見出し画像

【専門家が分かりやすく解説】基本契約と個別契約の違い


取引先と契約を取り交す際に、

基本契約個別契約をよく目にすると思います。

この違いは、何でしょうか?

契約書の専門家がわかりやすく解説します。


1.基本契約とは

基本契約とは、継続的に売買や業務の委託などを行う際に、契約する両者間で、基本的な契約条件を定めるものです。

基本契約には、次のようなものがあります。

・業務委託基本契約書
・取引基本契約書
・購買基本契約書
・請負基本契約書

この基本契約に基づいて、

✅個別の商品の発注

✅個々の業務委託の発注の依頼

などがなされることになります。


2.個別契約とは

上記のような、✅個別の商品の発注や、✅個々の業務委託の発注→に対して→承諾の意思表示があった時点で、“契約が成立した” とすることが一般的です。これが「個別契約」です。

☝ポイント
基本契約を締結する理由は、個々の発注の際にいちいち条件を定める手間を省き、効率的に安定した取引を行うためです。


例えば、ある取引で、

支払い条件:「毎月1日から月末で締め、乙が指定する銀行口座に甲が支払う。なお振り込み手数料は甲の負担とする。」

などと、基本契約で決めておくことで、個々の発注の際に、支払い条件についていちいち話し合う必要がなくなります。

よって、個別契約では、案件ごとの納品する品目、数量、納品時期。。などの詳細のみを取り決めるだけでよくなります。

契約を締結する場合、まず基本契約(取引の基本的な内容)で合意に至ったら署名捺印して契約開始となります。しかし実際に取引が始まるのは、個別契約(案件ごとの詳細)が成立してからとなります。


3.個別契約“書”だけではない

☝ポイント
個別契約は「個別契約書(書面)」を取り交わすことだけで成立するわけではありません。

✅発注書に対して、→請書を提出する。

✅発注の連絡に対して、→承諾の連絡を返す。

✅依頼者に対して仕様書を提出し承諾をもらう。。。など、その成立のタイミングや方法も様々となります。

このことも、基本契約書に記載し、明確にしておく必要があります。


4.基本契約の内容は、とても大事

☝ポイント
基本契約は、一旦合意すると、後の個別契約の際に、なかなか覆せません。ですので、自社にリスクとなる規定はないか、しっかり確認することが求められます。

前述のとおり、基本契約が成立すると、次は個別契約で個別の案件(個々の発注)が走りはじめます。

お伝えしたとおり、個別契約は、基本契約に基づくものですので、これらすべての個別の案件(個々の発注)は、基本契約どおりのものとなるのが原則です。


よくある規定として、

基本契約と個別契約の規定にズレがあった場合は、個別契約を優先する

といったものがありますが、これも、もちろん個別契約で再度合意することが必要です。

いったんは、基本契約で合意したことを、片方の都合で、個別契約で覆す交渉はたいへん難儀なことです。

したがって、締結前の基本契約のレビューの際は、リスクとなる規定はないかの確認はもちろん、自社に優位に取引をすすめられる交渉ができないか、しっかり精査する必要があります。


5.まとめ

以上のとおり、取引における契約で「基本契約」と「個別契約」が存在する場合、

①まず基本的な内容を取り決めた基本契約を締結し、

②次に個別の案件ごとに、個別具体的な内容を個別契約で取り決めるのが一般的な流れです。


☝ポイント
基本契約で、個別契約の「成立の要件」などもしっかり盛り込んでおくことも重要なポイントです。

「発注の連絡をしたのだから個別契約は成立しているはずだ」

「“承諾した”と言ってないのだから個別契約は発生していない」

このような認識のズレが生じトラブルの原因となってしまうことがあっては困ります。

継続的に取引先と良好な関係で取引を行えるよう、また後に「こんなはずじゃなかった」とならないよう、「基本契約書」と「個別契約書」のそれぞれの役割について理解し、しっかりした内容の契約書を締結したうえで取引を開始するようにしましょう。


当事務所はビジネス取引に必要な契約書の作成、リーガルチェックを多く取り扱っています。お気軽にご相談ください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?