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契約は、どういうときに【解除】できるのか?

【2020年民法改正で何が変わったのか?】について解説しています。

今回は、「契約の解除」について解説します。

契約の解除に関する規定は、ほとんどの契約書に盛り込まれていますので、皆さんもよく目にされていると思います。

本記事では、改正前と改正後の民法で、「契約の解除」についてどのような違いがあるかを比較し、また契約書をレビューする際のポイントなども解説していきます。


1.契約の解除とは

そもそも、契約の解除とは、どういうものでしょうか。

契約の解除とは、

契約当事者の一方の意思表示によって、契約の効力をさかのぼって消滅させること(はじめから存在しなかったのと同じような法律効果を生じさせること)をいいます。


似たようなものに、「解約」があります。

どちらも「契約を解消する」といった意味の文言ではありますが実はその効果に違いがあります。

「解除」は、上記のとおり、“契約が最初からなかった”という効果が生じるのに対し、「解約」は契約関係を将来に向けて解消するという点に違いがありますので、契約書に盛り込む際には注意が必要です。


2.解除に関する改正ポイント

「契約の解除」について、今回の民法改正で最も重要といえるのが、

解除の要件から「債務者の帰責性」が削除されたこと

です。

✅改正前

改正前の民法では、契約の解除をするためには、


その債務の不履行について、債務者に帰責事由があること(責任があること)が必要でした。


しかし、近年の学説などにより、債務者に帰責性がないときであっても(債権者側に)解除権を認めるべきである、といった考え方が強くなり、そういった考え方を反映させ、今回下記のように改正されました。

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✅改正後

改正後の民法では、債務を履行しなかった債務者に帰責事由がない場合にも、その相手方は契約を解除することができることになりました。

具体的に条文でいうと、

旧民法543条ただし書の文言(「ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない」)が削除されました。


これにより、解除の要件から「債務者の帰責性」が取り除かれ、債務者に帰責事由がない場合であっても、契約を解除できるようになりました。

これに加えて、

逆に、債権者の帰責性によるときは解除できないことが明文化されました。(改正民法543条)


3.契約書をレビューする際のポイント

それでは、今回の改正をふまえて、契約書をレビューする際には、どのようなことに注意すればよいでしょうか。

今回の改正で、債務不履行を理由に契約を解除するのに、債務者の帰責性は不要になりました。

そのことを理解したうえで、

自社にとって、有利か?不利か?を確認するようにします。


👉たとえば、自社がベンダー側で、クライアントからお仕事をいただく契約だった場合は、なるべく契約が終了しないよう、解除しにくい規定となっているのが望ましいといえるでしょう。

その場合は、民法の原則と照らしてどうなっているかを確認します。

そして、民法よりも「解除しやすい」規定となっていた場合は、民法を根拠に修正提案ができるということになります。


👉たとえば、自社が発注する側であった場合は、上記と逆です。

発注先に何か不履行(たとえば発注したのにちゃんと仕事をしてくれない、納品してくれないなど)があった際は、その契約は簡単に解除できて、別の企業にすぐに切り替えて発注できるようにしたいものです。

そのような考えをもとに、民法と照らして確認し、どうなっているかをレビューすればよいことになります。


4.まとめ

他社と取引をまさに始めようとする、その時点で「契約を解除する」ことは、なかなか想定しにくいと考える方も多いかと思います。

しかし、いざ「解除したい」「解除されたくない」という状況になったとき、この最初の契約でどのような規定になっていたか、それで判断されることになります。


以上から、契約締結前のレビューの際には、“今の民法がどのようになっているか”をふまえた上で精査する必要があるということができます。


当事務所は、法務担当のアウトソーシング先として契約書のリーガルチェックや契約書の作成を多く取り扱っています。お気軽にご相談ください。


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