納品された後、「やり直してください」などと請求できる権利
2020年民法改正で新たに定められた「契約不適合責任」について前回解説しました。
▮前回のおさらい
旧民法「瑕疵担保責任」
👇 変わりました
新民法「契約不適合責任」
「契約不適合責任」とは、
目的物の引き渡しの際に、発注内容と異なる点があったときに、売主側(受注した側、お仕事をもらった側)が負う責任
▮今回のテーマ
今回は、「契約不適合責任」が認められる際に、
買主側(発注した側、クライアント側)から、どのような責任追及ができるのか、解説します。
▮どちらの立場にとっても重要です
👉買主側(発注した側、クライアント側)
発注した内容と異なるものが納品されたのですから、発注した目的を達成できるようにしてもらいたく、当然に無償で「やり直し」て再度納品してもらうのはもちろん、当初の料金の減額などもしてもらいたい。。など、なるべく広く請求したいところです。
👉売主側(受注した側、お仕事をもらった側)
上記の買主側とは逆に、もちろん、請求される範囲は、狭くしたいものです。
このように、それぞれの立場上の思惑がありますので、民法の原則上はどのようになっているのかを、皆さんが知っておく必要があります。
▮請求できる権利
買主側(発注した側、クライアント側)は、目的物に契約内容と異なる点があることを発見したときは、売主側(受注した側、お仕事をもらった側)に対して、契約不適合責任として、次の対応を請求することができます。(民法第562条)
①履行の追完
②代金の減額
③損害の賠償
④契約の解除
では、1つ1つ確認していきます。
①履行の追完
納品された目的物が不完全な状態であったものを、改めて完全な状態にして納品することをいいます。
「追完」とは、法的に効力が未確定な行為についてあとから行為を有効にすることです。
具体的には、
「修補」=(やり直してください)
「代替物の引渡し」=(代わりの物を納品してください)
「不足分の引渡し」=(不足している分を納品してください)
といった請求ができるようになりました。
<例外>
ただ、その不完全な状態であった原因や責任(帰責性)が、買主側にあった場合には、履行の追完を請求できません。(民法第562条条2項)
②代金減額
買主側は、①履行の追完を請求したにもかかわらず、売主側が対応してくれないとき、代金の減額を請求することができます(民法第563条)。
旧民法と比べて、広く請求できるようになりました。
ex.旧民法では…
(旧民法第563条)権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないとき
(旧民法第565条)数量を指示して発注したのに不足があったり滅失していたとき
また、①の<例外>と同様、買主側に帰責性(責任)がある場合には、代金の減額を請求できません(民法第562条2項)
③損害賠償④契約の解除
旧民法の「瑕疵担保責任」は、契約責任と異なる特殊な法的責任であると考えられていました。
今回の改正では、「契約不適合責任」は、契約責任(いわゆる「債務不履行責任」)として取り扱われることになりました。
ex.債務不履行とは…契約で取り決めた債務を履行しないこと
そのため、買主側は、売主側に対して、 債務不履行の場合の一般ルールに従って、解除・損害賠償を請求することもできるようになりました。(民法第564条)
ちなみに、旧民法では、解除は、瑕疵によって「契約をした目的を達することができない場合」(旧民法第570条)に限られていましたが、改正後は、そのような場合に限られなくなりました。
▮日頃の契約書を改めて確認しましょう
こちらが売主側(受注する側、お仕事をもらう側)である場合に、買主側(発注側、クライアント側)から提示される契約書で、たまに下記のような文言を見ることがあります。
契約不適合があったときは、①履行の追完②代金減額どちらでも好きな方を選択して請求できる。
前述のとおり、(民法第563条)では、
②代金減額は、①履行の追完を請求したにもかかわらず、売主側が対応してくれないとき、できる。
となっていますので、この契約書の文言は、
民法の原則よりも買主側に有利な規定
ということになります。
そして、売主側(受注する側、お仕事をもらう側)がこの契約書にサインした場合はこれに合意したことになります。
このように、自社が余計なリスクを負ってしまわないよう、たいして確認もしないでサインするようなことはあってはならず、
また、
今の民法がどのようになっているか
についても、最低限知っておくべきであると言うことができます。
次回以降も、引き続き今回の民法改正で何が変わったか?
そして、皆さんがビジネス取引を行っていく際に気をつけなければならないことなど、解説していきます。
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