは難しいので、代替物を納品させてください」としたいとき、

その「代替物の納品」が買主に不相当な負担を課すものでないときは、「代替物の納品」でも可ということになります。

この民法の原則にかかわらず、

その「履行の追完」の方法の選択が、こちら側に一切できないような規定であった場合、

民法の原則に基づく提案も可能ということができます。

まとめ

以上のとおり、今回は、【お仕事をもらう立場】からの視点で、確認すべき事項をまとめましたが、

逆に仕事を依頼して納品をお願いする側としては、民法の原則にかかわらず、下記のように提示し、飲んでもらえたらこちらが有利に取引をすすめることができるということになります。

①「履行の追完」も「代金減額」も、こちらの裁量で請求できる。
②契約不適合があったときの責任追及は、1年を超えてもできる。
③こちら側の裁量で「履行の追完」の方法は選択できる。

このように、

【お仕事をもらう側】も【お仕事を依頼する側】も、現在の民法の原則がどのようになっているか?を理解しておくことにより、自社のリスク回避ができ、かつ、自社に有利な取引をすすめることができます。



いいなと思ったら応援しよう!