企業が個人に外注するときの契約書の注意点
昨日は、個人(フリーランス・個人事業主)の立場から、企業から受注する際の契約書について解説しましたが、
本日は逆に、
企業の立場から、個人(フリーランス・個人事業主)へ発注する際の契約書について、契約書の専門家が分かりやすく解説します。
1.業務委託契約を締結する
一般的に、企業が個人へ業務を依頼する場合、個人との間で「業務委託契約」を締結します。
もちろん、口頭やメールなどでも契約自体は成立するものなのですが、のちのち、「言った、言わない」などとトラブルになってしまうことのないよう、事前に書面で契約書を作成して、お互いに契約内容をしっかり確認して取引は開始しなければいけません。
このとき、依頼する個人への案件が複数回ありそうなときは、先ず「基本契約」を取り交わし、文字通り基本的な契約内容を合意しておき、個々の案件の受発注については、この基本契約に紐づく「個別契約」で取り決める方法がよく用いられます。
2.業務委託契約で必ず記載すべきこと
業務委託契約で合意しておくべき(必ず記載すべき)事項には、下記のようなものがあります。
①依頼する業務・商品・サービス内容について
まず、この契約に基づき依頼する業務・商品・サービスなど、その内容や範囲などが明確になっているかを確認します。
商品であれば、その商品を特定するための情報(商品の名称・番号や記号・品質・数量・仕様など)明記されているかが重要です。
記載事項が多くなってしまうような場合でも、省略せず「別紙」などとして記載するようにしましょう。
②委託料の支払いや、実費の負担について
金銭の支払いに関する事項を明確に決定させます。
支払いサイト(請求書発行から支払日までの期間)・支払い方法・振込みの手数料はどちらが負担するのかなど誰が見ても分かりやすいように記載しておく必要があります。
また、送料や旅費、その他実費がかかる場合など、委託料以外にも発生する費用があれば、どちらが負担するのかを明らかにしておきましょう。
③契約期間と更新について
契約期間に関する事項も大変重要です。契約の開始日と満了日を明らかになっているかどうか確認します。
また、契約期間満了後に更新する場合どうするかについても確認します。
▶契約の更新が予定されている場合には、
「期間満了の2ヶ月前までに、いずれか一方から更新しない旨の申し入れがなされない時は、本契約は更に1年間同一条件にて継続する。期間満了ごとこの例による」
といった自動更新の規定をよく目にしますが、果たして自社にとって、この規定がふさわしいのかどうかもしっかり検討する必要があります。
もし1年後に、今の状況と異なる状況になることが想定されるなら、
「契約満了の2ヶ月前までにをめどに、①更新するか否か、②更新するなら更新後の契約条件を話し合って決める」
などとしておいた方がよい場合もあるかもしれません。
④契約解除や損害賠償の規定
途中で契約を終了する場合のことや、依頼した業務をしっかりと履行してくれなかった場合に生じた損害に対する対応などの規定もしっかり確認しておく必要があります。
このとき、「契約を解除する側」「契約を解除される側」といったように、双方の利害が対立する事項が多くあるので、できるだけ詳しく記載しておくことが大切です。
この部分が曖昧だと、双方の主張が対立しトラブルの原因となってしまいます。
また勘違いされておられる方も多いですが、「損害賠償」の規定は、損害を賠償してもらう為だけの規定ではなく、お互いのリスクを回避する為の規定であることも理解しなければいけません。
よく「合意の上決定する」という表現を目にしますが、片方が合意しないと主張すればまとまらないので、実質意味がありません。
誤った記載ではせっかくのリスクヘッジの意味もなしませんので、注意が必要です。
⑤下請法の義務
下請法が適用される場合、下請法で定められた発注者側(この場合、親事業者といいます)の義務が沢山ありますので、注意が必要です。
具体的には、
支払いサイト(納入された成果物の受領後60日以内で定められていること)
遅延利息(支払期日に委託料が支払われなかった場合は遅延利息が支払われること)に関すること
受領拒否(個人に責任がないにもかかわらず、発注した成果物を受領しないこと)などをしないこと、
など多岐にわたります。
そして、このような契約書類は、必ず取引に関する記録として作成されなければならず、2年間は保存しなければいけません。
3.まとめ
上記のうち、⑤の下請法に関する事項については、特に注意が必要です。
個人(下請法では下請事業者といいます)は、企業(親事業者)に比べると弱者であることが多いため、企業(親事業者)の優越的地位の濫用を取り締まるための法律が下請法です。
企業は、以上の事項をしっかり理解し、法令違反とならないよう注意しながら個人への発注に関する契約書を一つ一つ入念に確認しなければいけません。
契約の締結前には、自社がリスクを負わないよう、そして目標達成にむけた契約取引ができるよう、これにしっかり適用した契約書を締結する必要があります。
【ご相談は無料です。お気軽にご相談ください。】
当事務所は事業者の取引に必要な契約書の作成、リーガルチェックを多く取り扱っています。お気軽にご相談ください。
ご相談はLINE@でも可能です。LINE@